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【Historic Bikes/BMW S 1000 XR】最速のアドベンチャースポーツ

この8月から日本に導入が開始されたBMWの新型4気筒スポーツがS1000XRだそのコンセプトはスーパースポーツのS1000RRでもネイキッドのS1000Rでもなくその両方を広範囲にカバーするクロスオーバー・ロードスターというもの果たしてそのパワーとハンドリングはそれにふさわしいものなのだろうか!?

PHOTO/T.HIROSE, BMW TEXT/T.ITAMI
取材協力/ビー・エム・ダブリュー
0120-269-437 http://www.bmw-motorrad.jp/

クロスオーバーというよりは純然たるスポーツバイクだ

S1000XR(以下、XR)でワインディングを走ることしばし。その間、どんどん自分が今操っているのがスーパースポーツのS1000RRなのか、そのネイキッドバージョンであるS1000Rなのか、あいまいになっていった。

それほどスポーティーで、端的に言えば強烈に速かったのだ。しかもコーナーが連続するツイスティなステージでは3車中最もアベレージスピードが高いのは間違いなく、さらに言えば他のメーカー、他のカテゴリーを見渡しても、その領域でXRを凌ぐ速さを披露できるモデルは数少ないだろう。

スロットルひとつで驚くべきダッシュ力が得られ、バンク角次第で旋回力のコントロールも自在。そのアップライトな車体からは想像もつかなかったアグレッシブさに翻弄されたというのが正直な第一印象だった。

【直列4気筒エンジンはネイキッドのS1000Rと共通】 エンジンの仕様はネイキッドのS1000Rと共通。11000rpmで160㎰を発揮するそれは絶対値こそスーパースポーツのS1000RRに及ばないものの、低中速のトルクとレスポンスは明らかに上回っている
【直列4気筒エンジンはネイキッドのS1000Rと共通】 エンジンの仕様はネイキッドのS1000Rと共通。11000rpmで160㎰を発揮するそれは絶対値こそスーパースポーツのS1000RRに及ばないものの、低中速のトルクとレスポンスは明らかに上回っている

そもそもXRとはどういう立ち位置のモデルなのか? その疑問に対するBMWの答えは明確で、同社の四輪でいうところのX5。つまり、SUV(サブ・ユーティリティ・ビークル)と同様のコンセプトで開発が進められたという。

「オンもオフもアクティブにこなせるクロスオーバーモデル」というのがそれで、例えるならS1000RRのスポーティーさとS1000Rのユーティリティー、R1200GSのタフさを併せ持ったバイク。

違う表現をするなら、S1000RRより安楽で、S1000Rより快適で、R1200GSより実用的。そういうワガママをカタチにしたものがXRというバイクである。

HP4 以降、続々と装着車両の拡大が図られているのが状況に応じて減衰力が自動的に変化する、いわゆるセミアクティブ方式の電子制御サスだ。「ダイナミック」と「ロード」という2種の減衰力から選択することが可能
HP4 以降、続々と装着車両の拡大が図られているのが状況に応じて減衰力が自動的に変化する、いわゆるセミアクティブ方式の電子制御サスだ。「ダイナミック」と「ロード」という2種の減衰力から選択することが可能
フレームはS1000RR ともS1000R とも異なり、XR 用に専用設計されたアルミ製のペリメターフレームを採用。またエンジンブロック自体にも強度メンバーの役割が与えられ、剛性としなやかさのバランスが図られている
フレームはS1000RR ともS1000R とも異なり、XR 用に専用設計されたアルミ製のペリメターフレームを採用。またエンジンブロック自体にも強度メンバーの役割が与えられ、剛性としなやかさのバランスが図られている

実際、そのための装備には抜かりがない。もはやBMWの新型モデルには全車に標準装備されているイメージすらあるが、XRにも数々の電子デバイスが盛り込まれているのだ。

その筆頭が「ライディングモード・プロ」と呼ばれるエンジンモードで、「レイン」「ロード」「ダイナミック」の中から好みの出力特性を選ぶことができる。

それぞれのモードに対してトラコンやスタビリティーコントロールの介入度も自動的に変化してくれるため、操作は至ってシンプル。走行中の切り換えもボタンひとつで行うことができる。最近のBMWはこうした制御の介入度合いを完全にモノにしていて、どれを選択してもレスポンスがダル過ぎたり、挙動が神経質になったりすることはない。

