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元MotoGPライダー中野真矢がインプレッション!|MV AGUSTA F3 RR

’21年型で刷新が施された、798cc直列3気筒エンジンのF3シリーズに、戦闘力と装備を高めたハイエンドなF3 RRが’22年型として追加された。標準仕様のF3ロッソを絶賛している元MotoGPライダーの中野真矢さんが、レーシングキットも装着されたこの新型F3 RRをサーキットで試乗。再び、その高い完成度に心を奪われることになった。

3気筒ミドルの最長不倒点

スチール製トレリスフレームに、逆回転クランクシャフトを採用した798㏄水冷直列3気筒エンジンを搭載する、イタリア MVアグスタのF3。’21年型ではエンジン内部と吸排気系の改良により最新の排出ガス規制への適合を実現。フレームプレート部の設計を見直して剛性バランスを向上させたほか、各種電子制御システムのグレードアップ、カラー液晶メーターの導入など、細部にわたって性能の向上が施された。

昨年夏には、スタンダード仕様となるF3ロッソが日本でも発売されていたが、今年からトップグレードとなるF3RRも並行してラインナップされる。 

MV AGUSTA F3 RR ●価格:324万5000円
MV AGUSTA F3 ROSSO ●価格:239万8000円

最高出力147hpを発生するなど、基本性能はロッソとRRで共通化されているが、RRがロッソと大きく異なるのは外装類だ。カーボンファイバー素材をふんだんに使ったサイドカウルとウイングレット。そしてその効果を補完することも視野に入れて設計された大きなフロントフェンダーが目を引く、レーシーかつ質感の高いフェアリングが専用設計されている。 

そしてもうひとつ、車両にレーシングキットが同梱される点も大きな特徴だ。これには、MVアグスタでは初となるアクラポヴィッチ製チタン製マフラーも含まれる。同じくレーシングキットの構成パーツとなる専用のECUに換装すれば、最高出力は155hpと、8hpのアップを実現する。それでいてこのマフラーは政府認証タイプなので、ノーマルECUとの組み合わせなら公道走行も可能となっている。 

RR専用のサイドカウルはカーボンファイバー製。3枚のフィンを備えたウイングレットは、240km/hで8kgのダウンフォースを発生させる。
ウイングレットの効果を高めつつ直進方向に対する空気抵抗を低減する、専用のカーボン製フェンダー。キャリパーの冷却も考慮されている。
レーシングキット最大の目玉は、アクラポヴィッチ製のチタンマフラーと専用のレーシングECU。8hpのアップとなる。
安定感のあるコーナリング特性などを追求し、逆回転クランクシャフトを採用した798㏄水冷直列3気筒エンジンは、ストック状態であればロッソ、RRともに最高出力147hp。

今回の試乗はサーキットが舞台ということで、ECUを含めレーシングキットの構成パーツをすべて装着した状態で走行。かつてMotoGPで活躍した中野真矢さんが、ロッソと乗り比べながらRRの魅力を探った。ちなみに中野さんは以前、新型ロッソに試乗して「とにかくバランスがよくて、不満が本当に少ないスポーツモデル」と絶賛している。 

真夏に実施した前回のロッソ試乗時と比べたら、今回は路面温度が非常に低く、さらに風が強めに吹く悪状況。それでも、ロッソに対する好印象には揺るぎがなかったようで、中野さんは「まとまりがよく、安心感がある乗り味」と太鼓判を押す。 

これに対してレーシングキットを装着したRRは、「ものスゴく攻めていけるバイク」というのが、試乗後の第一声となった。

「それなりにペースを上げて走りましたが、まだまだこんなもんじゃないという雰囲気。とくにエンジンブレーキの制御が素晴らしく、電子制御任せで安心して進入できます」 

ちなみにエンジンブレーキは、強弱の設定変更が可能となっている。「スローペースのときは弱すぎるかなぁ……という状態のまま走り続けたのですが、タイヤが温まってハイペースになってからはちょうどよくなり、筑波サーキット コース1000で、もっともスピード域が高い1コーナーの進入で、とくに制御の恩恵が感じられました」とのこと。

