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【Historic Bikes/~MV AGUSTA・F3 800/BRUTALE 800~】~イタリアン3気筒スポーツ!!~【R/C インプレッション archives】

※この記事は過去に掲載された記事を再編集した内容です。

シリーズの根幹を成すスタンダードモデルにこそ本質的な魅力がある 世界グランプリで通算270回も優勝を果たし、ライダータイトル38回、コンストラクターズタイトル37回という輝かしい記録を誇っているのがMVアグスタだ。 イタリア北部、ヴァレーゼに拠点を置くこのメーカーは60年代から70年代にかけて黄金期を迎え、一度その歴史を閉じている。

そんなMVアグスタが再び表舞台に姿を現したのが90年代に入ってからのことだ。当時、カジバを率いていたクラウディオ・カスティリオーニと、ビモータの創設メンバーであり、ドゥカティ916の生みの親としても知られるマッシモ・タンブリーニが文字通り東奔西走し、新生MVアグスタとして再起動に成功したのである。

その第一弾が、今や伝説的なモデルとも呼べるF4セリエ・オロだ。97年にその存在が明かされ、99年に世界限定300台で生産されたそれは、ドライカーボンやマグネシウムといった素材がふんだんに使われ、クロモリパイプが組み合わされた凝ったトレリスフレームにフェラーリ由来の水冷4気筒エンジンを搭載。シート下からのぞくマフラーの造形美はパイプオルガンに例えられるなど、すべてが画期的でなによりとても美しかった。

1999 F4 Serie Ore:’99年に限定300台で生産されたF4セリエ・オロによってMVアグスタは復活。その成功が後の3気筒エンジンの開発につながった

往年のファンの心を揺さぶった水冷3気筒エンジン

そんなMVアグスタに、さらなる転機が訪れることになった。それが10年に発表された、もう1台のセリエ・オロである。F3 675セリエ・オロと名づけられたそのモデルは、F4の流麗なスタイルを踏襲しながらもカウルの中には完全新開発の水冷3気筒エンジンが包まれていた。新しいファンはそれを新鮮な想いで受け入れ、往年のファンはある種の感慨を覚えたことだろう。

なぜなら、世界グランプリにおける連戦連勝に貢献し、世界最強の座を揺るぎないものにしていた時代の主力マシンこそが、他ならぬ3気筒エンジンを搭載していたからだ。他のどんなマシンとも異なる独特のサウンドと路面をかきむしるような力強いトラクションは世界中のライダーを魅了。その評価が浸透するまで時間はかからず、MVアグスタはそのユニットを主軸に、さまざまなバリエーションモデルを展開し、現在に至る。

とりわけここ数年の躍進は目覚ましく、18年モデルとしてカタログ上にラインナップされているのはF3シリーズが5機種ある他、ブルターレに至っては9機種も存在。
また、リバーレ1機種、ツーリズモ・ヴェローチェ2機種、ストラダーレ1機種、RVS1機種と、その攻勢は凄まじい。

ユーロ4規制に適合で日本でも同じスタイルで楽しめる

それぞれスペックで、あるいはカテゴリーで差別化が図られ、あらゆるニーズに応えてくれているわけだが、ここでは原点に立ち返るべく、3気筒を代表する2台のスタンダードモデルをあらためて紹介したい。1台がスーパースポーツの王道であるF3 800。そしてもう1台がネイキッドのブルターレ800である。
両モデルに共通し、ユーザーにとって最もよろこばしいポイントは、ユーロ4規制に適合したモデルが導入されたことだろう。

結果的にイタリア本国仕様と同じフルパワーを日本でも味わえるようになった他、日本専用のマフラーを装着する必要がなくなったことの恩恵はあまりにも大きい。というのも、F3にしてもブルターレにしても、車体右サイドからのぞく3本出しマフラーこそが3気筒の象徴であり、最大のアイデンティティだったはずだ。にもかかわらず、日本ではそれが封印され、本来の魅力が大きくスポイルされていた感は否めなかった。

しかしながら安心してほしい。今回の撮影はサーキットで行ったが、現在はストリートでもここに掲載したスタイルのままで楽しめるようになったのである。

F3は“爽快さの極み”、ブルターレは“低中速重視”

際限なく回りそうなほど、ストレスなく回転計のバーグラフが上昇するF3
対してブルターレは明確にトルクが厚く、立ち上がりで優位だ


F3もブルターレも年次改良が進んでいるが、より細やかなのはF3の方だ。最新モデルはバルブスプリング、カウンターシャフト、バルブガイドをはじめとするパーツが、ノイズの低減や耐久性向上のために設計変更された他、ギヤボックスといった大物パーツからハーモニックダンパーなどの小パーツまで、なにかしらの手が加えられている。フレーム側ではエンジンのハンガー部分が見直され、縦剛性の向上が図られるなど、この18年モデルが最新にして最良の完成度を誇っていることは間違いない。

