【KAWASAKI VERSYS 1000 SE】ジャンルを超えた楽しさ、ヒザも擦れるアドベンチャーモデル
固定概念に囚われない、従うのは己の信念のみ。それがカワサキの流儀。ツーリング性能重視のマシンであっても、走りの爽快感をスポイルすることは許されない。それがカワサキ。お家芸の直4エンジンを搭載した、異色のアドベンチャーツアラーVERSYS 1000 SEを、中野真矢さんと平嶋夏海さんが思いっきり楽しんだインプレッションをお届け。
枠を超える速さと運動性攻めて楽しいツアラー
中野:今回はVERSYS 1000 SEに乗ってみたんだけど……。実は、僕も初めてのバイクなんだよね。
平嶋:そうなんですか? 意外です。
中野:うん。正直に言ってしまうと、自分にとってアドベンチャーツアラーというジャンル自体が遠いものに感じていたんだよね。元々、レースで育った人間だし、スーパースポーツやネオクラシックのカフェ系とかが好みだし。
平嶋:ツーリングに出かけることは少ないって言ってましたもんね。
中野:そう。サーキットを走ることが多いし、プライベートで街乗りする時もカフェに行くとか……。
平嶋:コーヒーを飲みながら、愛車を眺めて浸る。と。(笑)
中野:そうそう! 〝オレのバイク、カッコいいな〜〝って。(笑)
平嶋:〝ライダーあるある〞ですね。
中野:まあ、だからというわけでもないけど、アドベンチャーツアラーの試乗経験も少ないんだよね。
平嶋:全くの未経験ということではないんですよね?
中野:そうだね。
平嶋:じゃあ、それを踏まえてVERSYS 1000 SEを走らせてみて、どう感じたんですか?
中野:いや、食わず嫌いだったなあ。今はツーリングにあまり行っていないけど、憧れはあるんだ。いつかはソロでロングツーリングとかしてみたいとは考えてる。その時の相棒にはイイよねえ……。
平嶋:手のひらを返しちゃってるじゃないですか。(笑)
中野:まだ自分には早いジャンルだな、もっと乗り手として円熟してから乗るべきだなって考えていたんだけど、VERSYS 1000 SEは、チョット違うね。
平嶋:どの辺が違います?
中野:やっぱり4気筒エンジンであるところかな。他は2気筒が多いでしょ? やっぱり、エンジンの吹け上がりの気持ち良さが好き!
平嶋:エンジン、イイですよね。
中野:カワサキの4発だなあって感じたよ。パワーが立ち上がるフィーリングがスーパースポーツっぽいというか……。〝ツーリングでしょ?〞と、意識的に大人しくしている感じがない。ちゃんと4発。
平嶋:でも、乱暴な感じはないですよね。すごく乗りやすかった。
中野:スムーズだよね。低回転からトップエンドまで、気持ち良くノビてくれる。それでいて低速トルクもしっかりある。発進の時、こんなに気を遣わない4気筒マシンも珍しいんじゃないかな?
平嶋:基本はマイルドなパワーフィーリングのバイクだと思うんですよ。リッターバイクで、低いギアでスロットルを開けると、ドンッと加速して怖く感じることがあるんですが、このバイクにはそれがない。私でも、1000ccのパワーを楽しめるというか……。コントロールの範囲内にあるって感じました。
中野:扱いやすよね。でも、パワーの頭打ちは、純粋なスポーツバイクと比べると早いかな? その辺は、やっぱりツアラーだと感じたな。
平嶋:そうですか? 十分以上に速いと思いましたけど……。今日はいつものサーキットでの試乗でしたけど、一般道で初めて走る道だと先のコーナーがどうなっているか分からないじゃないですか? それを考えるとVERSYS 1000 SEのパワーって、ちょうどイイ感じです。ちゃんと速くて、マージンもとれる。
中野:確かに。一般道を前提に考えるなら、かなりハイレベルにまとめられているね。ツーリングライダー目線だと、そうした見方があるんだなあ。勉強になります!
