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最良のスポーツツインとは?その解答がココにある|KTM 1290 SUPER DUKE R

「THE BEAST」の異名を誇る1290スーパーデュークRがフルモデルチェンジを受けて誕生。もうすぐ上陸を果たす。そのパワーとハンドリングを本誌テスターの伊丹が体感してきた

PHOTO/KTM TEXT/T.ITAMI
取材協力/KTMジャパン TEL03-3527-8885
https://www.ktm.com/jp/

※この記事は過去に掲載された記事を再編集した内容です。

スパルタな試乗会の果てに見えてきたもの

2019年のEICMAで発表されたKTMのスポーツネイキッド、新型1290スーパーデュークRに試乗してきた。舞台はW SBも開催されているポルトガルのポルティマオ・サーキット(正式名称はアウトドローモ・インターナショナル・ド・アルガルベ)と、その近郊のワインディングである。

印象的だったのは試乗スタイルで、「四の五の言わずにとにかく走ってこい!」というもの。サーキットでは3時間の中に6本の走行枠が設けられ、ピットインしてもほとんど休む間もなく、追い立てられるように再びコースイン。本誌でもお馴染みのジャーナリスト、鈴木大五郎と参加してきたのだが、「これってなにかの訓練だっけ?」とふたりで顔を見合わせるほど、軍隊的なタイムスケジュールが組まれていた。

ワインディングに場所を移してもそれは同様で、基本的にアベレージスピードが高いヨーロピアンメーカーの試乗会の中でもKTMは群を抜く。しかも、開発スタッフ自らが先導を買って出るのが普通で、抜群に高いスキルを見せつけるようにして走りに走る。そこには「どうだ、これが俺たちのバイクだ!!」という自信が溢れ、こちらのテンションもどんどん上がっていくのだ。

言い方を変えると、スロットルを開けていないとストレスが溜まるバイクだと思うかもしれない。

しかし実際は真逆だ。自由自在に、そしてイージーに操れるからこそ、どこでも右手をひねりたくなる。1290スーパーデュークRは、そういうバイクに仕上がっていた。

スーパーデュークの歴史は、05年に登場した990に端を発する。幾度かのモデルチェンジ経て、14年に車名の数値が1290へアップ。実際の排気量はそれよりもさらに大きい1301㏄まで拡大され、この新型に引き継がれている。

本誌前号の2気筒特集では19年型1290スーパーデュークRに乗り、年次改良によって進んだ扱いやすさを高く評価した。「完璧に躾られているビッグボアの爆発力」と題したショートインプッレションをお届けしたわけだが、この最新型はそれをさらに凌駕。スムーズの極みとも言える、まろやかな過渡特性が与えられていたのだ。

既述の通り、エンジンの基本設計自体はそのままながらシリンダーヘッド、カムシャフト、燃調、クランクケース(そのままと言いながら、ここだけで800g 軽くなっている)といったパーツを見直した上で、エアボックスやエキゾーストといった吸排気系パーツを最適化。最高出力の発生回転数は9750rpmから9500rpmに下がり、最大トルクは7000rpmから8000rpmに上がっている。

エンジンの基本設計は従来モデルから踏襲されているが、シリンダーヘッド、カムシャフト、燃調、インジェクターなどが見直され、3psの出力向上と1kgの軽量化を達成した
エンジンの基本設計は従来モデルから踏襲されているが、シリンダーヘッド、カムシャフト、燃調、インジェクターなどが見直され、3psの出力向上と1kgの軽量化を達成した

スペック上の数値は微増微減といったところではあるが、体感的には大きく違う。とりわけ低回転域では800〜900㏄クラスのVツインのようにコロコロと軽やかに回り、ビッグボアエンジン特有のガツガツとした強烈な爆発トルクがない。これはもちろんポジティブな評価で、そのおかげでコーナーからの立ち上がり加速や街中のストップ&ゴーをストレスなく楽しむことができる。

秀逸なのは、きっちりとパワーも出ているところだ。持っているはずのパフォーマンスを単に抑えつけているのではなく、ライディングモードのレベル(レイン/ストリート/スポーツ/トラックがある)を引き上げ、必要に応じてトラクションコントロールやウイリーコントロールの介入度を下げていけば、5速、あるいは200㎞/ h近い領域からでもフロントタイヤがフワリと路面から離れようとする。

