【Historic Bikes/KAWASAKI Ninja 1000SX】極上の本格スポーツ&ツアラーがさらに進化
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※この記事は過去に掲載された記事を再編集した内容です。
極上の旅へのいざない フルモデルチェンジしたKAWASAKI Ninja1000SX 2011年、カワサキのラインナップに加わったニューモデルがNinja1000だ。スポーティなハンドリングとツアラーとしての快適性を融合したそれは着々と改良が加えられ、2020年に「Ninja1000SX」へと進化。充実の機能と、それがもたらすライディングプレジャーをお届けしよう。
快適なツーリングにもアクティブなコーナリングにも応えてくれる万能モデル
2011年当時、カワサキはビッグバイク市場にいくつもの水冷4気筒モデルを抱えていた。欧米を中心にフラッグシップのZZR1400、スーパースポーツのZX‐10R、ストリートファイターのZ1000などを展開し、国内向けにはスポーツネイキッドのZRX1200ダエグを用意するなど、なかなか厚い層を形成していたのである。
そんな中、さらなるラインナップの拡充を計画。新しく加えられたのがニンジャ1000だった。カワサキはそれに「パーソナルジェットファイター」と異名を与えて大きくアピール。それの意味するところはGPZ900R、つまり初代ニンジャの再来と言っていい。 GPZ900Rはレーサーレプリカではなく、ツアラーでもない、まったく新しいポジショニングを築いた傑作である。あらゆるステージでライバルを打ち負かす高いパフォーマンスを発揮し、それでいて快適性にも配慮されたスペックと装備は、今にして思えばまさにパーソナルジェットファイターというコピーがふさわしい。
映画『トップガン』におけるF14戦闘機との並走シーンはあまりにも有名だが、もしかするとあの場面がコピーのヒントになったのかもしれない。 ともかく、ニンジャ1000の中にはスーパースポーツの運動性とスポーツツアラーの包容力が盛り込まれ、ハイスピードツーリングを好むライダーにウケた。特に欧州では多くの国でベストセラーを記録。その正常進化版が20年に投入された「ニンジャ1000SX」である。
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スリムな車体をフルカウルで包み、そこにアップハンドルを組み合わせる基本構成は従来通りながら、左右に振り分けられていたマフラーは右側1本出しになり、シャープな造形がさらに際立っている。サイドカウルを中心に外装もリファインされ、ベンチレーション機能の向上も図られているという。
素材と形状が見直されたシートはホールド性に優れ、手を伸ばせばちょうどいいところにハンドルがある。下の走行写真からも分かる通り、ワキやヒジが適度に締まるスマートなライディングフォームへ自然にいざなってくれるのだ。
スペック的にはそれほど低回転寄りのエンジンではないものの、無造作にクラッチをつないでも力強いトルクを得ることができる。新しく採用されたクイックシフターはギヤのアップもダウンも正確にこなし、矢継ぎ早に3つ落とすような操作も難なく受け入れてくれる。
ハンドリングを語る上で印象的な振る舞いはいくつもあるが、コーナーへ進入し、最大バンク角に至る時のスタビリティと接地感には常に感心させられることになった。リーンさせる時の手応えは軽い、重いで言えば確実に軽いものの、軽薄さは一切なくビタッと張り付くようにラインをトレース。必要ならバンク角を足したり戻したり、あるいはスロットルを開けたり閉じたりするだけで、鼻先をアウト側にもイン側にも向けることができる。この自由度は他のモデルにはないアドバンテージのひとつだ。
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あらゆる場面でライダーのスキルをサポート
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フロントフォークのピストンにはスリットが設けられ、オイルの流入スピードを最適化。端的に言えば、よりしなやかなストロークを実現しているわけだが、リヤサスペンションのリセッティングも含め、従来モデルとの明確な差がここにある。
ニンジャ1000SXのそんなハンドリングを楽しんでいると、気づけばかなりのアベレージスピードに達しているかもしれない。そんな時はTFTディスプレイ内に表示されるバンク角を確認し、自制することをおすすめする。ブリヂストンのスポーツハイグリップタイヤ「S22」が純正装着されていることも手伝って、バンク角はいとも簡単に50度を超えてしまうからだ。
もっとも、エンジンパワー(フル/ロー)とトラクションコントロールの介入度(1/2/3/オフ)を統括制御するライディングモード(スポーツ/ロード/レイン/ライダー)の他、KIBSと呼ばれる独自のABSに任せておけば、リスクはかなり軽減してくれる。
過信は禁物ながらその恩恵は極めて大きく、高度なアクティブセーフティ機能が150万円を下回る価格に含まれていることは驚きだ。そこには保険と同等の価値がある。なんでもこなせる中庸さは無個性と紙一重ながら、ニンジャ1000SXにそれは当てはまらない。
快適性と利便性を高めるための装備はほとんど網羅 Ninja1000SX DETAILS
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スクリーンは4段階の可変式
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大幅に洗練されたエンジン
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ツーリングを快適にする豊富なアクセサリー
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Nina 1000SXに装備される電子デバイス
●インテグレーテッドライディングモード スポーツ/ロード/レイン/ライダー●カワサキトラクションコントロールモード1/2/3●パワーモード フル/ロー●カワサキコーナリングマネージメントファンクション●カワサキインテリジェントアンチロックブレーキシステム●カワサキクイックシフター●エレクトロニッククルーズコントロール
インテグレーテッドライディングモードとはトラクションコントロールとパワーモードと連動するシステムだ。例えば「スポーツ」を選択するとトラクションコントロールは「1」(=介入度が最も低い)、パワーは「フル」が自動選択され、よりダイレクトなフィーリングを味わえる。制御の要は重量わずか40グラムのIMUが担う
Nina 1000SX Colouring
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●LEDライトの採用やカウリング形状の変更、マフラーの新設計などが効果的に機能し、もともとスリムだったボディラインがより強調されている