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中野真矢と平嶋夏海が乗ってみた!【KAWASAKI Ninja 650 KRT EDITION& Z650】

フルカウルスポーツのNinja 650と、ネイキッドのZ650。この2モデル、見た目こそ大きく異なるが、同じシャシー、同じエンジンが与えられた、極めて近い兄弟車だ。この2台、どこが違って、どこが同じなのか?中野真矢さんと平嶋夏海さんの2人が、走り込んで検証する。

見た目も乗り味も違うが根底にある優しさは同じ

中野:今回走らせたのは、Ninja 650と、Z650の2台。僕はZ650の方は、結構深いところまで走り込んでいるんだけど、Ninja 650は初めてかな?

平嶋:私は、現行モデルに乗るのは、今回が初めてですね。先代モデルなら、2台とも走らせた経験があります。とても乗りやすいバイクだなって感じたことを覚えてます。

中野:実は、この2モデルを乗り比べると聞いてから、結構楽しみにしていたんだよね。

平嶋:そうなんですか?

中野:以前、Z650で走り込んだというのが、ライダースクラブの企画でZ650RSとの比較試乗(2023年1月号掲載)だったんだ。この2モデルはエンジンや車体の基本的な部分が同じの兄弟車でしょ? それでいて、スタイルに合わせたキャラクター付けがされていて面白かったのを憶えている。

平嶋:フムフム。

中野:Ninja 650も、基本コンポーネンツを共有している兄弟車。Z650とZ650RSは、ストリートファイターとネオクラシックの違いはあるけど、広い意味でネイキッドじゃない? Ninja 650はフルカウルスポーツだし、どんな感じの性格に仕上げられているかに、興味があったんだよね。

平嶋:なるほど! で、実際に走り比べて、どう感じました?

中野:まあ、そう焦らないで。まず、走る前に〝アレッ?〞と思ったんだよね。一般的な話になるけど、フルカウルスポーツのNinja 650とネイキッドのZ650のポジションを比べたら、Ninja 650の方が前傾がキツいと想像するんじゃない?

Ninja 650 KRT EDITION

スパルタンな見た目にそぐわないフレンドリー
【中野真矢

平嶋:まあ、そう思いますよね。

中野:でも、この2モデルの場合は、それが逆転しているんだよね。ネイキッドのZ650の方が、前傾気味というか、上半身がコンパクトに収まる姿勢でスパルタン。

平嶋:確かに! Ninja 650の方が、上半身がゆったりしてました。

中野:でしょ? まずそこで〝どういうこと?〞って、興味がわいた。

平嶋:ハンドルの高さや形状は、かなり違いますよね。

中野:Ninja 650は垂れ角と絞りがつけられていて、Z650はフラットで幅も広めのストリートファイター的ハンドル。バーエンドは、どちらが高いのかな? 測ってみればよかった。

平嶋:シート高とステップ位置は同じですよね? ハンドルの高さなのか、形状なのかわかりませんけど、Z650の方が、コンパクトでスポーティに感じました。比べると、Ninja 650は大人しい感じ。

中野:でも、どちらにしてもリラックスできるポジションだよね。上半身の前傾度はキツくないし、下半身の窮屈もがない。コレは、ツーリングでは大きなメリットだと思うよ。

平嶋:そう思いますけど、中野さんツーリングしませんよね?

中野:それがねえ、最近変わってきたんだよね!

平嶋:エッ! ツーリング派に転向したんですか?

中野:そお、最近ツーリングへの適正を重要視するようになったんだ。

平嶋:ドヤってる!(笑) 何か、きっかけがあったんですか?

中野:いやあ、少し前に僕の師匠である忠さん(鈴木忠男さん/SP忠男代表)に誘われて、ツーリングに出かけたんだよね。それで、長距離を走る時の、ライディングポジションの重要性に気づいたの。

最近、ツーリングに目覚めたという中野さんが高く評価するのがエンジン。「マイルドでスムーズなパワー特性は疲れ知らず。また、クラッチがいい。操作が軽くて、どれだけ走ってもヘッチャラ。パワー特性との合わせ技で、エンストさせるのが難しいくらい」
最近、ツーリングに目覚めたという中野さんが高く評価するのがエンジン。「マイルドでスムーズなパワー特性は疲れ知らず。また、クラッチがいい。操作が軽くて、どれだけ走ってもヘッチャラ。パワー特性との合わせ技で、エンストさせるのが難しいくらい」

平嶋:中野さんも、ようやくそこに気付いてもらえましたか(笑)。

中野:ハイ、遅ればせながら(笑)。

平嶋:どれくらい走ったんですか?

中野:400kmくらいかな? かなりの長旅だったね。

平嶋:日帰りツーリングですよね? それくらいフツーですよ?

