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「KAWASAKI Ninja400/250(カワサキ・ニンジャ400/250)」~クラス最速を狙う潔さ~【R/C インプレッション】

トルク型のNinja400、高回転型のNinja250

思い返せばもう10年も前のことになるが、カワサキは突如250ccクラスにセパレートハンドル&フルカウルの本気モデルを送り込み、「いや、そういう時代じゃないでしょ」という周囲の懐疑的な声を横目にビッグヒットを飛ばした。結果的にその成功は多くのフォロワーを生み出し、国産メーカーのみならずいくつかの海外メーカーまでもがこのクラスに参入。その盛り上がりは今も継続中である。

イチかバチかとは言わないが、時々カワサキはあえて主流から外れることによって新たなトレンドを作ってきた。89年のゼファー400や記憶に新しいところでは2017年末にリリースされた途端、受注が殺到したZ900RSもそうだ。そういう意味で、特に今回の新生ニンジャ400はその可能性を秘めている。取り立てて大きな変化もなく、ともすれば存在感が希薄になっていたこのクラスに完全新設計のモデルを復活させたことに加え、オールラウンダーの高い資質を持っているとなれば俄然期待値は上がる。

一方で、ニンジャ250の方はこれまでのモデルに正常進化を施し、真っ向勝負を挑んできた。なにと勝負するかは明白だ。ヤマハ・YZF-R25を確実に引き離し、ホンダ・CBR250RRを上回ること。ベンチマークはこの2台に絞り込んでいると言ってもいいはずだ。そのあたりを踏まえてインプレッションしていこう。

まずこの両モデルの成り立ちだが、エンジンのボア×ストロークとリヤタイヤのサイズ、マフラー容量以外は基本的にまったく同じである。グラフィックによっては車体に排気量が大きく表記されていないためパッと見では見分けがつかないほどだ。劇的に進化したポイントはそれぞれ異なり、250は17年型比で最高出力が20%向上(31ps→ 37ps)、逆に400は車重が20%減少(211㎏→167㎏)するなど、この数値だけでもまったく別モノになっていることが想像に難くない。

250で印象的なのは、そのパワーを高回転化によって絞り出しているところだ。ボア×ストローク自体は17年型のエンジンと同じにもかかわらず、最高出力の発生回転数は1500rpmも上昇。エンジンの設計変更もさることながら、エアボックスの大容量化やエアインテークのストレート化など、吸気効率が大幅に見直されたことが大きい。

じゃじゃ馬かと思いきや力強いトルク感はむしろ上質

その点、400の軽量化はもっと発想が大胆だ。17年型以前のモデルはひと回り大きな650ccがベースになっていたが、今作は250とベースを共有化。これまでよりふた回り小さな車体にそのエンジンを押し込めることに成功したのである。

KAWASAKI Ninja 400

とはいえ、当たり前だがじゃじゃ馬には仕立てられていない。スロットル微開の領域から車体をググッと押し出してくれる力強いトルク感はむしろ上質。250よりもワンサイズ太いラジアルタイヤの恩恵もあって、乗り心地とハンドリングには落ち着きがあり、ゆっくり流してもよし、高いアベレージスピードで巡航してもよしと自由度が高い。

高度にチューンされた空冷エンジンのような爽快感

対称的なのが250だ。400と直接比較しなければ、こちらもごく普通にストリートをこなす。トルクが希薄で発進に気を使うということはなく、車重は400より1kg軽いだけにもかかわらず、その数値よりも身のこなしは軽い。ただし、真骨頂はやはり高回転域にあり、その領域で見せるソリッドなフィーリングはおそらく多くの人の想像を遥かに超える。

KAWASAKI Ninja 250

メーターのレッドゾーンは13000rpmをひと目盛過ぎたところから始まっているにもかかわらず、むしろそこからの吹け上がりが鮮烈だ。高度にチューンされた空冷エンジンのように14000rpm超まで「シャーン」と回り切り、その爽快感はクラスナンバーワンだ。同じ車体に搭載されているからこそ、250と400の違いがより明確になったわけだが、それにしてもこのキャラ分けは見事である。

