【Historic Bikes/TRIUMPH Bonneville T120】包み込まれるような鼓動感
※この記事はRIDERS CLUB 2016年 5月号に掲載された内容を再編集した内容です。
トライアンフの代名詞にもなっている空冷バーチカルツインエンジンが全面的な刷新を受け、ついに水冷化された。その新世代ユニットを搭載するモデルがストリートツインに続いてこのほどデビュー。それが古き良き伝統の名を今に引き継ぐボンネビルT120である
新世代への切り替わりを前に世界中のファンが期待し、あるいは不安に思っていたのは、バーチカルツインエンジンの水冷化が成功するのかどうか、という一点に尽きた。
しかし、シリーズ初のリリースモデルとなったストリートツインは、その期待に応え、不安を払拭する出来栄えを見せた。実際、パワーよりトルクを重視した設計は高い評価を受け、本誌でも以前に取り上げた通りだ。
次に気になるのは、このT120の仕上がりだ。ストリートツインは900ccのエンジンを搭載していたが、T120はボアとストロークが拡大され1200ccに。これにより大幅に異なるキャラクターになることが予想された。
結論として、T120の変化は極めてポジティブだった。ストリートツインでの成功をさらに上回る仕上がりを見せたといえる。特に印象的なのは、非常にワイドなトルクバンドだ。低回転域でも十分なトルクを発揮し、3000rpm以下でストレスなく巡航できる。
それだけでも十分満足できるが、高回転域に踏み込むとさらに驚かされる。振動もなく、トルク感が頭打ちすることなく、7000rpmを超えてもリミッターに達するまで心地よいフィーリングが続く。
このエンジンの滑らかさと包み込まれるような安心感は、近年のエンジンでは稀な体験だ。「フェザーベッド・エンジン」とでも称したくなるその乗り味は、かつてのノートンの車体に例えられる「フェザーベッド・フレーム」を彷彿とさせる。
エンジン以外にも、ハンドリングの良さが際立つ。フロント18インチ、リヤ17インチのホイールサイズにもかかわらず、リーン初期の抵抗感や切れ込み感が少なく、コーナーリングではナチュラルに車体がバンクしていく。
タイヤからのフィードバックも明確で、スポーツライディングにもリラックスした流し方にも柔軟に対応する。
さらに、トラクションコントロールや2段階のライディングモード、ABSといった電子デバイスが充実。グリップヒーターなどの快適装備も標準で備わり、長距離ライディングでも快適性が際立つ。
ストリートツインとの差額は約45万円と小さくないが、T120はその価格差以上の価値を提供している。