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高田速人さんのスポーツライディングブートキャンプ|Vol.3 ブレーキングを安定させるフォーム

前回に引き続き、ブレーキングについて高田速人さんがレクチャー。その内容は、キャリアが長いライダーほど違和感があるかもしれない。だが、バイクの進化に合わせて、ライテクも進化していくものなのだ。

現代のバイクはブレーキングしながらバンクできるようにできている!?

スポーツライディングにおけるブレーキングは、ただ減速するだけでなく、いかにスムーズにコーナリングへと繋げるかが大切。前回は、ブレーキのかけ方を紹介したが、まだまだブレーキングは完成していない。ブレーキのかけ方の次は、ブレーキングでのフォームについて知ろう。

「腕を伸ばして、突っ張り棒のように上半身を支えてください。それがブレーキングの基本フォームです」 と、高田さん。確かに減速Gの荷重に耐えるためには、有効な姿勢だろう。だが、身体が突っ張った状態では、そこからコーナリングに入るのは無理と感じる人もいるだろう。

「自分の意思で身体を突っ張らせることと、パニックになり身体が硬直するのでは、意味合いが違います。任意のタイミングで全身の力を緩められればいいんです」

高田さんの右手はブレーキレバーにかかり腕は突っ張っているが、車体はバンクし始めている。適切な操作をすればブレーキをかけながらでもバンクは可能なのだ。

「昔はブレーキングを終わらせてから、コーナリングを始めるのがセオリーでした。ですが、今はブレーキをかけたまま、コーナーに進入していくのがスタンダード。こうした走り方が可能になったのは、バイクとタイヤの進化が大きいと思います」 

現代のバイクに現代のタイヤを履かせるなら、ブレーキングとコーナリングはシームレスに考えるべき。時代に合わせ、意識を転換しよう。

NG

GOOD

上半身を支えるために両腕を突っ張ってOK!

ブレーキングでライダーが受ける減速Gは強烈だ。車速が上がれば上がるほど、ボトムスピードとの差が大きくなるほど、減速Gは大きくなる。その荷重を受け止めるためには、腕を伸ばし、ハンドルに突っ張って身体を起こす姿勢をとる。そう聞くと、違和感を覚える人もいるかもしれない。セルフステアリングを妨げないように、ハンドルは常にフリーな状態を保たなければいけないという考え方は根強く、ある意味で正しい。だが、適切なタイミングで適切な入力を行っている限りは問題とはならない。ブレーキング時のこのフォームは、適切な入力なのだ。

下半身のホールドを高め、腕の負担を軽減する

強烈なブレーキングの荷重を、腕だけで支えるのは不可能。主役は腕だとしても、下半身でマシンをホールドして、負荷を分散させる必要がある。ブレーキングしながら腰をズラしてコーナーリングに入ることを前提とすると、その時に重要な役割を担うのはコーナー外側の、下半身でのホールドだ。膝でマシンを挟み込むだけでなく、足全体を使い、マシンとコンタクトする面積を増やすことを心がける。接触面積が増えれば、それだけ摩擦力が上がる。

踵も下半身のマシンホールドで重要。ステップのヒールガードに荷重してマシンを押さえこむ

ステップを踏む位置でホールド性が激変!

下の2枚の写真を見てほしい。GOODは、土踏まずでステップを踏み、ヒザから内腿が車体と“面”で接触しており、踵もヒールガードをホールドできている。BADはいわゆる“つま先乗り”。こうすると車体とはヒザだけが“点”で触れ、踵もヒールガードに当たらない。これ、実はつま先乗りなのが問題ではない。つま先が上を向くと、膝の位置が下がってホールド性が落ちるのだ。下半身ホールドは、つま先を地面に向けることを意識する。

NG

GOOD

ブレーキングでは頭の位置を高くキープしたい

ブレーキングの基本フォームは、腕を突っ張ること。これには、減速Gに耐えて身体を支える以外に、マシンコントロールに関わる大きな効果がある。 一般的なテレスコピック式フロントフォークは、ブレーキをかけるとサスペンションが縮んで前下がりの車体姿勢になる。するとライダーの頭の位置も下がるのだが、これがいけない。 人間の身体は、何か動作を行う時に、頭の位置が大きく動くことを嫌う。車体と一緒に頭の位置が下がると、コーナリングなど次の動作に入る時、スムーズに身体が動かなくなるのだ。ブレーキングで腕を突っ張って上半身を起こす姿勢をとれば、フロントが沈んだ分と相殺する形で、頭の高さを維持でき、安心感も高められる。

写真のように、伏せた姿勢のままブレーキをかけると、頭が下がるだけでなく、顔が下を向いて視界が狭くなる。ヘルメットを被った状態ではなおさらだ。右のように上半身を起こすことで、広い視界を保つこともできる
歩く時き出すときは、身体が前傾してから足が前に出る。坂を下る際は、身体が後ろに反ってから足が出る。この動作は、頭の位置と視線を変えず、視界を確保、安心感を得るために、自然と身体が行っているものだ

ブレーキが決まれば立ち上がりもスムーズ

下のコース図は高田さんと、一般ライダー代表として編集・藤田の走行データを比較したもの。車速の違いはあるが、コーナー進入に向けてスロットルを閉じる位置と、ブレーキをかける位置はあまり違いはない。 

注目は、「最大入力ポイント」を過ぎた後に藤田が加速していること。その後、速度が上がって不安になり、スロットルを閉じて再度減速。結果、立ち上がりでスロットルを開けるのがかなり遅くなった。 

無駄な加減速が多い藤田の走り。その一因となっているのは、これまで述べてきた下半身ホールドや、頭を上げて視線の高さを調整する動作が上手くできておらず、ブレーキングが不安定になっているからだ。

気持ちよく加速するためには、できるだけ早くスロットルを開けたい。そのためにはブレーキングを安定させ、無駄なくスムーズにコーナリングしたい。とは言え、どこからどれくらいブレーキングすればいいかの判断は難しい。では高田さんはどうやって決めているのだろうか?

「まずコースを自分の足で歩いて、走行ラインやブレーキのポイントを考えます。その後、バイクで走って、アジャストしていく感じですね」 

一般ライダーがコースを歩く機会はほぼ無いが、動画投稿サイトのオンボード映像などで予習はできる。無策で望むよりは、まずは動画でシミュレーションしてみよう。

ブレーキングが不安定だとコーナリングもギクシャク

先月に続き、高田さんと編集・藤田の走りを比較。図は筑波サーキット・コース1000の最終コーナー。「進入速度」はコーナーに向けて減速を開始した地点。速度差はあるが、2人ともほぼ同じ場所から減速をスタート。徐々にレバー入力を強めていき、「最大入力ポイント」でフロントブレーキを最も強くかけた。この地点も2人はほぼ同じだ。しかし両者にはブレーキのかけ方に大きな違いがある。 高田さんは先月号の第1コーナーと同様にスムーズに速度を落としているが、藤田は必要以上に強くかけて速度が落ち過ぎ、コーナリングの途中でスロットルを開いて再加速している(下グラフ参照)。安定したブレーキコントロールができていない証拠だ。

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