【青木宣篤流 断じるライテクQ&A|Part02】フォームや体の使い方がわからない・・・・

バイクが走るのではない。ライダーが走らせるのだ。スポーツと名が付くからには、スポーツライディングはれっきとした運動。ライダーのフィジカル関連のお悩みを一挙に解決!
PHOTO/H.ORIHARA, S.MAYUMI, YAMAHA
TEXT/G.TAKAHASHI
Q6|ヒザは擦った方がよいのでしょうか?
Q7|ヒザを擦れば上手なライダーと言える?
Q8|サーキットで両方のヒザを擦れますがタイムが思うほど上がりません
Q9|無理ヒザはなんでダメなんですか?
Q10|ヒザ擦りにはどんな効果があるのですか?
A|必ずしもヒザを擦る必要はありません。
「サーキット=ヒザ擦り」という強迫観念は捨ててください。いつでもどこでもヒザを擦ることが目的になっている「無理ヒザ命」の人も見かけますが、ほとんどの場合バイクがムダに長く寝ており、速く走れないうえに転倒のリスクも高めています。
ヒザを擦ることに気持ちよくなるのも分かりますが、スキルアップしにくくなるということも覚えておきましょう。……と、ここまで言っておいてナンですが、ヒザ擦りを楽しむのもアリだと私は思っています。タイムや順位に追われるレースとは違い、スポーツライディングの楽しみ方は人それぞれ。

「よりうまく、より速く」を求めないなら、「無理ヒザ命」も否定はしません。また、ある程度のペースになるとヒザ擦りにも効能があることを知っておいてください。ヒザ当てのことを「ニースライダー」または「バンクセンサー」と言いますが、その名の通り、バイクがどれぐらいバンクしているかが、ヒザが路面に押しつけられる圧で判断できます。
また、さらにペースが上がるとヒザ擦りが邪魔になることも知っておくべきです。ハイレベル、ハイペースなレースでは、バイクをより深く寝かせるために、ヒザを畳んで擦らないようにしています。
Q11|無理なく怖くなくヒザを擦ってみたい! 前車と同じペースなのに、かたやヒザを擦っていて自分は頑張っているのにまったく擦らないのはなぜでしょう?
Q12|コーナリング中に外足でのホールド感が薄いので、あまりヒザを出さないで走ってますしかしヒザを出すと曲がりやすいのも事実。どう思われますか?
A|お二方に共通しているのは、外足によるマシンホールドが足りないこと。
「ニーグリップ」と言いますが、使うのはヒザに限りません。車体と触れる外足はすべての箇所を駆使し、バッチバチにマシンホールドをしてください。特にタンクと当たっている外足は重要。
ホールドできているか見直してみましょう。外足によるマシンホールド強度が増せば、内足の自由度が増し、より安定してヒザが出せるはずです。
Q11の方はヒザを擦りやすくなるでしょうし、Q12の方は外足のホールド感が高まると思いますよ。
Q13|S字コーナーの1つめでは内側のヒザを開きますか? 開くと忙しくなりますよねぇ……
A|S字でヒザを開くかどうかは、コーナーのR(曲率)によります。Rがキツければ開きますが(正確には「開いてしまう」)、確かに忙しくなるので、あまりガバッとは開かないことが多いです。
Rがあまりキツくなければ、開きません。袖ケ浦フォレスト・レースウェイの左の第8コーナー(55R)は、その手前に緩い右コーナー(100R)がありますが、それぐらいのRだと開きません。

Q14|右コーナーと左コーナーでライディングフォームが同じになりません
Q15|コーナーを曲がる時のイメージとして肩をイン側に入れる感じでいいのでしょうか?私は左だけイメージ通りできないです何かコツはありますか?
A|私のフォームも左右で違いますし、なぜか左コーナーには苦手意識があります。
人の体は左右対称ではありませんし、可動域もまちまち。キレイに左右対称になる方が難しいと思います。気にしないでください。


Q16|旋回中は外足荷重ですか? 内足荷重ですか?
Q17|ステップへの荷重で曲がり方は変わる?
Q18|コーナリングでは外足荷重と言われていますが、倒し込む時に内側のステップに荷重し、その後で外足荷重にするのが正しいのかどうか分かりません!
A|コーナリングにおいてステップへの荷重は意識していません。
私の場合、「ステップに力を加えるために踏む」ということはなく、「コーナー外側のステップに足をひっかけることで、どれだけタンクに力を加えられるか」を意識しています。
特にイン側ステップにはほぼ力を入れていません。レースでは、コーナー進入時に内足外しがよく見られますが、あれこそまさにイン側ステップに荷重をしていないことの証でしょう。

