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ライテクQ&A【ブレーキング編】|元モトGPライダーが一問一答!

読者の皆さんから寄せられたライディングの疑問に中野真矢さんと青木宣篤さんが答える! 世界のトップカテゴリーレースで戦ってきたお二人は一体どんな回答で我々を導いてくれるのか! 本稿では読者からの質問で最も多かったのがブレーキに関する内容。多くのライダーが苦手意識を持っているブレーキングについて質問してみた。プロレベルのブレーキングはすぐにマネできないが、上達するヒントをお二人に指南していただいた!

Q1:シフトダウンと、腰をズラすタイミングを知りたい!

A=Aoki:先に腰をズラしてからブレーキングしています

「ブレーキ→シフトダウン→腰をズラす」という人が多いですが、私は「腰をズラす→ブレーキ→シフトダウン」の順。コースレイアウトによって変えることはありますが、これが基本。ライダーの体は重量物なので、早めに動かしておいた方が挙動は安定します。直線からコーナーに入る場合は200m看板ぐらいで腰を落とし始め、150m看板でブレーキ開始という感じ。直線が短い袖ケ浦フォレスト・レースウェイなら、最終から1コーナーまでズラしたままです。

A=Nakano:サーキットなら目印を決めて走るのがおススメ

私はブレーキの掛け始めが、シフトダウンを始めるタイミング。曲がれると思える速度まで落ち着いてから腰をズラしています。ブレーキを開始する位置は、サーキットなら目印を決めるのがいいと思います。そうすれば「前の周は危なかったから、目印より手前から始めよう」となります。走行会では「無理して頑張った人が勝ち」は間違い。まずは自分が怖くないブレーキポイントを探すことに集中してみてはいかがでしょうか。

Q2:ブレーキングや荷重移動で、腕の力は使う?

A=Nakano:腕と下半身ホールドで身体を支えるイメージです

ご存じの通り、下半身のホールドも大事なんですが、正直ブレーキングでは腕でも身体を支えています。荷重移動はステップワークで行っています。イメージはおもちゃのホッピングで、リアサスのバネを意識して、ポンッと切り返す感じです。例えばストレートから右コーナーに入る際、一旦左に車体を振り、左ステップを軽く踏み込んでから、ポンと右に荷重移動すると、メリハリが付いて曲がるキッカケを掴みやすいはずです。

A=Aoki:減速Gに抵抗はするけど腕ではなく肩に力を入れる

ブレーキングで力を入れるのは肩です。腕は減速Gに対抗して突っ張りますが、力は入れません。ただし、完全に脱力しているわけでもない。電気製品でいえば、スイッチはオフだけど待機電力が流れているような状態。常にスタンバイしておいて、即座に力が入れられるように備えてはいます。

Q3:MotoGPライダースはコーナーの進入でなぜ足を出す?

A=Nakano:重心を下げてバランスを取りたいから

現代ではリアが浮くほどのハードブレーキですが、足をステップに置くと車体と一緒に身体(重心)も上がってしまい、前つんのめりになります。そこで、足を出してなるべく後ろに荷重したい。また、リアがスライドしても足を出すことで身体がセンターに残るのでバランスが取りやすいです。ちなみに私の時代にはまだないテクニックでした。

A=Aoki:本来は後輪の摩擦力で制動力を高める技術だが

もともとは、後輪をコーナーのアウト側に振り出すためでした。後輪を横に出すことで、摩擦で制動力を高める狙いです。また、自分の意思で後輪を出せば安心感も増します。予期せぬ時にいきなり後輪がスライドアウトすると怖いし、転倒にもつながります。自分で滑らせればコントロール下にあるので怖くない、というわけです。しかし最近では、後輪はほとんど浮いてしまっています。今現在の狙いは、足を出すことで重心を少しでも低くして安心感を得ているのだと思います。

Q4:ブレーキはそっと掛ける? ガツンと掛ける?

A=Nakano:ガツンなんてとんでもない! 実に繊細に操作しています

レースでは荒々しく握っているように見えますが、実際はすべての操作を丁寧に行っています。まずはロックしない確信のある範囲で「これくらいかな?」で掛け始め、まだいけるなら強めるし、タイヤに負担が掛かっていれば緩めるという繊細な調整をしています。皆さんが1秒かけて行う操作を、プロは半分以下の時間で行うイメージです。

A=Aoki:最初はソッとかけて徐々に強く握っています

掛け始めはソッと、途中はジワジワと効力を高め、最後の方はかなりグウ~~ッと強くかけています。こうして言葉で説明すると時間軸が分かりにくいのですが、レースではこの「ソッ、ジワジワ、グウ~~ッ」をかなりの短時間で行います。レーシングライダーのブレーキングはガツンとかけているように見えても、実はこういった細かい操作の段階を踏まえています。特に最初の「ソッ」が大事。ものすごく短時間でレバーの遊びを取る、というイメージです。

Q5:シフトダウンでブリッピングって必要?

A=Aoki:10000rpm以上であればした方が良いと思います

最新SSのようにスリッパークラッチ、エンジンブレーキコントロール、クイックシフターが装備されていれば、ブリッピングは不要です。最新の電子制御は非常によくできているので、バイク任せの方がうまくいきます(笑)。気にせず、ブレーキングに集中してください。これらの装備がない場合バイクにもよりますが、おおよそ10000rpm以上の高回転域からシフトダウンする場合はブリッピングした方がいいと思います。

A=Nakano:2速以下に落とす際はブリッピングすることも

オートブリッパーの無いバイクでも、クロスミッションになっている近年のモデルなら基本的にやらないです。ただし、高回転域で2→1速に落とす際はブリッピングすることでエンジンブレーキがスムーズになってブレーキングが安定します。また、バンク中や路面温度が低い際は、オートブリッパー付きでもクラッチを少し切るなど、丁寧に操作します。

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