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【青木宣篤流フィジカルトレーニング:EX】このオフシーズン中に走れる身体を作ろう!【スピードとフィジカルは比例するべき】

バイクとタイヤの限界をめざすそれがスポーツというものだ

‘70〜’80年代あたりまでのグランプリでは、ライダーがタバコを吹かす姿がしばしば見られた。「トレーニングなんか必要ないさ」とうそぶく者も多かった。

それでも、当時のグランプリマシンを走らせることは十分に可能だった。当時のGP500㏄マシンがラクだったから、というわけではない。単に、それほどトレーニングをする必要性がなかったのだ。

しかし時代が進み、’02年からMotoGPとなってマシンが4ストローク化すると、ライダーのアスリート化が一気に加速した。皆こぞってトレーニングに取り組み、ライダーのフィジカル面でのパフォーマンスは大幅に向上した。

車重が上がり、パワーが上がり、スピードが上がったことが、トレーニングが必要になった大きな要因だ。しかし私自身の体験談から言うと、恐らくタイヤグリップの高まりがもっともフィジカルに効いた。

実は’70年代あたりからグランプリマシンの最大バンク角はだいたい60度ぐらいで、それほど変わっていない。だが、最大バンク角をキープしている時間は飛躍的に長くなった。

身体的には、これが非常につらいのだ。いくら遠心力がかかるとは言え、あれだけ深いバンク角をほぼ下半身だけで支えなければならないのだから、きついに決まっている。

ライディングフォームも変わっていった。エディ・ローソンのように頭をセンターに残すフォームがスポーツライディングの基本だと思っているが、今やそれでは不足だ。

深いバンク角をキープする時間が増え、コーナリングスピードも高まっている現在、ローソンのフォームではとうてい対応できない。やはり今のMotoGPライダーのように、身体を大きくイン側に落とすのが理に適っている。それに伴い、やはり身体的負担は増しており、フィジカルトレーニングの重要度も高まっている。だから今のMotoGPライダーはすっかり、一流アスリートだ。皆引き締まって精悍なボディをしている。

つまり、スピードが高まれば高まるほど、ライダーの身体への要求度も高まるのだ。そしてこれはもちろん、MotoGPライダーだけではなく、一般ライダーにも当てはまる。

最近のスーパースポーツモデルは、一昔前のグランプリマシンを軽々と凌駕するパフォーマンスを備えている。そしてタイヤもグリップ力がどんどん増している。

それらを、ただ街乗りするだけなら、ライダーにフィジカルパフォーマンスは求められない。スピードを出さなければ、身体への負荷もかからないからだ。

しかし、向上心を携えてサーキットを走るなら、話はまったく変わってくる。サーキットでの向上の指標は、ラップタイムで測るのが普通だ。ラップタイムが上がればスピードも上がる。すると、身体への要求値も上がる。だから、トレーニングが必要になる……。

私に言わせていただけるなら、今のスポーツバイクを操ろうと思うなら、身体を鍛えるのは当然なのだ。繰り返しになるが、ただ街乗りをするだけなら、トレーニングなどまったく不要だ。逆に、スポーツライディングをするなら、身体を鍛えなくていいはずがない。バイクとタイヤというパッケージの限界に近付こうとする志こそが、ライディングのスポーツ性の正体なのだから。

バイクのスピードとライダーのフィジカルパフォーマンスは、比例するべきなのだ。鍛えるつもりがなければ、リスクが高まるばかり。スポーツライディングは諦めた方がいい。

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