サイレンサーの容量は拡大され、もちろんユーロ5をクリア
サイレンサーの容量は拡大され、もちろんユーロ5をクリア
タイヤはブリヂストンのS22が純正指定されている
タイヤはブリヂストンのS22が純正指定されている

緻密な作り込みが伺えるのは、それを恐怖心なく楽しめることだ。パワーがあっても暴力的に溢れ出てくる特性ではこうはいかない。

さて、新型1290スーパーデュークRの本領はここからだ。エンジンだけを見れば熟成が進んだビッグマイナーチェンジといったところだが、車体はすべて刷新されていることが分かるだろうか。

特にメインフレームの意匠はまったく異なり、クロモリの丸パイプが可能な限りシンプルな構成で組み合わせられている。結果的に、ねじり剛性は従来モデル比で3倍に向上。それでいて2㎏の軽量化も実現し、低重心化も進められた。

ねじり剛性の3倍アップと2kgの軽量化を実現
長円状だったクロモリパイプのメイン部分はシンプルな円形になり、剛性のアップと軽量化、低重心化に貢献。サブフレームはアルミと強化プラスチックから成り、こちらも大幅に軽くなっている

パイプによるトレリス構造から強化プラスチックの複合材に変更されたサブフレームや、5㎜上がったピボット位置、剛性が15%向上したスイングアーム……といった部分の改良も大きいが、メインフレームに次いで印象的だったのが、リヤサスペンションに設けられたリンクだ。

ダイレクトなフィーリングを好むKTMの開発陣は、オンロードモデルもオフロードモデルもリンクレス構造を採用することが珍しくないものの、スーパーデューク史上、初めてリンクを採用。この効果は高く、接地感の掴みやすさとギャップの収束性に大きく貢献。新型があらゆる場面で見せるスロットルの開けやすさも、このリンクが無関係ではない。

前後サスペンションはWPのフルアジャスタブル。リヤサスペンションに新しくリンクが採用されたことがトピックだ。これによって路面追従性と乗り心地が大きく向上。より上質なハンドリングを得ている
前後サスペンションはWPのフルアジャスタブル。リヤサスペンションに新しくリンクが採用されたことがトピックだ。これによって路面追従性と乗り心地が大きく向上。より上質なハンドリングを得ている

ポジションが選べるハンドル位置や角度調整が可能なディスプレイなど、よりライダーフレンドリーに生まれ変わった一方、チタンのフルエキゾーストやアルミ削り出しのステム、一体感を高めるためのレーシングステップといったパフォーマンスパーツももちろん用意。乗り手の好みによって、いかようにも変貌する懐の深さが魅力だ。

ライダーの体格に合わせて角度調整ができる5インチのTFTディスプレイを採用。操作はジョイスティック状のボタンに集約されている
ライダーの体格に合わせて角度調整ができる5インチのTFTディスプレイを採用。操作はジョイスティック状のボタンに集約されている
ライダーの体格に合わせて角度調整ができる5インチのTFTディスプレイを採用。操作はジョイスティック状のボタンに集約されている

KTMのさらなる躍進がここから始まろうとしている。

エンジン水冷4ストロークV型2気筒
バルブ形式DOHC4バルブ
総排気量1301cc
ボア×ストローク108×71mm
圧縮比13.5対1
最高出力180ps/9500rpm
最大トルク14.28kg-m/8000rpm
変速機6速
クラッチ湿式多板
フレームクロモリ鋼管製スペースフレーム
乾燥重量189kg
装備重量198kg(ガソリンレス)
キャスター/トレール25.2°/106mm
サスペンションF : WP製APEX48
R : WP製APEXモノショック
ブレーキF : φ320mmダブルディスク
R : φ240mmシングルディスク
タイヤF : 120/70 -17
R : 200/55 -17
軸間距離1497±15mm
シート高835mm
ガソリンタンク容量16ℓ
価格217万9000円
日本導入時期2020年4月頃
※日本はブラックのみの導入となる

※この記事は過去に掲載された記事を再編集した内容です。

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