倒し込みは、ハンドル操作がメイン、外足でタンクを押し込むのがサブの操作です。ステップは気にしていません。ちなみにあえてステップに力を加えるのは、加速の時。
リアアクスル方向に目がけて後方に蹴り出すような感じで体を前に持って行き、加速Gに対抗します。
Q19|ニーグリップの仕方が分かりません
ビギナーの方なら、タンクをヒザでギュッと挟んだまま走行枠を1本走り切ってください。もちろんヒザは出しません(タンクを挟んでいるので出しようがない)。走りながら「もう無理です!」となり、走り終わったらモモがプルプル震えるぐらいの強さで。
それがニーグリップであり、それがスポーツライディングの出発点です。

Q20|腕の痛みがある時できるだけ腕を酷使しない乗り方はありますか?
A|ロキソニンを飲みましょう。
私も現役時代、腕をケガしていた時は、痛み止めを飲んだりテーピングで乗り切りました。スポーツライディングは腕を酷使するもの。
痛み止めの服用やテーピングが嫌なら、ペースを落とすしかありません。腕への負担は減る一方で、「走ってる感」もだいぶ減ってしまいますが……。
なお、これは一時的な腕の痛みの場合。もし過去のケガや病気などで慢性的に腕が痛いなら、無理せず排気量を下げてください。バイクが遅くて軽いほど、腕への役割分担が減り、ラクになると思います。
Q21|体重移動がうまくできません
Q22|シートのどこに座れば、安全で恐怖感がなく、カッコよく、速く走れますか?
A|サーキットでのスポーツライディングでは、シートにはほぼ座りません。
恐らくQ20の方は、シートにドスンと座りすぎ。体重配分で言うと、ハンドル1、ステップ1、シート9ぐらいになっていると思われます。これでは体が動くはずはありません。

正解は、ハンドル4、ステップ5、シート1。ですので、Q21の方への答えも「シートにはほぼ座りません」となります。多くの皆さんは、シートにドッカリと座る公道スタイルが身に付いているのだと思います。
「シートのどこに座るか」ではなく、「自分がどこにいると1番タンクを挟みやすいか」を意識してみてください。ちなみに私は公道でもハンドル3、ステップ3、シート4。ガッチリとニーグリップもしているので、長時間走ることが多い公道はとても疲れます。
Q23|小柄な人が大型バイクに乗るときのポジション調整のコツは?小柄だから前乗りになりがちです
A|前乗りでも構いません。
タンクさえしっかり挟めていればOKです。よく小柄な方が大きなバイクに乗ることに否定的な意見を聞きますが、私はまったく気にしません。
小柄でも上手な方は結構多いものです。体格よりも、マシンホールドできているかの方が、よほど大事です。
Q24|最近、バイク任せの倒し込みやセルフステアより、積極的に体の動きを早くした方がよいのでは……と思うのですが合っていますか?
A|合ってます。
スポーツライディングでは、ライダーが主、バイクが従です。例えば倒し込みも、「バイクが自然に傾くのを待つ」では遅すぎます。バイクが動くのではなく、人が動かす。
ですので、ライダーは常に積極的に体を動かす必要があります。なお、セルフステアはコーナリングの最低速度あたりで一瞬だけ使い、車体を起こすきっかけに活用します。
Q25|衰えた体力を補うにはどうしたらよいですか?
A|体幹トレーニングに尽きます。
。「トレーニング」と言うと、バーベルを上げるような筋肉を鍛える運動をイメージしがちですが、スポーツライディングに効果的なのは何と言っても体幹トレーニング。現役を退いた私も、これだけは続けています。WEB記事でも絶賛公開中!

Q26|一般ライダーも、コーナー進入でMotoGPライダーのように足を出すと効果を感じられますか?
A|感じられません。
「リアの荷重が抜けてスッとバイクが寝て、曲がりやすくなる」「安定感が高まる」などの効果が謳われている足出しですが、相当速いペースで走れて、なおかつ相当高いレベルのセンサーの持ち主でなければ分からないと思います。
最低でも全日本レベルの走り&センサーが必要でしょう。なお、サーキット走行会での足出しは御法度です。後続車が「譲ってくれたのかな」と勘違いする場合があり、事故になりかねません。
