アクスルシャフトで走りが変わる! P.E.O. Zero Point Shaft開発者にその実力を聞く
アクスルシャフトがこれほど走りを変えるとは……P.E.O. Zero Point Shaft
取り回しが軽くなった、“安定性が増してコーナーが怖くなくなった”等々ユーザーから驚きの声が上がっている、P.E.O.のゼロポイントシャフト
アクスルシャフトを交換するだけで、なぜそれほどの効果を体感できるのか?
開発者にその秘密を聞き、実走インプレッションを行った
[caption id="attachment_672282" align="alignnone" width="900"] 高い精度が求められる機械部品が、切削加工で作られるのは珍しくない。ZERO POINT SHAFTも、NC旋盤やマシニングセンタを用いて切削加工で成型されるが、さらに研削工程を設けて精度を追求。研削加工は、一般的な切削加工に比べ約100倍の精度管理が可能。だが、ただ研削加工を施せば精度が上がるというものではなく、素材の状態や加工時の環境によって細かな調整が必要。そのノウハウは数値化できるものではなく、職人技の世界なのだ。水田さんが身につけている技術が、ZERO POINT SHAFTだけの極限の高精度を実現しているのだ[/caption]
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ZERO POINT SHAFT μ(写真上)
ZERO POINT SHAFTのプレミアムモデル。加工時に稀に生みだされる、極めて精度の高い部材を選び出し、最先端技術の“無電解複合メッキ”を用いて表面処理。スタンダードのZERO POINT SHAFT以上の高い耐久性と優れた自己潤滑性が特徴で、オイルレスの状態でもホイール回転時のフリクションロスを徹底的に排除している
ZERO POINT SHAFT(写真下)
様々なテストを繰り返し、アクスルシャフトの素材として最適と判断されたSCM435H鋼材を使用。千分の1ミリ単位で管理される、高精度な削り出し加工と研削加工で成型した後、三層の特殊メッキで表面処理が施される。最適なクリアランス寸法と表面処理の効果で、摩擦係数はノーマルパーツの約半分という低フリクションを誇る[/caption]
取り回しだけでもわかるフリクションロスの小ささ
「この程度の精度でいいの? そう思ってしまったんですよね」 と話し始めたのは、装着すれば誰でも性能アップを体感できると話題のアクスルシャフト、ゼロポイントシャフトのメーカー、PEOで代表を務める水田信行さん。先ほどのセリフは、ノーマルのアクスルシャフトを見てのコメントだ。 「自分は金属加工の世界で仕事をしてきました。これまで造ってきたものと比べると、バイクの部品はかなりアバウトに作られていました」 水田さんは腕利きの職人、精密な金属加工を多く手がけてきた。求められる精度は、千分の1㎜単位が当たり前。一般的なバイク部品は、そこまでの精度で作られていない。 「もちろんバイクメーカーさんの純正パーツは、規定された交差から外れるものではありませんし、その状態で設計上の性能は確保されているはずです。ですが、もっと精度を上げれば、絶対に効率が良くなるハズだ。そう考えたのが、ゼロポイントシャフトの出発点なんです」 アクスルシャフトは、高速で回転するホイールを支持している軸だ。その軸が偏れていたらホイールにフレが出て、エネルギーのロスや不安定な挙動をみせる。ごくわずかであっても、その差をライダーは感じ取るものだ。また精度にこだわるには、もう一つ大きな理由がある。 「アクスルシャフトは、ベアリングを介してホイールを支持しています。ベアリングという部品の精度は、もの凄く高いんです。ですが、アクスルシャフトに見合った精度が持たされていなければ、ベアリングが本来持つ性能は発揮できないんです」 ベアリングには、設計段階で「予圧」が計算に入れられている。これは、ベアリングに軸が入った状態で、適切な圧力がかからないと設計通りの性能が出ない。つまり、アクスルシャフトとベアリングのクリアランスは、大きすぎても小さすぎてもダメなのだ。 ゼロポインとシャフトが目指すのは、ホイール回転時のフリクションロスを極限まで減らすこと。そのために徹底的に精度を追求している。また表面処理も、潤滑性の高い特殊メッキを使用。ちなみにμmレベルだがメッキにも厚みがあるので、製作時にはメッキの厚みも計算して加工。メッキ処理も、皮膜の厚さを厳密に管理して行われているという。 そこまでして得た究極の精度。果たして効果のほどは如何に? 「取り回しでも違いを感じられますし、乗ってもらえば判ります」 [caption id="attachment_672276" align="alignnone" width="900"]
これはアクスルシャフトの円筒度を計測したデータを3D化したもの。円筒度とは、幾何学的に正しい円筒形状であるか否かという定義。断面の真円度と、その同軸度の正確性が求められる。右がZERO POINT SHAFTで、左が一般的なノーマルパーツ。千分の1ミリ単位の世界では、精度にこれだけの差がある。激しく歪んでいるようにみえるノーマルパーツであっても、もちろん車両メーカーの認める交差の範囲内で作られており、一定の性能は担保されている。だが、高速回転し効果荷重を受け止めるパーツであるアクスルシャフトというパーツで、どちらが高い性能を発揮するかは感覚的にでも理解できるだろう[/caption] P.E.O.代表 水田信行さん [caption id="attachment_672280" align="alignnone" width="900"]

押し引きの段階で分かるしなやかな動き


フロントだけでも接地感が大きく向上 フル装備した車両の運動性はもはや別物
最後に試したのが全部載せ仕様だが、極論を言えば乗る前から分かるほど違いは歴然としていた。特にゼロポイントのリンクボルトの効果は大きく、静止状態のまま車体後部を上下動させるだけで、明らかにリアサスペンションがスムーズにストローク。軽やかなハンドリングとしなやかな路面追従性を予想させ、実走してもそこに裏切りはなかった。タイヤのグリップが向上したかのような、絶大な安心感をもたらしてくれるのがPEOのパーツである。(伊丹孝裕)ZERO POINT SHAFTは、こうして作られる SCM435H鋼って?
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サスペンションのポテンシャルを限界まで引き出すためのボルト
サスペンションのマウントボルトは高荷重を受け止めつつ、ショックユニットの回転部分をスムーズに回転させる必要がある。そこでフリクションロスが発生していれば、使用されているボルトの本数だけ抵抗が重なることになる。ZERO POINT LINKは、宇宙・航空産業で使用される非常に高強度だがコストが高く希少な素材SNCM447を使用し、荷重がかかった時の変形によるフリクション発生を排除。表面処理はZERO POINT SHAFT μと同じ無電解複合メッキを施し、オイルレス状態でも高自己潤滑性を持たせている。全日本ロードレース選手権など、トップカテゴリーのレースを舞台に開発を行い、確かな効果が認められたことでリリースに踏み切ったとのこと。サイズは小さいが、1本1本の製造工程はZERO POINT SHAFTと変わらない。なんとも贅沢なボルトなのだ。




