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スズキ初の電子制御サスペンションを搭載|スズキ GSX-S1000GX

GSX-S1000GXの世界プレス試乗会がポルトガルのカスカイスで開催された。スズキ初の電子制御サスペンションを搭載した、新しい“GSX-S”はどんな景色を僕らに見せてくれるのか?

PHOTO/SUZUKI TEXT/H.YATAGAI
取材協力/スズキ 0120-402-253
https://www1.suzuki.co.jp/motor/

コンパクトな車体がスポーツ性を高めている

スズキは、この新型GSX-S1000GX(以下:GX)で、同社初となる電子制御サスペンションを採用し、ワインディングでのスポーツ走行からツーリングまでを広くカバーする〝至高のクロスオーバーモデル〞を目指した。そのプロダクトコンセプトを知った時、ふとドゥカティのムルティストラーダシリーズを思い出した。

4㏌1バイクをコンセプトに掲げるムルティストラーダは、’13年モデルから〝スカイフックサスペンション〞なる電子制御サスペンションを搭載。このセミアクティブタイプの電サスと、パワーモードとトラクションコントロールのセットを組み合わせ、「スポーツ」「ツーリング」「アーバン」「エンデューロ」という4つの異なるジャンルのバイクを、この1台で成立させる、というものだった。

現在、ムルティストラーダシリーズは軒並みフロントホイール径が19インチ化しており、前後17インチキャラクターではなくなっているものの、4㏌1バイクというコンセプトは変わっていない。

一方このGXは、スーパースポーツ由来のハイパフォーマンスな直列4気筒エンジン&前後17インチという、GSX-Sシリーズの特徴はそのままに、前後150mmという長めのホイールトラベルを持つ電子制御サスペンションをセット。

SUZUKI GSX-S100GX
SUZUKI GSX-S100GX

ライディングモードは、「A(アクティブ)」「B(ベーシック)」「C(コンフォート)」の3つのパワーモードを主軸に、変更可能な7段階+オフのトラクションコントロール、同じく変更可能な3段階の減衰力モードが組み合わせられた。 

減衰力モードに関しては、「H(ハード)」は硬めのロードスポーツ性能、「M(ミディアム)」は万能なツーリング設定、「S(ソフト)」は柔らかめのセッティングでコンフォートさを追求した。「U(ユーザー)」ライディングモードでは、パワー、減衰力、トラコンの自由な組み合わせが可能で、さらに減衰力に関しては、前後個別に±3の幅(伸/圧同調)で調整できるようになっている。 

それぞれの減衰力モードで走ってみてびっくりしたのは、車体キャラクターの変貌ぶりだ。誰にでもその違いがわかる……なんてレベルではなく、まるでバイクを乗り換えたかのよう。この変化具合は、引き合いに出したムルティストラーダ以上だと感じた。減衰力設定を「H」にすれば本当にスポーツバイクのような走りが可能な硬めの足まわりとなり、「S」にすれば途端にアドベンチャーツアラーのような懐の深い快適な乗り味になる。 

ただ際立つのは走りの〝スポーティさ〞加減だ。どのライディングモードで走るにせよ、その根底にはパワフルな直4エンジンの存在がある。そのエンジンの良さを際立たせるようなセッティングが各モードに施されている印象なのだ。 

SUZUKI GSX-S100GX
SUZUKI GSX-S100GX

直4エンジンのパワーフィールを存分に味わいたければ、パワーモードを「A」にして減衰力設定を「H」にすれば、GSX-Sシリーズらしい官能的なパワーフィールに応えるスポーティな車体へと変化する。しかもそれはオプションのパニアケースを装着したままでも、そんな走りができてしまうのだからたまらない。 

このGXのリアショックには、自動でプリロード調整を行うオートレベリング機能「AUTO」も搭載されている。とは言え、さすがにスポーツ走行の領域では、おまかせの「AUTO」ではなく、「ライダー+荷物」といった固定タイプのモードの方がよりダイレクト感が強く走りやすく感じた。リアショックのプリロードに関しては、設定画面でさらに細かく仕様変更できるようになっているのも好印象だった。 

GXにおける最大のトピックが電子制御サスペンションにあることは間違いない。変更操作が簡単でわかりやすく、使いやすいだけでなく、用途やライディングスタイルでサスペンションの好みを確立しているハイレベルなライダーには、さらに細かいセッティング変更ができるようになっているのも素晴らしい。 

他の電子制御サスペンション搭載モデルにも、色々調整できるモデルはあるが、どのモデルと比較しても抜群の簡便さ&調整しやすさであり、設定による違いがしっかり感じ取れるところがいい。 

そんなスポーツライディングへの適性を見せる一方で、減衰力設定を「S」にすると、一気に足まわりが柔らかくなり、乗り心地が良くなる。しかもショーワ製EERAのスカイフック制御は、完全に接地感を消すような、乗り心地重視の減衰力制御を行わないのもいい。「H」での走行時はもちろんなのだが、「S」でもそれは同じで、フロントタイヤが路面を捉えている感覚が実に掴みやすく、安心してコーナリングしていけるのだ。 

SUZUKI GSX-S100GX
SUZUKI GSX-S100GX

ちなみにGXには、SRASと名付けられたスズキオリジナルのスカイフック制御も搭載されている。このSRASは、車体が跳ね上げられるような凹凸の激しい路面では、自動で伸び側の減衰特性を瞬間的に高めてオツリをもらいにくくしてくれる。同時に、振動からくるスロットル操作のギクシャク感を抑制するためレスポンスも若干ダルになる。 

