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-復活-青木琢磨が最新CBR1000RR SPでサーキットを駆る!バイクは決してやめられない

バイクは決してやめられない [caption id="attachment_513143" align="alignnone" width="900"] ’74年生まれ。’97年、世界GP500にフル参戦。翌’98年シーズン開幕前テストでの事故で脊椎を損傷した。現在は四輪レースに積極的に参加。気軽に参戦できるレン耐も主催する。[/caption] 兄弟のサポートを受けて再びバイクで走った下半身不随の元世界GPライダー青木拓磨- 前回に引き続き、青木琢磨さんの復活劇をお届けするその2回目だ。今回は、特別にハンディキャップを負ったライダーでも走行可能な特別仕様に変更したCBR1000RR SPにいよいよ搭乗するシーンだ。節々に現れる3兄弟の絆も垣間見え、不安と期待の交錯する貴重な内容となっている。ファンにはたまらないシーンだ。

こうありたい自分──青木拓磨さんにとって、それはバイクに乗っていることだ バイクで負傷し、バイクに乗れなくなった それでも、やめられない 自分らしく自分でいるために

兄弟にしかできないことがある

空気は明るい一方で、微妙な緊張感もあった。時おり笑い声が途切れると、静寂が漂う。決して重苦しい静けさではない。だが、少しだけ息苦しくもある。そこにいる誰もが、「大丈夫かな……」と心配していた。 だが、当の青木三兄弟はごく当たり前のようにバイクを整備し、当たり前のようにバイクを走らせようとしている。 ポケバイで共に走った幼い頃の3人とは、大きく変わったようでいて、さほど変わっていない。「車椅子のタクちゃんをバイクに乗せてあげたい」。ことの発端は、治親さんがある動画を観たことだった。 18年フランスGPの併催イベントとして、ハンディキャップのある人たちによるレースが行われた。治親さんは、その本気っぷりに驚いた。サーキットを全力で攻めていたのだ。 すぐに長男の宣篤さんに電話した。「どう思う?」「いいね!」。即決だった。拓磨さん本人に確認するより前に、ふたりの意見が一致した。「サプライズにしたいけど……、やっぱり本人の意思を聞かないとね」「そりゃそうだ」 拓磨さんに話すと、「ふーん、ホントにできるの?」と半信半疑だった。もともとバイクに乗りたい気持ちはあったが、多くの支えが必要なことは自分でもよく分かっている。 「いくらなんでも、それは悪いよな」と、諦めの気持ちがあった。

「僕にとってバイクは永遠のエネルギー」

だが、動画を観せられると「ホントにサーキットを走れるのか。やってみるかぁ」と前向きになった。 さっそく治親さんと宣篤さんは、治親さんの持つCB1000Rにシフトチェンジ用のアクチュエーターを装着するなどして、試作車を用意。 5月終わり、治親さんから「バイクできたよ。明日サーキットに来て」と連絡を受けた拓磨さんは、あまりの展開の早さとあまりのいきなりっぷりに「えーっ」と驚いた。 それでも、テスト走行を終えた拓磨さんはシールドの中で満面の笑顔だった。三男の治親さんはその姿に「ウルウル来た」と素直に言い、宣篤さんは「もっとハンドル操作しなきゃ」と笑った。もちろんそれは、ライダーとして復帰した次男への、長男なりの歓迎の言葉だった。 ──それから1カ月。6月24日の袖ヶ浦は、雨だった。アクチュエーターが装着されたCBRは、全員が元世界GPライダーという青木三兄弟の中にあって、いかにもレーシングな雰囲気を醸し出している。 ネイキッドのCBの時とは違う緊張感──を感じていたのは周囲だけで、当人たちはごく自然だった。拓磨でさえ、まったく緊張の素振りはなく、「誰かタイヤの皮むきしてきてよ」と苦笑いしている。「オレは左回りしかできないから」とオートレーサーの治親さんがおどける。 治親さんと宣篤さんがCBRを支える。拓磨さんはスムーズに発進し、静かに雨の袖ヶ浦にコースインする。 サインボードエリアで兄と弟が見守る。1周ごとに明らかにペースが上がる。ストレートを駆け抜けるCBRの排気音が音量を高めるたびに、ふたりは「おいおいおいおい!」と笑い、1コーナーに突っ込んでいく姿に「ひゃ〜ッ」と身をすくめる。ヒヤヒヤしながら、兄と弟は拓磨さんと一緒に袖ヶ浦を周回している。 ひとしきり走ってピットに戻った拓磨さんは、タイヤに触れ「雨でこんなに温めるって、すごくない⁉」と自画自賛だ。「3コーナーに川ができてて攻められないな」「攻めなくていい!」と、笑いが絶えない。 「下半身で支えられないから、全体重が腕にかかってくる。すごい運動量だよね。あ〜、疲れた。疲れたけど、心地いいな」と拓磨さんが言う。 転んだらどうしよう、とは、三兄弟の誰も考えていなかった。実際に走る拓磨さんも、それを支え、見守る治親さんと宣篤さんも、純粋にバイクで走る喜びだけを感じていた。 「エンジンの振動、音、そして風。肌と肉と骨を通じて得られる感覚のすべてが刺激になるんだ。バイクは僕にとって、永遠のエネルギーだよ」 そう言って、拓磨さんは微笑む。 [caption id="attachment_513171" align="alignnone" width="900"] 「よし、今日はこれぐらいにしといてやるか!」と自画自賛の走りを披露した。やはりモータースポーツの申し子だ。[/caption]]]>

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