1. HOME
  2. COLUMN
  3. 自宅で楽しもう!! ワイン・ガードナーのドキュメント映画DVD『WAYNE/ガードナー物語』

自宅で楽しもう!! ワイン・ガードナーのドキュメント映画DVD『WAYNE/ガードナー物語』

Wickマシノの#おうち でモタスポ! 動画作品にまつわる、とっておきのエピソード 私がレース現場の撮影を始めたのは1983年。それからバイクを取り巻く世界も激変していますが、仕事を通じて出会った今だから話せるエピソードをお届けします。

ウィック・ビジュアル・ビューロウ代表取締役 
増野知英 Tommy Mashino
レース関連の映像制作や、DVD制作&販売を行いながら、日本のレースシーンを裏側から支える重鎮

ホンダのエースは誰だ!? ヤマハへの移籍もありえたガードナー

ワイン・ガードナーの劇場用ドキュメンタリー映画『WAYNE』の製作が開始されたのが、いつ頃なのか詳細はわかりません。ただ私のもとに「ワイン・ガードナーの素材を探している」と最初に連絡があったのは、17年の3月でした。

その後ネット経由でも問い合わせがありました。「このニュース番組はどこのテレビ局なのかわかるか?」と。リンクが貼られていた動画を見るとTBSのニュース番組で、87年鈴鹿8耐の記者発表の模様でした。

驚いたのはワインがインタビューを受け放送されたパート以外にも、編集前のインタビュー収録素材の全てが、その動画にあったのです。 よく南半球で入手できたものだと思いました。もちろんTBSの管理者にも素材提供の可能性は伝えましたが、その映像は最終的に採用とはなりませんでした。

さらに80年代に日本でレース関連の撮影をしていた方々に、映像の有無確認を打診し、当社で撮影した動画や預かっている動画なども含め、集めまくりました。 『WAYNE』はそういった経緯を経て完成し、オーストラリアで劇場公開されたのは18年9月30日でした。

日本での上映は範疇外でしたが、DVDとブルーレイの日本語版の発売を当社で行うことになりました。

WAYNE/ガードナー物語

WAYNE/ガードナー物語
価格:4290円(ブルーレイ版)
本編:97分/特典:10分
問:ウィック・ビジュアル・ビューロウ https://wick.co.jp/

本編を観て、あらためてワインのライダー人生を振り返ると、本当に波乱万丈なものだったと感じます。何と言っても初めて世界グランプリに出場したレースで、転倒してしまった世界チャンピオンのフランコ・ウンチーニと接触。

ヘルメットが外れ、路面に倒れたウンチーニは意識不明の重体で病院に運ばれてしまったのですから……。 その決定的な映像もコーディネーションしたものだったので、この作品の中でも大きな意義のあるシーンに協力できて良かったです。

ワインについて、忘れられないエピソードがあります。88年シーズンが終わったとき、エディ・ローソンがヤマハからホンダへ電撃移籍した時のことです。同時期に開催された富士スーパースプリント。このレースを当時制作していたビデオマガジン「Bikers」で独占発売をすることが決定しており、私は事前にワインのインタビューを申請していました。

ところが大会直前に、ホンダが世界チャンピオンの獲得を発表したのです。ホンダのエースはどっちだ? その影響か、ワインは公式練習に姿を現しませんでした。 エディの件できっと不機嫌に違いないと思いながらもインタビューを試みると、最初はあまり乗り気な対応ではなかったのですが、いざビデオカメラが回り出すと、着ていたTシャツをニコニコしながらアピール。

そこには「IT’SMINEIN89(89年はオレのもの)」と書かれていました。エースの座は渡さない、というアピールでした。 ワインは同時期に、ケニー・ロバーツからヤマハへの移籍を誘われており、エディの件を知っていたなら迷わずヤマハへ行っただろう、と作中で語っています。

ヤマハYZR500を駆るワインも見てみたかったですね。 エピソードをもうひとつ。当社ではWGPと鈴鹿8耐での彼のキャリアを綴った作品を92年に発売しました。それが、制作だけでなく初めて発売元にもなったビデオ、『ワイン・ガードナーTHE LEGEND OF THE BLUETHUNDER』です。

当時、彼のマネージャーにインタビューを申し込むと「フランスのキャロル・サーキットでスーパー・モーターズ(ギ・ドンドール)に出場するので、近くのホテルでならOK」との返事が来ました。現地の撮影クルーを手配して、単身シャルル・ド・ゴール空港へと飛びました。

ネットも携帯電話も普及していない時代、はたして指定したホテルにワインがちゃんと来てくれるのか不安だらけでしたが、時間通りに登場し落ち着いてたっぷりとインタビューに応じてくれたのでした。

引退後「最もウマの合うレジェンドライダーは?」と聞くと、意外にもフレディ・スペンサーの名前を挙げました。レースではフレディが先輩ですが、年齢はワインが2歳年上です。彼の話はとても面白く、尊敬しているとのことでした。

そんなワインのドキュメンタリー『WAYNE/ガードナー物語』のブルーレイ。オーストラリア版DVDのジャケットにある「GUTS IS EVERYTHING」がワインのことを良く言い表していると思います。ですが日本語にしてしまうと「ド根性こそがすべて」みたいな感じになってしまうので、外しました(笑)。

一番のライバルだったエディとの関係も、この映画ではよく描かれていると思うので是非ご覧ください。

関連記事