【Historic Bikes/~VYRUS・984C3 2V~】~究極のマイノリティ~【R/C インプレッション archives】
※この記事は過去に掲載された記事を再編集した内容です。
ヴァイルスのラインナップにスタンダードと呼べるモデルがあるとするならば、この984C3 2V(以下984)がそれに相当する。 ドゥカティ製の1078㏄空冷2バルブLツインをアルミのオメガフレームで囲い、そこにスイングアームやシートレール、ステアリングセクションなどを締結。
最大の特徴はフロントの操舵を受け持つハブセンターステアである。 それがいかなる動きをするのかは、じっくり眺めてみても、実際にステアリングを左右に動かしてみてもその仕組みを理解するのは難しい。 まして、ハンドリングをイメージしようとするとなおさらだ。
「ブレーキングではどんな反応をするのか」、「バンクしていく時はどんな挙動をみせるのか」……と、そんな風にあれこれと思いを巡らせていると、気になって仕方がなくなってくる。そうなるともうヴァイルス(=ウイルス)に感染したも同然だ。
コーナリング時の動きはジェットコースターが旋回する時のよう
984の底知れない雰囲気は車体を引き起こす瞬間から始まる。乾燥重量は160㎏を下回るため、1000㏄超の排気量を持つにもかかわらず、手応えもスリムさも250㏄クラスと同等か、それ以下だ。 空冷ゆえに軽く、L型2気筒ゆえにナローなエンジンの特性がその車体によって最大限高められ、ハブセンターステア云々を語る前に、なによりライトウェイトスポーツとしての資質が抜群に高い。重量物が車体上部にはほとんどないことも手伝って、リーンさせる時の反応も「スッ、パタン」と軽やかだ。
ハブセンターステアはその機構上、ノーズダイブがほぼないとされている。それは実際そうなのだが姿勢や荷重の変化はしっかり伝わり、テレスコピックのようにそれが大きくないため、慣れるとむしろ不安なくブレーキを握り込むことができる。 コーナリング時の動きはユニークだ。
普通、バイクはブレーキングで荷重が車体の前部へ、そして路面方向へ移行するため、身体を起こしてバランスさせる。バンクが始まると今度は身体を路面へと近づけ、今度は外へ膨らもうとする車体の遠心力とは逆方向に体重を引き込む。 つまり、ライダーは上下左右の三次元の動きをするわけだが、ヴァイルスはその動きが少ない。では四輪的かというとそれとも違い、例えるならジェットコースターが旋回する時のように、身体を固定したままカントのついたレールを走っているようなイメージだ。
ようするにまったく異なるコーナリングの世界がそこにあるため、乗り方やセットアップで意志疎通を図っていくプロセスが新鮮で楽しい。さまざまなモデルを乗り継いでくると最後は安楽な方向へ流れがちだ。しかしまだまだ知らない、そして魅力的な世界があることをヴァイルスが教えてくれている。
VYRUS(ヴァイルス) 984C3 2V ディテール
こちらはリヤ側のスイングアーム。メインフレームを兼ねたアルミプレートに締結され、そこにヴァイルスとMUPO(ムッポ)社が開発したサスペンションが備わる
Specifications:VYRUS(ヴァイルス) 984C3 2V
エンジン | ドゥカティ製空冷4ストロークL型2気筒 |
バルブ形式 | DOHC2バルブデスモドローミック |
総排気量 | 1078cc |
ボア×ストローク | 98×71.5mm |
最高出力 | 98hp/7750rpm |
最大トルク | 9.7kg-m/6750rpm |
キャスタートレール | 18-24°/80-106mm |
ブレーキ | F=φ320mmフローティングダブルディスク+ブレンボ製キャリパーP2-32 |
R=φ210mmリジットディスクシングル+ブレンボ製キャリパーP4-30/34 | |
サスペンション | F=VYRUS-MUPO製 フルアジャスタブルモノショック |
R=VYRUS-MUPO製 カンチレバータイプフルアジャスタブルモノショック | |
タイヤサイズ | F=120/70ZR17 |
R=180/55ZR17 | |
全長/全幅/全高 | 2100/680/1100mm |
軸間距離 | 1375mm |
シート高 | 830mm |
燃料タンク容量 | 12L |
フェアリング素材 | タイプ1=カーボンファイバー |
タイプ2=アルテックス | |
価格 | タイプ1=667万4400円~ |
タイプ2=591万8400円~ |
※本スペックは『ライダースクラブ 2018年11月号』掲載時のものです。