コースサイドで見ていると、減速時にエンジン回転数を上げてエンジンブレーキを低減していることが、排気音から伝わってきた。 

ハンドルなどの構成部品はロッソとRRで共通化されているが、スクリーン形状は大きく異なる。そのため、「サスペンションセッティングにも多少の違いがあるのかもしれませんが、RRのほうがフロントまわりの空間に余裕が感じられ、より上半身を動かしやすい印象」と言う。

「ロッソの方は、ライダーがマシンに合わせながらシンクロ度を高めていくイメージ。対してRRは、最初から合うという感覚です。スクリーンに包まれている感じも申し分ありません」

ロッソよりも中央部の高さがあり、高速走行時の空力特性を高めたスクリーンを採用。カーボンファイバー素材を奢られた外装類が、特別感を強調する。
5.5インチのフルカラーメーターは、MVRideアプリを介してスマホと連携が可能。左手側ジョイスティックを操作して直感的にトラコンなどの設定変更が可能で、右手側にはローンチコントロールボタンも配置。

「乗り比べれば、間違いなくレーシングキットを装着したRRのほうがパワフル。ただし、高回転域だけでドッカンと力を振り絞るような仕様ではなく、全体的に底上げされているような乗り味で、スタンダードエンジンから乗り替えてもまるで違和感はありません。そのルックスや、レーシングキットという響きから、いかにもチューニングマシンという尖ったエンジン性能を想像していましたが、いい方向で裏切られました。一般のライダーがサーキットをファンライドするときも、この仕様なら扱いづらさは感じないと思います。そして僕自身は、このバイクを操るのがどんどん楽しくなってきて、自分の気持ちを抑えるのがちょっと大変でした」 

【MV AGUSTA F3 RR】レーシングキットの装着により、エンジンは最高出力が8hpアップ。その違いは、乗ればすぐに体感できるレベルだそうだ。
MV AGUSTA F3 ROSSO】「スタンダードに相当するF3ロッソでも走りの完成度は非常に高く、ライパなどのサーキット走行会を満喫するのに最適」と中野さん。F3 RRは装備がさらに充実している。

ちなみに、今回走行した筑波サーキット コース1000は、200km/h以上を維持するシーンがないため、ウイングレットやフロントフェンダーの変更による、空力特性に大きな違いは出なかったとのことだ。

「ロッソでもかなりコーナリングマシンという感触があり、どんなコースでも楽しめます。これもF3の長所。RRは高速域でさらにそこを磨いているはず」と中野さんは推測する。

「F3シリーズは、もはや完成の域に達している成熟度。この排気量とパワーなので、例えばリッタークラスと比べたときに、より高い次元の走りを追求しようという気持ちになれるのが楽しいです。そしてそれはロッソでも、レーシングキットを装着したRRでも同じ。レーシーなRRだからといって乗りづらいとか、スタンダードのロッソでは物足りないなんていうことは皆無です。ただしRRのほうが、スクリーンの違いによる自由度の高さや、カウリングの違いによる特別感、レーシングキットによるパワーや軽さがあるのは事実。3気筒スポーツの頂点に君臨していることは間違いないですね」

エンジン水冷4ストローク直列3 気筒DOHC4 バルブ
総排気量798cc
ボア×ストローク79×54.3mm
圧縮比13.3:1
最高出力147hp/13000rpm ※ 155hp/13250rpm
最大トルク8.98kgf・m/10100rpm
変速機6速リターン、EAS3.0/クイックシフター UP&DOWN
クラッチ湿式多板スリッパークラッチ(湿式多板クラッチ)
フレームALSスチールパイプ トレリスフレーム
サスペンションF=マルゾッキ製ø43mmフルアジャスタブル倒立フォーク
R=ザックス製プログレッシブ フルアジャスタブル シングルショック
ブレーキF=ブレンボ製4ピストンラジアルマウントキャリパー/Φ320mmフローティングダブルディスク
R=ブレンボ製2ピストンキャリパー/Φ220mmシングルディスク
タイヤサイズF=120/70ZR17
R=180/55ZR17
全長×全幅2030×730mm
ホイールベース1380mm
シート高830mm
車両重量173kg ※165kg
タンク容量16.5L
価格324 万5000(239 万8000)円
()内はROSSO、※はレーシングキット


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