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高田速人さんのスポーツライディングブートキャンプ|Vol.5 コーナーでは”曲がる?””曲げる?”

高田さんのレクチャーは、今回からいよいよコーナリングに突入。なんとなく“曲がれる”では、上手く走ることはできないという。乗り手が、明確な意思を持って”曲げる”コーナリングを身につけよう。

MFJ公認インストラクター【高田速人】
’76 年生まれ。東京都出身。鈴鹿4耐優勝を経て国際ライセンス取得。’13年から3年間、世界耐久選手権にフル参戦、最高ランキングは4位。バイクのタイヤとメンテナンスのプロショップ「8810R」代表

ライダーの意思でバイクを“曲げる”ことで走りの組み立てが変わる

コーナリングで大切なのは、ライダーが自らの意思で〝バイクを曲げる〞ことだと高田さんは語る。 上の図を見てみよう。青のラインは〝バイクが曲がった〞時の物、赤は〝バイクを曲げた〞時の物だ。コーナーを曲がるだけなら誰でもできる。だが、上手く安全に走るためには〝バイクを曲げる〞ことが必要だ。

“ 曲げる”と“曲がる”を走行ラインで比較

筑波サーキット・コース1000の第3コーナーで、バイクを“曲げた”時と“曲がった”時の走行ラインを比較。高田さんの実走行をGPSデータを元に描いたもので、破線は減速区間、実線が加速区間。最も大きな差は立ち上がり加速。“曲がった”ラインは加速区間が長く見えるが、実際はパーシャル状態で加速してはいない。“曲げた”ラインの方が直線的に立ち上がっているので、加速で絶対的な優位性がある。また、コーナー奥までブレーキをかけているので、タイヤを路面に強く押し付けることができ、コーナリング中のグリップも安定する。

画像の説明

青の〝曲がった〞ラインだと、イン側に寄るのが早すぎてバイクがダラダラと旋回し続け、コーナー出口を向くまで時間がかかり、なかなか加速体勢に入れない。結果、深くバンクする区間が長くなり、転倒の危険性も高くなってしまう。

対して赤の〝曲げる〞ラインでは、コーナーの奥まで進入し、マシンを急旋回させている。バンクしている区間が短く、バイクを早く起こしているので安全で、次のコーナーまでの加速区間を長くとれる。 サーキットでスポーツライディングする最大のポイントは、スロットルを開けている区間をより多くとることだ。バイクがバンクした状態では、スロットルは開けられない。優秀なトラクションコントロールを装備していても、それは変わらない。スロットルを早く開けられる走行ラインを選ぶため、バイクを曲げる技術を身につける必要がある。

ではバイクを曲げるには、どうしたらいいのだろうか? コツは「ステップワークと身体の力の抜き方、そして視線の送り方」だと高田さん。今回は、まずステップワークの練習方法を学んでみよう。

バイクを〝曲げる〞ためにまず身につけたいステップワーク

バイクを曲げるには、一旦バランスを崩し、車体をバンクさせることが必要。ステップワークはそのきっかけとなる動作だ。また、前回バイクがコーナリングするメカニズムを、タイヤの進化と併せて紹介した。コーナリングフォースを利用した、現代のラジアルタイヤの走り方には、ステアリングに舵角がつくことが必要なことも理解できたと思う。ステップワークの練習をすることで、ステアリングの舵の入り方も体感的に理解できるようになる。 

ステップワークの練習では、速く走る必要はない。速度は30〜40㎞/h程度でOKだ。ただしスラロームを繰り返すので、安全が確保できるある程度広いスペースは必要。人のいない駐車場のような場所がいい。 まず、ここで紹介している基本フォームを参考にして、ステップに立つ。そして〝バイクを曲げる〞方向のステップに荷重して旋回を繰り返す。この時の注意点は、ハンドル操作を行わず、ステップへの荷重だけでマシンをコントロールすることを意識すること。ボディアクションも、ゆっくり丁寧に行うことが大切だ。 

ステップワーク練習の基本フォームはコレ!

ステップワーク練習で、バイクがバンク中の基本フォーム。ハンドルには手を添えるだけ。大切なのは太ももや膝、脛といった部分でマシンをホールドしないこと。下半身でホールドすると、その反作用で下半身の自由度が落ちるため、無意識に上半身でマシンを操作してしまうからだ。操作の入力は、ステップ荷重のみで行う。

画像の説明  

腕を伸ばすことが重要

腕を伸ばした状態をキープすること。これは、速度を一定に保つためにスロットルを固定すること、上半身を使ってステアリング操作を行わないことの2つの理由によるもの。バイクをステップワークだけで曲げられることを理解・認識できれば、安心感の高いコーナリングが可能になるのだ。

画像の説明  

カカトを深く落とす

ステップ荷重時は、踵をステップバーより低い位置まで落とす。これは、力を入れ難い姿勢をとることで、ステップへの荷重が過大になることを防ぐため。無理に力を込めなくても、ステップ荷重を意識するだけでバイクは曲がる。また、荷重時は急激な動作は禁物、ゆっくり丁寧に荷重する。

画像の説明

高田さんの走行写真を見ると、ステップの踏み込みが極端なので、急激な動作を想像しがちだが、実際の動きはとてもスムーズで、むしろゆっくりと身体を動かしている。 

ステップに荷重することで、バイクがバンクし始め、それに伴ってステアリングに舵角がつく。バイクが旋回すると同時にセルフステアの効果で、車体が起きてくる。この一連のバイクの動きを身体に覚えさせよう。 

ステップワーク練習の流れを見てみよう

この連載では、ブレーキングでの〝腕つっぱり〞の重要性を訴え続けてきた。腕をつっぱったままでは、バイクを曲げられないと考えている人もいるが、バイクはステップワークだけでもコーナリングさせることができる。 

実を言えばコーナリング中も、ある程度の〝腕つっぱり〞は大切だと高田さんは言う。「コーナリングでは様々なG(重力)が身体にかかります。減速Gに加え、旋回時には遠心力も加わります。そうしたGに耐えるためには、腕をつっぱる。バイクを曲げるポイントまでは、しっかり腕をつっぱる必要があるんです。 

また、腕をつっぱっていないと、ステアリングに舵が入る(角度がつく)タイミングが早くなり、フロントを巻き込む可能性も。最悪の場合は転倒にも繋がりますし、狙ったポイントでバイクを曲げることができなければ、思い通りのラインを描くことはできません」 

この連載でレクチャーしてきたことは、全て繋がっている。次回もコーナリングについて、まだまだ掘り下げていく。

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