得意とはまでは言わないが適切なトラコンのおかげで、ちょっとしたダートなら恐怖感なく走ることができる
得意とはまでは言わないが適切なトラコンのおかげで、ちょっとしたダートなら恐怖感なく走ることができる

極論すればキャリアのあるライダーが終始レインで走ったとしても、少なくとも公道なら大きな不満は出ないはず。それほど実用性が高いのが特徴だ。ちなみに、公道では使用できない「ダイナミック・プロ」というモードもあるが、XRでそれを必要とするライダーはかなり限られているだろう。

また、減衰力が荷重の強弱や路面からのインフォメーションによって自動的に変化(その反応速度は1/1000秒単位)するセミアクティブサス「ダイナミックESA」も装備。簡単に言えば、ソフトな「ロード」とハードな「ダイナミック」のいずれかを選ぶことができるが、こちらもエンジンモード同様、どんなペース、どんなシーンで走っても優劣はなく、単純に乗り手の好みの範疇と言える。

フロントフォーク左側とリヤサスには電子制御用のユニットが接続され、車体や路面からの情報を元に減衰力が最適化される

この他、シフトダウン時には見事なブリッピングを披露する「ギヤアシスタント・プロ」や、その実用性から一度使うと手放せなくなる「オートクルーズ」、「グリップヒーター」も標準装備。それらも含めて設定された価格が209万5000円。この価格設定は、コストパフォーマンスにおいても群を抜いた存在と言えるだろう。

さて、XRはあらゆるライダー、あらゆるステージをカバーするために作られたモデルだが、その魅力が最も光るのは、やはりワインディング主体のスポーツツーリングだ。

シフトアップはもちろんダウンにも対応するオートシフター「ギヤシフトアシスタントPRO」を標準装備。その作動性はスムーズそのもの

エンジンを掛けた瞬間からその特性が明らかになる。等爆4気筒特有の硬質なサウンドに加え、俊敏に跳ね上がるタコメーターの針は、スーパースポーツ出身のエンジンであることを如実に示している。

ハンドリングからもそのDNAが伝わる。バンクさせること自体は容易だが、しっかりと旋回力を引き出すためにはある程度の入力を要する。そのため、例えばGSのようなモデルと比べると、より積極的な操作が求められる。しかし、それこそがXRというバイクの本質だ。「デキる男のプライベートエクスプレス」。この表現が最もふさわしい一台と言えるだろう。

BMW S 1000 XR

ラジアルマウントされたブレンボキャリパーと150㎜のストローク量を持つφ46 ㎜の倒立フォークを装備
ラジアルマウントされたブレンボキャリパーと150mmのストローク量を持つφ46mmの倒立フォークを装備
メーターデザインにはデジタルとアナログを組合わせたオーソドックスなスタイルを採用
メーターデザインにはデジタルとアナログを組合わせたオーソドックスなスタイルを採用
日本仕様のシート高は下げられたぶん薄さや内股に当たるエッジがやや気になる
日本仕様のシート高は下げられたぶん薄さや内股に当たるエッジがやや気になる
スイングアームはS1000R比で65 ㎜延長され、高速巡航やダートでの安定性に貢献。タイヤはピレリのディアブロ・ロッソⅡ
スイングアームはS1000R比で65 ㎜延長され、高速巡航やダートでの安定性に貢献。タイヤはピレリのディアブロ・ロッソⅡ
エンジン水冷4ストローク直列4気筒
バルブ形式DOHC4バルブ
総排気量999cc
ボア×ストローク80mm×49.7mm
最高出力118kW(160㎰)/11000rpm
最大トルク112Nm/9250rpm
圧縮比12.0:1
変速機6速
クラッチ湿式多板(アンチホッピング機構付)
フレームアルミ製ペリメタータイプ
サスペンションFφ46㎜倒立式テレスコピック
Rスイングアーム+リンク式モノショック
ブレーキF320㎜ダブルディスク
Rφ265㎜シングルディスク
タイヤF120/70ZR17
R190/55ZR17
ホイールベース1550mm
全長×全幅×全高2183×890×1408(〜1480)mm
シート高820mm
車両重量228kg
燃料タンク容量20L
価格209万5000円

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