1. HOME
  2. RC Archive
  3. History of MONSTER -since1973- 4世代にわたるモンスターの歴史を紐解く

History of MONSTER -since1973- 4世代にわたるモンスターの歴史を紐解く

モンスターの創造主ミゲール・ガルーツィ                                            カジバ在籍時代、上司に反対されつつも独断でモンスターを生み出したデザイナー。その後はアプリリアに移籍し、ドルソデューロやモトグッツィのカリフォルニア1400を生んだ

レーサーのように尖ったスポーツモデルばかりが目立ったドゥカティのラインナップを、
ネイキッドというパッケージによってフレンドリーさを際立たせた立役者がモンスターだ、
ドゥカティの歴史を語るうえで欠かせない名車の変遷を追いかけ、その功績を今一度振り返ろう。

歴代モンスター進化のあゆみ  since1993~2021

1993 第1世代(前期)

851系フレームに900SSの空冷Lツインを搭載し、アップライトなバーハンドルを装着。いわば“あり合わせ”だったため初期型はカスタムの余地が大きく、それも人気の一因となった。モンスターという名称はガルーツィがつけたプロジェクトコードで、ケルンショー発表時の車名はM900だった

2000 第1世代(中期)

これまでにも細かなアップデートは行われてきたが、900SS系だったエンジンをSS900系に換装し、燃料供給をキャブレターからインジェクションとする、大きなアップデートが行われた。748 と同様のクロスミッションも採用され、よりスポーティな走りを生み出した。意外だがタコメーターの装備もこの頃だ

2003 第1世代(後期)

スーパーバイク916の水冷Lツインを搭載した、よりパワフルなモンスターS4が登場したのが2001年。スーパーバイクの血脈を継ぎつつ進化し、2004年には996系エンジンを搭載し、片持ち式スイングアームを装備するS4Rが登場。2006年には999系エンジンのS4RSテスタストレッタへ進化した

2008 第2世代

初のフルモデルチェンジでは、空冷Lツインとトレリスフレームが継承された696がデビュー。その後に登場した796と1100には片持ち式スイングアームが装着されたが、エンジンはすべて空冷Lツインが搭載された。また、フレームの軽量化と高剛性化によって乗りやすさが格段に向上し、新たなファン層を拡大した

2014 第3世代

パニガーレで培ったフロントフレームの構造をトレリスフレームで実現し、大幅なアップデートを図った。エンジンは水冷のみとなり、1200の後に821がデビューした。ライドバイワイヤ採用により、ライディングモードやトラクションコントロールなど電子制御デバイスも充実。ロー&ロングなシルエットも特徴だ

2017 第3.5世代

長く伸びた細身のトレリスフレームに空冷Lツインを搭載。水冷化された第3世代登場から3年を経て、原点回帰するかのように現れた。モデル展開は797の1機種のみという異端児でもあり、環境性能を考慮するとおそらくはこれが最後の空冷モンスターだろう

2021第4世代

最新モンスターはトレリスフレームを撤廃し、大きなイメージチェンジと現代化を図った。ルックス面では歴代でもっとも変化したモンスターといえる。フロントフレームによるスリムで軽い車体は、ドゥカティらしさに溢れている

脈々と進化を続けながらもコンセプトは変わらず

70年代後半から90年代初頭にかけてのドゥカティは、現在に続く「レースで培ったノウハウを市販車にフィードバックするスポーツマシンメーカー」の地位を確固たるものにした時代だった。Lツインエンジンはベベル、パンタ、空油冷、水冷へと進化し、高速化も激しく進んだ。それに伴いフェアリング装備が必須となり(時代の流行でもあった)、80年代後半のドゥカティラインナップは赤いフェアリングのモデルで埋め尽くされていた。

そんな時代が続いた1992年のケルンショーで、フェアリングを持たないスポーツバイクとして披露されたのがモンスターだ。フラッグシップスポーツの851のフレームを改良し、ストリートスポーツの雄である900SSの空油冷Lツインを搭載。そこへ流麗なフォルムの燃料タンクとシートからテールカウルへと至る曲線を描いた。

「気軽に乗れるけど、しっかり速いスポーツバイク」には好評価も批判も出たが、その後30年近く続くロングセラーモデルとなったことを考えれば、批判が当てはまらなかったことが分かる。公式には今年登場したモンスターが第4世代となっており、それに従って世代別に並べるとこのようになる。

第1世代は15年間と長く、そのスタイルを大きく変えることなくブラッシュアップが続けられた。細身の鋼管トレリスフレームと美麗なフォルムのタンクが作り出すスタイルは、他メーカーのネイキッドバイクにも大きな影響を与え、後期にはドゥカティスタイリングの特徴のひとつでもあった片持ち式スイングアームを採用している。また、916の水冷Lツインを搭載したS4が登場し、モンスターはより過激な走行性能を獲得していく。

第2世代はトレリスフレームという構造を継承しつつも完全新設計とし、搭載するエンジンは空冷のみとしている。これは水冷エンジン版がストリートファイターへと分化したためで、これによりモンスターは高いスポーツ性を維持しつつもフレンドリーさも獲得。ビギナーを中心としたファン層の拡大に貢献していく。

第3世代は、搭載されるエンジンが水冷のみとなった。環境性能と出力特性を高次元で両立させる手段であり、強度メンバーにエンジンを利用するフロントフレーム式になったことと相まって大きな進化を遂げた。

第4世代となる最新モンスターは、最大のアイコンともいえるトレリスフレームから脱却し、歴代でもっとも姿かたちを変えたモデルとなった。見た目こそ大胆に変わったが、「気負わず乗れる、軽快な高性能スポーツ」という特性と、燃料タンクが作り出す特徴的なフォルムのコンセプトは変わっていない。

じっくりと眺め、そして走り出せばすぐにこれが進化した最新モンスターであることがわかる。こうなると第3世代まで存在した、1200㏄モデルの登場にも期待したい。

関連記事