コーナリングは”V字ライン”が最新トレンド【中野真矢に学ぶトラクション03】
今回のライテクは、意外と知らない“トラクション”がテーマ。元MotoGPライダーの中野真矢さんに、トラクションの上手な引き出し方や、トラクションを活かした安全に楽しめるライディングを教わる。
V字で鋭く曲がって立ち上がりを重視しよう
コースレイアウトやマシン排気量などで最適なラインは変わるのですが、下の図のような前後が直線区間のヘアピンカーブを大排気量車で走るなら、いわゆるV字コーナリングにより、しっかり減速してフルバンクの時間を短くし、車体を起こしてフル加速するのが理想。他のレイアウトのコーナーでもこれが基本です。
車体が軽い小排気量モデルなら、高い車速を保ってタイヤのエッジグリップに頼りながら旋回するのが主流ですが、車重とパワーがある大排気量車ではリスキー。タイヤのエッジ付近はエンジンパワーに負けるので、いつまでも深く寝かせていたら立ち上がりでスロットルを大きく開けられず、大排気量車ならではのパワー&トルクを活かしてトラクションを生むこともできません。
レースで大排気量車を速く走らせるためには、コーナーではなくストレート区間でいかに車速をのせるかがかなり重要なのですが、これは本誌が主催するライディングパーティのようなサーキット走行会で、一般ライダーが安全かつスムーズにスポーツ走行を楽しむ秘訣にもつながります。深くバンクしている時間を減らせるだけでなく、立ち上がりでしっかりトラクションを稼げるので、車体の挙動が安定しやすいという利点があるからです。
フロントブレーキのリリース直後に鋭く向きを変えることが大切
(中野真矢)
タイトに車体の向きを変えれば起こしながら加速できる
もっとも鋭く曲げる地点にしっかり減速しながら寄せる
トラクションがかかっていれば多少滑っても怖くない!
速度が速くてアウトに膨らみスロットルを空けられない
インに付くのが早すぎるとダラダラ曲がることになる
中野真矢が実験! トラクションを感じやすい回転数はどのあたり?
- 最高出力:188ps/9700rpm
- 最大トルク:15.2kgf・m/7000rpm
楽しく走りたい時はこれくらいがちょうど良い
アウト側にはらみがちでトラクションも希薄……
タイムを狙うならコレ!
物足りなさを感じる
楽しさを感じられる適度な回転域を探ろう
スポーツライディングでは、最適なギアを選択することで理想的なトラクションが得られます。でもこれは、必ずしも「高回転を使おう」ということではありません。スロットル操作に対して過敏に反応し過ぎると、操縦が難しくなるからです。
例えば、上で紹介しているハヤブサのテストでは、1速で走行したときに4500rpm付近からスロットルを大きく開けていました。これは7000rpmの最大トルク発生回転数から比べると低いですが、1339㏄のハヤブサは低中回転域トルクが厚く、ギア比がショートなので反応が過敏すぎる印象でした。レースなら何よりも速さ重視なので1速でいいですが、スポーツライディングでは楽しさも大切。だから僕も、普通に走るときはある程度のトラクションが得られて気持ちよさもある2速を選ぶかもしれません。
スポーツライディングにおけるトラクションは、ただ得られればいいわけではなく、適正に引き出すことで車体の挙動を安定させ、その結果としてライダーの安心や自信につなげるためのもの。無理のない範囲でいろいろトライして、トラクションのある走りを追求してみてください。