【Historic Bikes/KAWASAKI 500SS MACH III/1974(カワサキ・500SS マッハ III)】〜元祖2ストトリプルのエキゾーストノートに酔う〜
※この記事は過去に掲載された記事を再編集した内容です。
北米マーケットのシェア拡大を狙った500SSマッハIII、通称H1
60年代の二輪界において、世界最速の量産市販車として名声を築いていたのはトライアンフであり、レースの最高峰GP500ではMVアグスタが黄金時代を迎えていた。 一方の国産勢はと言えば、市販車でもレースでも小中排気量車では誇るべき成果を上げていたものの、大排気量になると今一歩及ばず。
その状況を打破し、当時のメインマーケットだった北米でのシェア拡大を目指してカワサキが作り上げたのがこの500SSマッハIII(以下マッハ III)、通称H1だった。 マッハIIIの開発は67年にスタートし、すでにラインナップされていた2ストローク2気筒エンジンのA7(350cc)を上回ることはもちろん、ごくシンプルに世界最速の座に就くことを目標に掲げてエンジンの仕様が検討されていった。
その結果が498ccの排気量を持つ、空冷2ストローク3気筒エンジンだったのである。 シリンダーの冷却問題やフレームとのマッチングなど、数々の難題があったもののそれらを解決。 69年に送り出された時、カワサキが発表した「200km/hの最高速」と「12.4秒のゼロヨン加速」という数値は、世界最速という目標をクリアしたことを意味していた。
マッハIIIはH2、Z1の礎を築いた存在
同年、マッハIIIを追いかけるようにホンダはCB750フォアを発表。以降、あらゆるメーカーを巻き込みながらスペック競争とハイスピード化が進んでいくことになるが、そのトビラを切り開いたのがマッハIIIであったことを忘れてはならない。 また、カワサキ史に限って見ても、H2(748cc2ストローク3気筒)とZ1(903cc4ストローク4気筒)の存在が今なお燦然と輝いているはマッハIIIの成功がその礎になっているからである。
そんな誇り高きモデルを現代に残し、持てるパフォーマンスを余すところなく発揮できるように良好な状態を維持してくれているのが「バイク王」だ。キックを踏み込むとエンジンは軽々と始動し、アイドリングはほどなく安定。2ストローク特有の、あるいは3気筒特有の力強く弾 けるような排気音は威圧的だが、発進は思いのほかイージーだ。
特徴的なボトムニュートラル式のシフトチェンジをかき上げて1速に入れた後は、流すように走ることも許容してくれるが、やはりその魅力は高回転域に詰まっている。5000回転を超えたあたりから明確に強くなる振動を身体全体で受け留め、2次曲線的な加速感に身を浸した時の刺激は他に代わるものがないなににも制御されないエンジンをナマで味わう快楽。それを教えてくれるのがマッハIIIである。
撮影車両の ’74年型はマイナーチェンジ版
1969 500SSマッハIII (H1)
KAWASAKI 500SS MACH III/1974(カワサキ・500SS マッハ III) ディテール
Specifications:KAWASAKI 500SS MACH III/1974(カワサキ・500SS マッハ III)
エンジン | 空冷2ストローク並列3気筒 |
バルブ形式 | ピストンリードバルブ |
総排気量 | 498cc |
ボア×ストリーク | 60×58.5mm |
圧縮比 | 6.8対1 |
最高出力 | 59ps/8000rpm |
最大トルク | 5.7kg-m/7000rpm |
フレーム | ダブルクレードル |
サスペンションF | テレスコピックフォーク正立式 |
R | スイングアーム |
ブレーキF | シングルディスク |
R | ドラム |
タイヤサイズF | 3.25-19 |
R | 4.00-18 |
全長/全幅/全高 | 2085/835/1140mm |
軸間距離 | 1410mm |
重量 | 202kg |
価格(発売当時) | 36万5000円 |
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