400ccクラスは長い間ホンダ・CB400SF/SBの独壇場だが、ニンジャ400の全方位的なスペックとなにより新鮮な存在感がそれに取って代わる可能性は大いにあり、250ccクラスにおけるニンジャ250の突出したスポーツ性とそれに対する価格の高バランスはライバルにとってやはり脅威だ。その完成度がそれぞれのクラスをどれほどかき回し、ユーザーに受け入れられるのか。その結果はマーケットの数字が教えてくれるはずだ。

KAWASAKI Ninja400/250(カワサキ・ニンジャ400/250) ディテール

Ninja400(ニンジャ400)

ニンジャ400Rという名が与えられた初代400が登場したのが’11年のことだ。その時のベース車両になったのは欧州をメインターゲットにしていたニンジャ650であり、そのままスケールダウンしたためパワー不足を指摘する声が少なからずあった。それを払拭すべく、今回はニンジャ250のスケールアップ版として登場。このクラスに新風を巻き起こすのは間違いない。

価格
71万640円(ライムグリーン×エボニー)
69万9840円(メタリックスパークブラック)
71万6040円(キャンディバーントオレンジ×メタリックマグネティックグレー)

    ※『ライダースクラブ 2018年5月号』掲載時

    Ninja250(ニンジャ250)

    このクラスにセパレートハンドル&フルカウルのスポーツバイクを復活させ、大きなヒット作になった初代モデルから10年が経過。数多くのフォロワーを生み出したが、それを再度引き離すべくフルモデルチェンジが敢行された。実際、最高出力は従来モデルを6ps上回る37psに到達した他、8kgの軽量化にも成功。このクラスに懸けるカワサキの意地が垣間見られる意欲作だ。

    価格
    64万440円(KRT Edition:ライムグリーン×エボニー)
    62万9640円(キャンディプラズマブルー)
    64万440円(パッションレッド×メタリックフラットスパークブラック)

    ※『ライダースクラブ 2018年5月号』掲載時

    Ninja400(ニンジャ400)とNinja250(ニンジャ250)の違い

    400と250の差は車体色を除けばタイヤとマフラーのみ。400のリヤタイヤが150サイズのラジアル(ダンロップGPR-300)なのに対し、250は140サイズのバイアス(同GT601)を装着。マフラーは400の方がやや容量が大きい。

    Ninja400(ニンジャ400)

    Ninja250(ニンジャ250)

    共通項目

    400と250の違いは上記のタイヤとマフラーのみのため、細部カットは基本的に共通項目として紹介していく。

    燃料タンクはスリムな形状ながら14Lの容量を確保
    シート高は785mm(400)と795mm(250)。内部のウレタン材は従来の250に対し、40mm肉厚になっている
    H2やZX-10Rをモチーフにしたチンスポイラーを装備。ヘッドライトにはLEDを採用する
    フロントブレーキはφ310mmのペタルディスクとデュアルピストンキャリパーを組み合わせる。ABSは全グレード標準装備
    リヤブレーキディスク径はφ220mmでこちらもペタルタイプのディスクを採用。ホイールは軽量な星型5本スポークで横方向の剛性が高められている
    エンジンの排気量は398cc(400)と248cc(250)。完全に新設計された水冷並列2気筒で両モデルの差はボア×ストロークのみ。吸気経路がストレートになり、そのマニホールドが短縮化できるダウンドラフト構造を採用。エンジンの高回転化を可能に

    Specifications:KAWASAKI Ninja400/250(カワサキ・ニンジャ400/250)

    エンジン水冷4ストローク並列2気筒
    バルブ形式DOHC4バルブ
    総排気量248cc(398cc)
    ボア×ストローク62×41.2mm(70mm×51.8mm)
    圧縮比11.6対1(11.5対1)
    最高出力37ps/12500rpm(48ps/10000rpm)
    最大トルク2.3kgf・m/10000rpm(3.9kgf・m/8000rpm)
    フレームトレリス
    サスペンションF=φ41mm正立
    R=モノショック
    ブレーキF=φ310mmシングルディスク
    R=φ220mmシングルディスク
    タイヤサイズF=110/70-17
    R=140/70-17(150/60-17)
    全長/全幅/全高1990mm/710mm/1125mm(1120mm)
    軸間距離1370mm
    キャスター/トレール24.3°/90mm(24.7°/92mm)
    シート高795mm(785mm)
    装備重量166kg(167kg)
    燃料タンク容量14L
    ※( )内はNinja400

    ※本スペックは『ライダースクラブ 2018年5月号』掲載時のものです。

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