平嶋:私が、中野さんに教えることがあるなんて。(笑)
中野:いやね。走る前には、このバイクの試乗はツーリングでするべきじゃないの? とか考えていたの。でも、走り出したら1周目からヒザが擦れちゃうものだから、これはスポーツバイクだ!って、アタマがソッチの方向に向いちゃったんだよね。
平嶋:ガリガリいわせてましたね。
中野:だって、メチャクチャ攻められるんだもん。見た目から受けるイメージより、サスペンションの設定はオンロード向きだしね。
平嶋:私は、視点が高いせいか、走り始めた時はバイクをバンクさせる時に恐怖感があったんですよ。
中野:フロント側の高い位置にボリューム感があるから、いつもより余計に寝ているように感じてしまったんだと思うよ。スーパースポーツやネイキッドに乗っている人だと、慣れが必要な部分かもね。
平嶋:そうなんですよ、慣れちゃうと気になりませんでした。むしろ走り込んでいくと、どんどん楽しくなってきて……。バンクセンサーを擦るまで寝かせちゃったので、これ以上は危ないって自制しました。
中野:攻めまくってるじゃん!(笑)
平嶋:だって、楽しかったんですもん。クイクイ小回りが利くというハンドリングではないですけど、大きなラインでのコーナリングが、すごく気持ち良く走れました。そうそう、電子制御サスペンションは、どう感じましたか?
中野:面白いね。このバイクはダンパーの減衰力だけでなく、スプリングのプリロードもスイッチ操作で変えられるから、いろいろ操作して、走りの違いを楽しめた。
平嶋:一人乗り、一人乗り+荷物、二人乗り+荷物が選択できましたね。
中野:サーキットをガンガン攻めるなら、二人乗り+荷物の設定がオススメかな。かなりカッチリ感が出て、イイ感じで攻められる。
平嶋:カワサキの技術者さんは、そういう使い方は想定していなかったと思いますけどね。(笑)
中野:ちゃんと、スカイフックテクノロジーの良さもチェックしたよ。
平嶋:そこをお聞きしたかったんですよ。正直にいうと、私は違いがよく分からなかったんです。乗りやすいことは確かなんですけど。
中野:それは、走った場所に理由があるね。このコースはフラットでしょ? 上りや下りのあるコースで、荷重が偏る場面では、如実に安定感に差が出るからね。スタビリティ向上に貢献しているのは確か。安定感が高いと、乗り手には余裕が出るでしょ?その分、危険度が下げられる。電子制御サスペンションは、アクティブセーフティーのひとつだと思うよ。
平嶋:なるほど。
中野:車格が大きいけど、取り回しは気にならなかった?
平嶋:ハンドルは遠めですけど、許容範囲のポジションでした。足着きと乗り降りは、レーシングスーツだと厳しいですね。ツーリングウエアならなんとかってレベルです。引き起こしは意外なほど軽く感じました。
中野:僕は、とりあえず両足は着くし、重量感はあるけどリッターバイクとしては普通と感じた。言われてみればハンドルは遠めなんだけど、二人とも大柄ではないからなあ。
平嶋:ツーリングライダーとしてはとても気になるバイクですけど、私には少し大きいかな? 防風性とか素晴らしいですもん。可動スクリーンを一番上にすると、法定速度内なら無風ですよ。スクリーン越しでも、視界が歪みませんし。
中野:クルーズコントロールとか、クイックシフターとか、疲労軽減に役立つ電子制御も〝全部のせ〞だもんね。ツーリングが楽しそう。
平嶋:中野さんも、VERSYS 1000 SEでツーリングライダーデビューしちゃいましょう!
KAWASAKI VERSYS 1000 SE
- エンジン:水冷4ストローク直列4気筒DOHC4 バルブ
- 排気量:1043cc
- ボア×ストローク:77.0mm×56.0mm
- 圧縮比:10.3:1
- 最高出力:120PS/9000rpm
- 最大トルク:10.4kgf・m/7500rpm
- 全長×全幅×全高:2270mm×950mm×1490mm
- ホイールベース:1520mm
- シート高:820mm
- 車両重量:257kg
- 燃料タンク容量:21L
- 価格:199万1000円