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【バランスを崩してリーンする。きっかけはプッシングステア】体重移動をしただけでは車体はバンクしていかない

総重心のイン側移動で実バンク角を稼いでいる

直進するバイクのステアリングから両手を離しても、多少は左右に旋回できます。低速なら、両手離しでクルクルと小回りするスタントライダーもいます。このとき使われる力は、体重移動による作用・反作用。つまり、体重移動で絶対に曲がらない、というわけではありません。 

しかし、少なくともスポーツライディングでは、俊敏性や応答性、正確性などの理由から、ステアリング入力によるバンク角制御のほうが支配的。それどころか公道でも、皆さん無意識で絶対にプッシングステアしているのですが、低めの速度域だと入力は指先でチョンと触れる程度なので、「ステアリングには入力していない」という感覚になるわけです。

その一方で、MotoGPライダーが、極端なハングオフでイン側に体重移動しているのはなぜなのか? それは、より大きな遠心力とつり合うように重心移動しているからです。 

タイヤ接地点と重心を結ぶ線と、重心からの鉛直線が成す角度をバンク角と仮定すると、リーンウィズなら見かけのバンク角と実バンク角は同じ。

対して、ハングオフでライダーの重心をイン側に移動し、車両+人の総重心も車両重心よりイン側に置くと、見かけのバンク角はリーンウィズと同じでも、総重心位置を基準とする実バンク角は深くなっているのです。

(辻井栄一郎)

【体重移動を一切せずロッシに挑むMOTOBOT】
バイクを自律走行するロボットとして、ヤマハが2015年にVer.1、2017年にVer.2を発表したMOTOBOT。操縦するYZF-R1Mはほぼノーマルで、ロボットに体重移動機能はないが、Ver.2では最大40~45度のバンク角と200km/h超でのサーキット走行を実現。これこそが、ステアリングでバイクの旋回を制御証明だ

座る位置で重心の位置は大きく変わってくる

リーンアウト=低速でのUターンなどで有利
バイクが曲がるのに必要な力がキャンバースラスト。特に低速で、回転するタイヤが傾いた方向に転がる力のこと。傾き角とともに大きくなる。車体のバンク角だけを深くすると、強い遠心力には耐えられない代わりに前輪をイン側に積極的に操舵でき、旋回半径を小さくなる
リーンウィズ=公道の速度なら十分曲がれる
大前提として体重移動とは、バイクの左右の重心を基準にして、ライダーの重心が右にあるか左にあるかを指す。リーンウィズではライダーの重心は直進時よりもイン側にあるが、車両重心を基準にすると、イン側やアウト側に大きくズレることなく、車体の傾きが変化していく
リーンイン=サーキットで旋回力を引き出す
ライダーがイン側に体重移動することで、車両+人の総重心もイン側に。見かけのバンク角に対して、タイヤ接地点と総重心を結んだ線で考える実バンク角が増えるため、大きな遠心力とつり合い、コーナーをより高い速度、または小さな半径で旋回することが可能になる

腰をズラすとイン側のステアリングを操作しやすくなる

プッシングステアの基本は、イン側の肘を曲げ気味にして関節をロックし、転舵する方向に肩からステアリングを押す動作。曲げすぎると肘がサスペンションになって力が逃げてしまうが、かといって突っ張ってしまうとまったく操縦できず危険だ。イン側に腰をズラしたフォームは、肘の突っ張りを解消して微調整しやすくなる

トライアルのように低速なら体重移動で操ることは可能

ジャイロモーメントが少ない約30km/h以下で軽量な車体であれば、上半身の体重を大きく移動したり、ステップを踏んだ反作用でライダーの重心を動かして車体を傾けることもできる。

例えばトライアル選手は絶妙な重心コントロールでバランスを取り、スタンディングし続けることができている

ステップ荷重だけでは重心の移動は起こらない

レーシングスタンドのタイヤの下に体重計を置いて左右の重量バランスを計測。片側のステップだけに荷重して腰を浮かせても、身体が車体の中心にあれば、左右の重量バランスは変化しない。左右の合計重量が減っているのは、バランスを取るためステアリングへの荷重が増えたためだ

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