ヨーロッパの荒れた石畳に向けた機能だが、日本では水溜り跡が連続するようなフラットダートを走るような状況がそれに近い。実際、今回のテストライドでは隙を見つけてダートも走ってみたが、このSRASが働くと、荒れ気味な路面もかなりスムーズに走れることが確認できた。ただタイヤに関しては、ロードバイクの領域を出ないので制動面に不安が残るが、ピレリのスコーピオントレールⅡあたりを履かせれば、少々荒れたダートも結構なペースで走れてしまいそうな雰囲気がある。 

というのもこのGX、ものすごく車体がコンパクトなのだ。直4エンジンに前後17インチホイールと長めの足を組み合わせたモデルには、BMW S1000XRやカワサキ ヴェルシス1000などがあるが、それらに比べると明らかに車体がコンパクトに感じる。 

SUZUKI GSX-S100GX
SUZUKI GSX-S100GX

調べてみればGXの1470mmのホイールベースに対して、ライバルたちは軒並み1500mmを超えている。GXはあくまでGSX-Sシリーズがベースのコンパクトなフレーム&スイングアームをそのままに、足まわりをロングストローク&電子制御サスペンション化しているのだ。 

おかげで峠道では、軽くてコンパクトな車体と、1000ccの直4ならではのスポーツ性能がしっかり味わえる。そして遠出する際にはアドベンチャーバイクのような快適さがあり、どこまでも走っていけるというわけだ。 

GXについて、国内モデルに関する正式なリリースは今のところないようだが、僕がはるばるポルトガルの世界プレス試乗会に呼ばれている以上、日本国内での販売は確実と考えていいだろう。GSX-Sシリーズならではのコンパクトさを活かしたキャラクターが、日本の道路環境に合わないわけがない。このGSX-S100GXで日本の道を走る日が、今から楽しみで仕方ない。

SUZUKI GSX-S100GX

SUZUKI GSX-S100GX
SUZUKI GSX-S100GX
6軸IMU搭載でトラコン&ABSがコーナリング対応になったり、クルーズコントロールがクイックシフター対応になったりと電子制御が劇的に進化した
6軸IMU搭載でトラコン&ABSがコーナリング対応になったり、クルーズコントロールがクイックシフター対応になったりと電子制御が劇的に進化した
GSX-Sシリーズらしいエッジを効かせたデザインのフロントマスクには、複数のエアスクープが設けられ、エアロダイナミクス性能を高めている
GSX-Sシリーズらしいエッジを効かせたデザインのフロントマスクには、複数のエアスクープが設けられ、エアロダイナミクス性能を高めている
GSX-R1000(K5-7)ベースのエンジンはシリーズ共通だが、“GX ”はベースの“GT”よりも吸気効率に優れエンジンのレスポンスがいい
GSX-R1000(K5-7)ベースのエンジンはシリーズ共通だが、“GX ”はベースの“GT”よりも吸気効率に優れエンジンのレスポンスがいい
GSX-Sシリーズらしいエッジを効かせたデザインのフロントマスクには、複数のエアスクープが設けられ、エアロダイナミクス性能を高めている
GSX-Sシリーズらしいエッジを効かせたデザインのフロントマスクには、複数のエアスクープが設けられ、エアロダイナミクス性能を高めている
リアショックの油圧アクチュエーター。電動プリロード調整3モードのほか、走行中に自動でサグ出しを行うオートレベリング機能も搭載している
リアショックの油圧アクチュエーター。電動プリロード調整3モードのほか、走行中に自動でサグ出しを行うオートレベリング機能も搭載している
3つのパワーモードを軸に3段階の減衰力モード、7段階+オフのトラコンを組み合わせる。ユーザーモードではさらに細かい減衰力特性の調整も可能
3つのパワーモードを軸に3段階の減衰力モード、7段階+オフのトラコンを組み合わせる。ユーザーモードではさらに細かい減衰力特性の調整も可能
日立アステモのSHOWA EERAをベースとし、スズキオリジナルの制御プログラムを開発して搭載。路面の荒れ具合でスカイフックエフェクトを自動で切り替えてくれる
日立アステモのSHOWA EERAをベースとし、スズキオリジナルの制御プログラムを開発して搭載。路面の荒れ具合でスカイフックエフェクトを自動で切り替えてくれる
日立アステモのSHOWA EERAをベースとし、スズキオリジナルの制御プログラムを開発して搭載。路面の荒れ具合でスカイフックエフェクトを自動で切り替えてくれる
シート高は845mm。上半身のアップライトなツアラー的ポジションに対し、下半身はヒザの曲がりが大きめなロードスポーツ的ポジションとなる。クッションが薄いオプションのローシート(-15mm)では、踵が着きそうなくらい足着きが良くなり、ライディング時の違和感もほとんどなかった
シート高は845mm。上半身のアップライトなツアラー的ポジションに対し、下半身はヒザの曲がりが大きめなロードスポーツ的ポジションとなる。クッションが薄いオプションのローシート(-15mm)では、踵が着きそうなくらい足着きが良くなり、ライディング時の違和感もほとんどなかった
エンジン水冷4ストローク直列4気筒DOHC4 バルブ
総排気量999cc
ボア×ストローク73.4×59.0mm
圧縮比12.2:1
最高出力152ps/11000rpm
最大トルク109N・m/9250rpm
変速機6速
クラッチ湿式多板
フレームダイヤモンド
キャスター/トレール25.5°/97mm
サスペンションF=電子制御式フルアジャスタブル倒立フォーク
R=電子制御式フルアジャスタブルモノショック
ブレーキF=ブレンボ製4ポットラジアルキャリパー+ダブルディスク
R=ニッシン製1ポットキャリパー+シングルディスク
タイヤサイズF=120/70ZR17
R=190/55ZR17
全長×全幅×全高2150×925×1350mm
ホイールベース1470mm
シート高845mm
車両重量232kg
燃料タンク容量19L
※欧州仕様

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