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【History Bikes/~SUZUKI GSX-R1000R~】17年衝撃のデビュー②理想の走りが追求できる その最新技術

SUZUKI GSX-R1000R 理想の走りが追求できる その最新技術 コンパクトで軽快なキャラクターを知ると市街地やワインディングも楽しみになる 8年の沈黙を破って登場したスズキGSX-R1000Rの試乗会がオーストラリアのフィリップアイランドで開催された。 そのすべてを刷新し、新設計エンジンの有り余るポテンシャルはMotoGP譲りの車体と最新電子制御で調律する。 今回は、スタンダードモデルの他に上位機種である“R”スペックも用意。そのトップパフォーマーを堪能してきた。 前回に引き続き、衝撃デビューを振り返る企画としてGSX-R1000/Rの後編をお届けする。走る、曲がる、止まるを徹底的に追求した開発陣が自負するそのマシンはまさに衝撃だった。 2017年4月号より

デビュー試乗会の3本目のライディング。3本目ともなるとそのハンドリングに夢中になる。アベレージが上がり、バイクへ与えられる荷重が釣り合ってきた。市販タイヤでもここまでイケるんだ、と思えるが、さすがに3本目になるとタイヤのスライドも目立つ。

午前中はトラクションコントロールのレベルは3で走行。速いライダーは大きくスライドさせながら、向きを変え、立ち上がり、それはまるでモト2のワンシーンのようで、市販車では見たことのないような動きだった。それでも僕のレベルでも慣れてくるともっとグリップが欲しくなる。 途中、ABSをカットした状態(市販車は常に介入)でも試乗してみたが、ヘアピンで後輪がロックし、その瞬間に頑張る気が失せてしまった。

ライダーを助けるというよりは、ライダーに自信を失わせないためにもやはり最新電子制御は偉大だ。一度失った自信を取戻すのはなかなか難しいし、その時間は本当にもったいない。ちなみにNewGSX-Rのすべての電子制御が嫌味に感じることは一度もなかった。

LEDヘッドライトはもちろんだが、ウインカーやテールライトもLED化。これが車体のシンプル&コンパクト化、軽量化に大きく貢献。配線の処理にもこだわっている。ステップは可変タイプを廃し、1ポジションに。これは車体のシンプル化と軽量化を狙っての事。オートシフターはアップ&ダウンに対応し、ギヤチェンジの難しさは完全に払拭されている

ハイグリップタイヤのR10を履くと、NewGSX-Rは完璧にバランスした。トラコンのレベルは5。トラコンの介入が増し、タイヤのグリップが向上したため、滑るかも……という不安が消え、毎周予定通りの操作が可能で、いつも同じ場所から曲がり始めることができるし、スロットルを開けられる。ライダーのすべての要求に正確に応え、ハイグリップタイヤでも破綻しない、というよりはハイグリップタイヤで車体&サスペンションは本領を発揮し、ライダーとバイクの一体感は飛躍的に向上した。

ここでも際立つのは車体のフィーリングだ。とてもしなやかな車体が大パワーとライダーの荷重を受け止める。150㎞/hを超える超高速の切り返しでも重さはなく、あっという間に路面に膝が接地する。超高速での旋回中のライン変更も容易だ。ライダーの操作に対してタイムラグがなく、NewGSX-Rは愛おしくなるほどに素直な反応をみせる。

最終コーナーでスロットルを全開にする……するとメーターの上部が点滅し、トラクションコントロールが作動しているのが分かる。1万回転を超えると車体がゆっくりと揺れ始める。「お、おおー」思わずヘルメット内で唸る。それは映像で観るモトGPマシンのようなダイナミックな加速だ。いきなりハンドルが振られたりする速い動きでないから怖さはない。それは、しなやかなフレーム、最新の電子制御、強大なパワーを発揮するエンジンが見事にバランスした瞬間だった。 加速中も前輪から荷重が抜けにくく、サスペンションのピッチングモーションを感じやすいのに、大きな姿勢変化をライダーに感じさせない絶妙な設定は、まさに感動的ですらあった。

