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【Historic Bikes/TRIUMPH STREET TWIN】生き続ける、英国バーチカルツイン

日本に上陸したストリートツインにさっそく試乗する機会を得た先代の空冷モデルから遥かに洗練されつつもその乗り味はけっして薄まることなくトライアンフらしさが磨かれていた

PHOTO/T.HIROSE TEXT/T.OGAWA
取材協力/トライアンフ モーターサイクルズ ジャパン 
TEL03-6809-5233 http://www.triumphmotorcycles.jp/

※この記事は過去に掲載された記事を再編集した内容です。

その乗り味を知ると、もはやエンジンは水冷でも空冷でもどちらでもよくなってくる。

僕は先代の空冷ボンネビルよりも圧倒的にこの水冷になったストリートツインの方が好みだ。270度クランクとは思えないほどのスムーズさで、それでいて豊かな鼓動を発揮するバーチカルツインエンジンは、トライアンフらしさをライダーに訴えかけてくる。

スロットルを大きく開けなくても後輪がトラクションするトルク感は、扱いやすさと気持ちよさを見事にバランスさせている。走り出して数秒で、僕はストリートツインの虜になった。まずは味見……のつもりだったのだが、暖かい気候だったこともあり、時間を忘れて走り回ってしまった。

市街地の速度でも気持ち良さが光る。ポジションはコンパクトでイギリスのバイクと思えないほど、日本人サイズだ。166cmの僕でさえ大きさを感じない。跨るとハンドルとステップが丁度いい位置にあり、タンクのフィット感も良好。シート幅は狭く、足つき性も抜群に良い。跨っただけではとても900ccとは思えない。

大きさをまったく感じないため、軽快感も高く、よく動くサスペンションも手伝って、速度を問わず操っている醍醐味が高い。

空冷ボンネビルにあったホイールベースの長いクルーザー感は皆無で、細いタイヤ特有のヒラヒラとしたハンドリングはどこにも難しさがないほど素直なキャラクターだ。これなら気軽に走り出せるし、毎日でも乗りたくなるだろう。

エンジンを高回転まで回さなくても、飛ばさなくても楽しいその絶妙な味付けは見事。その気になれば速さを発揮するポテンシャルを秘めているに違いないが、その必要性を感じない。

発進したらすぐにシフトアップを繰り返していく。タコメーターがないため何回転で走っているか分からないが、おそらく2500〜3500回転。ここからスロットルを開けた際の過渡特性も良く、後輪がグゥ〜と路面を掴み、グリップ感を伝えてくる。低回転から大きめのスロットル開度で走るのがたまらなく気持ちいい。

実はこのストリートツイン、いち早く乗りたかったため、借用時の総走行距離は100kmそこそこだった。ナラシも終わっていない状態だが、すこぶる調子が良いのに驚いた。

これから各部にアタリがついてくることを考えると、その気持ち良さに、さらに磨きがかかりそうだから楽しみだ。

乗り味が気に入ると細部のディテールも愛でたくなるのはライダーの性だろう。マット調のサイレンサーはクラシックレーサー特有のリバースコーン形状を採用。

シリンダーが垂直にそびえるエンジンも雰囲気がいい。エンジンは先代の空冷よりもコンパクトで、もちろんラジエターは装備するがその存在感はそれほど気にならない。

また、ボンネビルシリーズの中でもっとも入門的な位置づけのストリートツインではあるが、その乗り味に一切の安っぽさはなく、イギリスならではの気品に溢れていた。

トライアンフがひたすら真面目にボンネビルらしさを追求した結果をまずはここに見た気がする。ここ数年は、3気筒やクルーザーに没頭していた感があるが、バーチカルツインの伝統は守られ、継承されていたことに嬉しくなる。

これは同時に、この後に控える1200ccモデルへの期待にも繋がる。

メーターはシンプルな1 眼タイプながら、シフトインジケーターなどを装備する最新型だ。ライダーの感覚を大切にするため、あえてタコメーターは装備しない
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外車とは思えなかったのがクラッチレバーの操作感の軽さ。しかも、アジャスト機構付きというのも嬉しい
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ダブルクレードルフレームに寄り添うようにラジエターを装備する。エンジンの素晴らしいフィーリングに「空冷でなければ」という固定概念は消え去る
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タイヤはピレリ製のファントム。そのパターンにグッとくるライダーも多いはず
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