【Historic Bikes/KAWASAKI ” W ” series】受け継がれてきた伝統の空冷2気筒エンジンを積む、カワサキ W 50年の歴史

日本の大排気量スポーツバイクの草分けともいえる稀代の名車初代W1の登場から、終焉を迎えるW800まで半世紀いかにしてWは生まれ、どんな歴史を歩んできたのか?
Wが築いた「大排気量のカワサキ」のイメージ
1964年、名神高速道路が開通し、日本にも本格的な高速時代が到来した。そして翌65年の第12回モーターショーで、ひときわ注目を浴びたバイクがあった。「カワサキX650」。小中排気量しか存在しなかった国産バイクの中で、650ccは破格の大排気量。注目を集めたのも当然だ。
当時カワサキは、最大マーケットであるアメリカ進出を目指していた。アメリカで勝負するには大排気量しかない。4ストローク624ccのバーチカルツインを抱くW1は、最高速度180km/hに達する悠然とした乗り心地によって彼の地アメリカはもちろん、日本でも人気を博し、カワサキの名を知らしめた。
その後、69年のホンダCB750 Fourの登場で4気筒化の波が訪れるが、カワサキは72年に900Super 4、いわゆるZ1を投入することでビッグバイク界を席巻。そんな「大排気量のカワサキ」を世界にイメージづけたのも、W1が先鞭を切っていたからに他ならない。
そんな初代Wシリーズも急激なバイクの進化には抗えず、75年に生産を終了。しかし、かつての「バイクらしいバイク」に憧れるユーザーは多く、長い眠りから覚めるように98年にW650が登場。

プラスチック成型全盛のこの時代に、あえて“鉄”を多用し、塗装やメッキにこだわった。伝統の空冷バーチカルツインは、デザインと性能を両立させるため、べベルギヤによるカム駆動方式を採用。この“バイク好き”を納得させる作りは、カワサキのWへの思い入れの強さをヒシヒシと感じさせる。
ところが08年、環境性能に抗えず、W650/400ともに生産終了。しかし11年、フューエルインジェクションを採用し、W800として再び復活。今度の眠りは短かったが……時代は変わっても、Wの輝きは不変だ。
1966年:650 W1
カワサキが4ストロークのエンジン、そして大型車メーカーに踏みだした初のバイク。当初は対米輸出がメインで、国内では注文生産だった。エンジン別体式ミッションは右足がシフト、左足がリヤブレーキの英国式を採用していた。

1967年:650 W1SS Commander
アメリカで人気を獲得するための輸出専用車。ショートフロントフェンダーを装備し、キャブトンタイプのマフラーもかなり短め。シート後端も跳ね上げたスポーティーなスタイル。

1968年:650 W1 Special
W2SS(後期モデル)を国内向けにリファインし、“スペシャル”の名が与えられた。53馬力は当時国内最大で最高速は185km/h、ゼロヨン加速は13.7秒と俊足ぶりを発揮。

1968年:650 W2SS Commander
シングルキャブレターからツインキャブに変更、圧縮比を高めて53 馬力にアップ。前輪を18→19インチに大径化。アップマフラーのスクランブラー“W2TT”も販売された輸出モデル。

1971年:650 W1SA
ペダル操作を左シフト、右ブレーキの国産車タイプに変更。“ナナハン時代”を迎え、W1の人気にも陰りが見え始めたが、操作性の良さで若年層にも受け入れられた。

1973年:650RS(W3)
Z2 系のフロントフォークに変更し、カワサキ初のダブルディスクブレーキを装備。この後はカラーを追加して’75 年まで販売され、W シリーズは20年余り休眠する。

1998年:W650
新開発の空冷並列2 気筒エンジンに、鉄製のフェンダーやサイドカバー、塗装やメッキなど質感にこだわった端正なスタイルをまとい、“W”の名が復活。

2006年:W400
停滞気味だった中型クラスに、弟分のW400が登場。低いシートなど扱いやすさも追求し、女性ライダーにも人気。

2011年:W800 Special Edition
Wシリーズの復活に合わせ、エンジンやマフラー、フェンダーなどをブラックアウトし、ゴールドリムを奢られたスペシャルエディションも登場した。

2011年:W800
厳しさを増した排出ガス規制によりW650/400は’08年に生産終了。しかしキャブレターからインジェクションに変更し、ボアを2mm拡大して排気量を773㏄にアップして再び復活!