フロントのエアダクトの大型化は、ヘッドライトのLED 化によるところが大きい。空気抵抗は前面投影部分だけでなく、横方向も軽減している

サスペンションはショーワ製。フロントはリザーバータンクを装備するバランス・フリー・フロントフォーク。ブレーキディスクはブレンボ製のφ320 ㎜を採用。インナーとアウターをT ドライブとフローティングピンの2種類で結合する
スロットルはライド・バイ・ワイヤ。操作感は抜群によく、スロットル操作に対するエンジンのツキはとてもリニアで、過渡特性がよくつくり込まれている。従来型よりも40 ㎜長い新設計のアルミスイングアームが大パワーを確実にトラクションに変える。ホイールはニューデザインのアルミ鋳造だ
OEタイヤのRS10は、New GSX-R に合わせるために信じられないほどたくさんのテストを繰り返した。ハンドリングやグリップ性能だけでなく、耐摩耗性やウエット性能にもこだわった。またハイグリップに交換することを考慮したサイズを設定。だからNew GSX-R は、ハイグリップタイヤを履いた際、サスなどを大きくアジャストしなくても違和感なく走れるのである

リヤショックはバランス・フリー・リヤクッション・ライト。高負荷がかかった時もしなやかに路面を追従する。スタンダード仕様のGSX-R1000のフロントはビッグピストンフロントフォークで、リヤは標準的なサスペンションが装備される

1000㏄スーパースポーツというと、まずはレース……そんな印象があった。しかし、歴代GSX-Rは、そうじゃなかった。速さの中に楽しさを見出し、その楽しさを多くのスポーツバイク好きに知って欲しいという情熱が込められている。そしてただひたすら真面目にそのGSX-Rらしさを追求してきた。

そして、NewGSX-Rはエンジンをショートストローク化したり、フレームを一新したりしつつ、レースに流れをシフトしたようにも見えたがそれは僕の杞憂だった。その舵は意外にも我々スポーツバイク好きに切られており、GSX-Rはその輝きをさらに増したと言えるだろう。

スズキのバイクは、走る、止まる、曲がるの基本性能をひたすら真面目に追求し、それが高性能とユーザーフレンドリーを両立させる。速さだけでなくきちんとそのバイクに乗って楽しむライダーの笑顔を想像しながらつくっていて、NewGSX-Rはまさしくその究極にあたるのだ。

例えば60㎞/hのヘアピンと150㎞/hの高速コーナーで大きくフィーリングが変わらないのがNewGSX-Rの大きな特徴で、それは基本性能の磨き込みなしには得られないものだろう。 確かにハイスペックを堪能するのは猛烈に緊張する。しかし、NewGSX-Rは、走るほどに緊張が興奮に変わり、さらに興奮が感動に変わっていくバイクだった。 最新の国産スーパースポーツを体感したい! そんなライダーの強い味方だ。

発売時期や価格は未定だが、ライバルよりコストパフォーマンスも高いだろう。これだってユーザーの笑顔をつくる理由のひとつだ。安いバイクをつくろう……近年の新車にはそんなバイクが目立つが、NewGSX-Rにはよくぞここまで、というディテールで溢れているのも嬉しい。 納得いくまでやりきったスタッフ達の達成感は本物だった。竜洋で見たストレスのない動きも本物だった。スズキの本気、日本メーカーの本気がここにある。確かに8年の月日は長かったが、GSX-R1000Rは新たなる歴史に向け、力強くその一歩を踏み出した。 

ダイナミックな立ち上がりがNew GSX-R のハイライトのひとつだ。Newエンジンが発揮する大パワー、そして最新の電子制御を堪能することができる

GSX-R1000R

Rにはこれまで紹介してきたメタリックトリトンブルーとグラススパークブラック、2つの車体色が用意される

GSX-R1000

スタンダード仕様にはメタリックトリトンブルー、パールミラレッド、メタリックマットブラックNo.2 の3色をラインナップする

今までも、そしてこれからも走る、曲がる、止まるをひたすら真面目に追求する

バイクの素晴らしさはもちろんだが、スタッフのみなさんの一体感と自信に満ちた笑顔も印象的な試乗会だった。ボルト1 本のディテールにまでこだわり、細かい調律は最後まで続いた。GSX-Rとは何か――その目標に向かって一丸となって突き進んだ

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