【Historic Bikes/HONDA NSR250R】『プレイバック・インプレ』プロスペックモデルのNEW NSR250R第2回
※この記事は過去に掲載された記事を再編集した内容です。
IMPRESSION HONDA ’88 NSR250R 第2回 アグレッシヴに走り込めば走り込むほど、そのポテンシャルの奥の深さが伝わってくる……パフォーマンスのレベルはもとより、ハンドリングのキャラクターなど、徹底したモディファイを受けたNSR250Rは、すべてにわたって正しくレーシングマシンの域に達した。とりわけエンジンの絶対パワーから、スロットル操作の微妙な過度特性に至るまで、その熟成レベルの高さに、2st.を完全に掌中に収めた自信が伺える。 前回から、ライダースクラブの特別企画としてNSR250Rのインプレッションをお届けしている。バイク全盛期にモデルチェンジした’88 NSR250R。今から30年以上前のモデルで、今では伝説の2スト名車となっており入手も難しい。そんな当時の誌面を特別に掲載。懐かしい名車のインプレッションは、回顧録として今だからこそ趣き深く楽しめるだろう。シリーズは全4回となっている。
熟成レベルを具体化するプロスペック
真にせまる…1年と2ヵ月前、 我々はNS250Rから大きく進化したNSR250Rをこう評した。実際、それは我々にとって大きなインパクトであった。既にあの段階で、NS500→NSR500の進化と同じように、それまでホンダにとって主流としては扱っていなかった、 オンロードモデルとしての2st. エンジンと、 それを使ったマシンづくりで、ようやく具体的な完成度が伴ってきた実感を得た。
それ以前は、けして他に劣るパフォーマンスではなかったが、 2st. のキャラクターを、場合によっては 4st.的に押え込む、もしくは2st.的に特性を強調するなど、2st.のネガやポジにこだわり過ぎた結果を感じさせていた。 何にしても、個性の強い、楽しめる面もあったが、どこかにマイナーな生い立ちを感じるところがあったのは否めなかったのである。
V3エンジンの頃はもとより、 NS500のキャラクターを反映したような、 中高速の一気に吹くトルキーなV2となってからのNS250Rも、 固有の走りのパターンに入ればポテンシャルはなかなかのものだったが、多くのところを吟味した結果、敢えてその方向を選んだ、とは言い。難い面が支配的だったのを御記憶の向きも多かろう。
それが、NSR250Rとなって、 大きく変ったのである。これで当面通用するトップクラスの次元に到達した、そう思わせる具体的なキャパシティを身につけていたからだ。 そのNSR250Rが、それもたった1年間でモデルチェンジされると知ったとき、何かあまりピンと来なかったのが正直なところである。
そして、 東京モーターショーでデビューしたそれは、一見してマイナーチェンジの、従来モデルとは大差ないイメージだったので、はじめはあまり気にもとめていなかったほどである。 しかし実は、となったわけだ。 変更点は、というより、ほとんどの部分が新たに設計し直されたNew NSR250Rだったのである。
詳しくは解説の項をご覧頂くとして、注目すべき広告コピーにもあるイプロスペックについて少し触れておこう。 これは、冒頭から記している具体性の高さに関連している。プロスペックとは、3つのプロフェッショナル·ゾーンの融合体であるというのだ。
ひとつは、 HRCのワークスマシン開発による最先端テクノロジー。また様々なストリートライダーに応えるための、 知能化というレーシングマシンとは違った側面での開発。 そして、ストリートマシンのクオリティに代具表されるテイストという市販車開発のノウハウもこれに加わる。
つまり、ただレプリカとしてレーシングマシンを追うというのは、 言い換えれば本モノのトーンダウンした到達点がせいぜいであり、開発側にとってそれてはレーシングマシンと違って長い間マシンと親しもうとするユーザーに少し粗野になりはしないか、といった考え方がベースになっている。
最先端の絶対パフォーマンスのレベルと、ハンドリングなどその内容の傾向については、HRCワークスマシン開発から直接フィードバックできる。 しかし、それをGPライダーではない、一般のライダーに、 妥協して本質をスポイルすることなく提供するには、レーシングマシンとは異なるフィールドでのテクノロジーが必要になる。
これを、知能化という、コンピューター技術を駆使してデリケートなところまでカバーしようというのだ。 そして、高価なレーシングマシンレプリカとしての味わいを、 市販車クオリティの方法論の中で身につけさせるのにも、また相応のテクロノジーが必要になる。このどれもを、プロフェッショナルとしての、多くを知った上での吟味というレベルで反映させようというのが、見直しの域を遥かに越えたNew NSR250Rのコンセプトなのである。
だから、ということになるのだろうが、New NSR250Rはレプリカとして追うレーシングマシンのキャラクターを明確に具現化しながら、少しもトーンダウンを感じさせていない。それでいて、 記したように、フルパフォーマンスの域でなくとも、本領発揮のキャラクターから大きく外れないポテンシャルを感じさせている。
クオリティとして、時間の経過後については現時点で不明なのはいうまでもないが、視覚や触感としてグレードを意識した心配りが感じられるのも間違いない。これは各部のクローズアップをご覧になれば、いくらか伝わるはずだと思う。 その一見しただけでは判断のできない、進化の具体的な内容である、走りのポテンシャルについて触れてみよう。