そんなF3を走らせた時のフィーリングをひと言で表すなら、爽快さの極みだ。スロットルを開ければタコメーターのバーグラフは1万4000rpm超まで伸びやかに上昇。その領域で伝わってくるバイブレーションと少しザラついたエキゾーストノートは刺激に満ちたもので、さながら楽器のように右手でそれを奏でることができる。

正面から狙った走行写真を見てもらっても分かる通り、車体はスリムでコンパクトだ。ブレーキングや立ち上がり加速で速さを追求するよりも、フワリと弧を描くようなイメージでコーナリングスピードを乗せていくと、そのポテンシャルを引き出すことができる。ラップタイムでライバルを出し抜くのではなく、バイクとじっくり向き合い、いかにして車体との一体感を突き詰めていくか。F3はそういうストイックなマシンである。

一方のブルターレは、ファンライディングの領域がグッと広く、より多くの乗り手が濃密な時間を過ごせるはずだ。その要因はやはりエンジンにある。高回転型のF3と異なり、ブルターレはクラッチをつないだ瞬間に違いが分かるほど、明確に低中速重視だからだ。実際、最大トルクの発生回転数は3000rpm低く設定されているため(F3:1万600rpm/ブルターレ:7600rpm)、コーナーの曲率が小さくなればなるほど、F3を置き去りにするほどの鋭いダッシュをみせる。

車体が最大バンク角に達していくプロセスに醍醐味があるのがF3だとすると、ブルターレはリヤタイヤにトラクションを掛けていく立ち上がりに醍醐味がある。つまり、車速を維持したままクリッピングポイントに至る、コーナー前半がF3のフィールドなのに対し、ブルターレは後半でそれを実現。パッケージの多くは共有しながらも見事にキャラクターが変えられているのだ。

いずれのモデルを選んでもコーナリングに没頭できるのは、熟成が進んだマッピングやクイックシフターの影響も大きい。スタンダードモデルだからこそ、そこにある本質的な魅力に触れることができた。


MotoGPで主流の逆回転クランクを採用

総排気量798cc
圧縮比13.3対1(12.3対1)
ボア×ストローク79×54.3mm
最高出力148hp/13000rpm(109hp/11500rpm)
最大トルク8.97㎏m/10600rpm(8.46kgm/7600rpm)
※( )内はブルターレ800

※本スペックは『ライダースクラブ 2018年11月号』掲載時のものです。

フレームはエンジンに寄り添うスチール製トレリスフレーム



新生MVアグスタの3気筒には、1台の例外もなく逆回転クランクシャフトとトレリスフレームが採用されている。それらは機能のみならず、魅せることも重視。とりわけフレームは生産効率とコストの兼ね合いで簡素化される傾向にあるが、MVアグスタのそれは昔ながらの美しさを保っている。

MV AGUSTA F3 800(MVアグスタ・F3 800) ディテール

マルゾッキ製のφ43mm倒立フォークにラジアルマウントされたブレンボ製モノブロック4ピストンキャリパーを装着。もちろんABSも備えられている

4種のライディングモード(ノーマル/スポーツ/レイン/カスタム)と8段階のトラクションコントロールの設定・変更はハンドルに備えられたボタンで行う
燃料タンクの容量は16.5L。シルバーのサイドカバーはワンタッチで脱着が可能だ

シート高は805mmでスーパースポーツとしては標準的。表皮はグリップに優れ、身体をホールドしやすい

Specifications:MV AGUSTA F3 800(MVアグスタ・F3 800)

全長/全幅2060mm/725mm
軸間距離1380mm
シート高805mm
タンク容量16.5L
乾燥重量173kg
価格197万6400円

※本スペックは『ライダースクラブ 2018年11月号』掲載時のものです。

MV AGUSTA BRUTALE 800(MVアグスタ・ブルターレ 800) ディテール

サブフレームを兼ねたシートレールは軽さと優美さを併せ持つ斬新なデザインを持つ
’18年モデルはユーロ4に適合しているため、本国仕様と同じ3本出しマフラーを備えている
シフトペダルにはギヤのアップにもダウンにも対応するクイックシフターを標準装備。制御も見直され、その作動精度は大きく向上している
リヤセクションはザックスのモノショックと片持ちスイングアームを組み合わせる。撮影車両はミシュランだが標準装着タイヤはピレリ製の新型ハイグリップ、ディアブロ・ロッソIIIだ

Specifications:MV AGUSTA BRUTALE 800(MVアグスタ・ブルターレ 800)

全長/全幅2045mm/875mm
軸間距離1400mm
シート高830mm
タンク容量16.5L
乾燥重量175kg
価格165万2400円

※本スペックは『ライダースクラブ 2018年11月号』掲載時のものです。

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