【Historic Bikes/~カタナ×Z900RS~】蘇った伝説の2台 カタナ×Z900RS[プレイバック・インプレ]
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走りの違いを徹底検証 SUZUKI KATANA×KAWASAKI Z900RS 2018年はカワサキ・Z900RSが、そして2019年はスズキ・カタナがバイク界を席巻。 いずれもかつての名車の名を復刻したリバイバルモデルだが、そのキャラクターは大きく異なる。それをつまびらかにするため、同じステージで直接比較しながらテストを行った。
※この記事は過去に掲載された記事を再編集した内容です。
KAWASAKI Z900RS
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(キャンディトーングリーン)(メタリックディアブロブラック)
Z900RS CAFÉ 138万6000円
(ヴィンテージライムグリーン×エボニー)(ファントムブルー)
SUZUKI KATANA
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154万円 (ミスティックシルバーメタリック)(グラススパークルブラック)
ワインディングの満足度を検証
まずは多くのライダーが楽しむであろう、ワインディングに持ち込んだ。ハンドリングもさることながら、乗り心地やフレキシビリティも含めて検証。ステージや速度域を選ばないZ900RSに対し、カタナは中高速域になるほど本領を発揮。異なる方向性で開発されていることが分かった。
痛快なカタナとフレキシブルなZ
ワインディングの前に、ライディングポジションから見ていこう。Zもカタナもポジション自体はコンパクトと言っていい部類だが、カタナには少なからず手強さがある。その要因はシート高で、リヤタイヤの位置が思いのほか遠く感じられるからだ。
その点、Z900RSはシート形状がスリムで、座面もソフト。一般的な体格ならハンドル幅はもう少しナローでもよさそうだが、900㏄という排気量を思わせないジャストサイズ感が心地いい。 車重は215㎏と両車同一ながら、Z900RSは重心が低いことも手伝って、取り回しが軽快。ハンドルの切れ角も大きい。そのため、特にストリートでの扱いやすさと一体感に分がある車体構成だ。
きちんとしつけられているとはいえ、その領域でのカタナは、手綱を緩めてくれるのを待っているかのような素ぶりを時折見せる。サスペンションは硬質でギャップを拾うと一瞬、車体がブルッと揺すられる。荷重を掛けることによって落ち着く高い減衰力が与えられているようだ。
カタナがイキイキと輝くのは、ちょうどこの写真のような高速コーナーに差し掛かった時だ。 前後のサスペンションに上手く荷重を配分し、車体全体を路面に押しつける。それができた時に挙動はピタリと安定。高い剛性を持つアルミフレームとタイヤもその領域でポテンシャルを発揮し始める。
上手く操るコツを指南してくるカタナに対し、Z900RSは寛容だ。ハンドリングは速度域やバンク角に寄らず常にニュートラルな状態を保ち、エンジンはスムーズに吹け上がっていく。高回転域ではチューニングされた空冷のように鋭くタコメーターの針を躍らせるが、出力特性自体はフラットなため、リスクなく操っている感に浸ることができる。 スキルを磨くならカタナ、対話を楽しみたいならZ900RSだ。
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サーキットで見えてきた本質
ここではワインディングよりもグッとアベレージスピードが上がるクローズドコースでスポーツバイクとしての本質に迫ってみた。 ステージになったのはヘアピンから高速コーナーまで揃う筑波サーキットのコース1000。スタビリティのカタナに対し、Z900RSは軽やかさで対抗していく。
ネイキッドとは思えない運動性を披露
本誌読者なら、時にはサーキットでスポーツ走行を楽しむ人も多いだろう。アベレージスピードが上がった時にどんな振る舞いを見せるのか。それを体感すべく、筑波サーキットのコース1000でラップタイム、最高速度、区間タイム、ライン取りなどの計測。データ収集にはアクティブのQスターズを使用した。
両車ともサスペンションのセッティングとタイヤの空気圧は標準のまま。トラクションコントロールは最も介入度が少ない「1」に設定して5周ずつ周回し、そのベストを比較した数字が上の通りだ。 ご覧の通り、GSX‐R1000由来のエンジンを持つカタナがパフォーマンスで上回るのは明らか。排気量とパワーが異なり、タイヤもZ900RSがダンロップGPR‐300を履くのに対し、グリップ力がワンランク上の同ロードスポーツ2が装着されていることも大きい。
ただし、カタナの真骨頂はビクともしないフレームと、それを見越してセッティングされたサスペンションにある。コーナーの進入から立ち上がりに到るまで車体はピタリと安定。リヤタイヤの接地感を常に意識していれば、少々ハードに扱っても挙動は乱れず、狙ったラインをトレースしてくれる。
一方、Z900RSはフレームもサスペンションもソフトで、フロントの舵角に任せておけばスムーズに旋回していく。計測データからも分かる通り、コーナー半径がタイトになればなるほどカタナとのギャップが少なく、ラインもコンパクトだ。 高荷重を受け止めてくれるカタナの刺激を「剛」とするなら、フレキシビリティに富むZ900RSは「柔」という一文字で表せる。好みに照らし合わせれば、選択肢は意外とはっきりしている2台だ。
筑波サーキット コース1000で検証
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【S-1】スタートラインから1コーナー飛び込みまでの区間。最高速をマークするポイントだ
【S-2】2コーナー立ち上がりまでの複合高速区間。スタビリティの高さが問われる
【S-3】フルブレーキングしながらヘアピンへ進入するため速度差が大きい。高い制動力が必要だ
【S-4】同じくヘアピン状のコーナー。路面のグリップが他の区間より劣り、接地感が求められる
【S-5】高速で切り返すため、スタビリティとフロントタイヤの応答性で車体の評価が分かれる
【S-6】最終コーナーに向かって曲率が増していく。旋回力をキープし続けられるかがポイント
【S-F】フィニッシュラインに向かって全開にする区間。パワーとトラクション勝負となる
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ねじ伏せるように扱ってもビクともしない車体 ベストラップ 42秒998 最高速度 151.03km/h
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スッとコーナーへ飛び込める軽やかなハンドリング ベストラップ 44秒208 最高速度 145.70km/h