中野:ツーリング初心者にはなかなかの難関だったんだってば! ともかく、ツーリングではリラックスしたポジションが大切だと理解できたワケ。その観点からは、Ninja 650もZ650も、かなりの高得点がつけられると思います。

平嶋:それは間違いないですね。ツーリングの時は、ラクなポジションがイチバンです! キツいポジションのバイクでツーリングして、身体がいたくなると〝この痛みがないと走った気がしない〞とか言う人がいますけど、ナニ言ってんだ! って思いますモン。

中野:荒ぶっております(笑)。ポジションや取り回しで、他に気づいたことはある?

平嶋:私の身長でも、足着き性に不安がないのは嬉しいです。

中野:シート高は790mmだから、大型バイクとしては低めだよね。

平嶋:取り回し性ですけど、2台とも大型バイクの中では軽い方だと思います。カウルがある分、Ninja 650の方が重いんですけど、実際には差を感じません。走らせると、むしろNinja 650の方が軽さを感じました。攻めた時、よりシックリくるのはZ650でしたけど。

Z650

軽快だから攻めてて楽しい、誰にも勧められる【平嶋夏海】

中野:うん、Z650の方がハンドリングのキビキビ感が少し高いかな? シャープに曲げたい時の反応がいい。Ninja 650は、比べるとゆったりと曲がる。平嶋さんは、どっちが楽しく走れた?

平嶋:Ninja 650ですね! 私、スーパースポーツで走るのって、いまだに怖さを感じるんですよ。この企画の試乗コースって、基本的にサーキットじゃないですか? やっぱり〝攻めなきゃ〞って思うんですけど、上手く走れた気がしないんです。

Ninja 650 KRT EDITION

乗り手を緊張させないおおらかさが嬉しい
【平嶋夏海】

中野:ちゃんと攻めてると思うけど?

平嶋:自分的にはまだまだです。ネイキッドの方が、積極的に走れていると思ってます。でも、Ninja 650は楽しくスポーツライディングできました。やっぱり、余裕のあるライディングポジションのおかげなのかなあ?

中野:それはあると思う。乗り比べて気づいたんだけど、この2台のハンドリングは基本的に同じ性格。コーナリングでキャラクターの違いが出るのは、シートの座る位置を変えた時。シートの前に座ったり、後ろに座ったりしてみると、ハンドリングに変化が出る。シッティングポイントって、ハンドル位置で決まる部分があるじゃない? その影響が大きいと思うね。

(右)Ninja 650 KRT EDITION(左)Z650  

平嶋:ポジションって、バイクの性格に大きな影響力があるんですね。

中野:そうだね。ところで、この2台はエンジンのスペックが全く同じなんだけど、どう感じたかな?

平嶋:正直なところ、パワーの出方に違いは感じませんでした。とにかく、全域でスムーズな印象です。

中野:ツインだけど、低中速トルクがドンッ! とくるわけでもなくて、高回転までスムーズに回るよね。

平嶋:コーナーの立ち上がりで、ガッとスロットルを開けた時も、構える必要がないんですよね。どんなシチュエーションから開けた時でも、ショックや挙動の乱れを起こさずに、スムーズに加速してくれる。乗りやすくて良いコトなんですけど、もうちょっと刺激的でもいいかなぁ。

中野:トルク感とかパルス感とか……ビッグバイクらしさの演出として、欲しいところではあるかもね。けど、この優しさは美点だよね。2台とも、エンジンも車体も、どこまでも乗り手に優しく作られている。

Z650

積極的に曲げれる手の内にあるストリートファイター【中野真矢】

平嶋:優しいですよねぇ、ビギナーにも薦められます。普通二輪を経験せずに、大型二輪免許を取る人がいますよね? そういう人からオススメのバイクを聞かれた時、最初は普通二輪クラスから始めた方がいいよって言うようにしているんです。ビッグバイクって、重さとかパワーとか難しい面があるじゃないですか?

中野:そうだよね。

平嶋:でも、Ninja 650とZ650なら、ファーストバイクとして薦めてもいいかもって思います。

中野:何にでも使えるしね。ツーリングはラクだし、取り回しもいい。いろんな楽しみ方ができるから、自分の好みの方向性を見つけやすいかもしれないね。スポーツライディングだけを考えたら、少し物足りない部分はあるかな。サスペンションがソフトだから、ガツンとブレーキをかけるとフロントフォークが思った以上にダイブしちゃう。積極的に曲げていこうって時はネガに感じる部分。乗り心地は良いんだけどね。

平嶋:それは、中野さんみたいにマシンを振り回せる人だからですよ。ビギナーには、そんな乗り方をする人はいませんから(笑)。

中野:そうか(笑)。さて、この2台から愛車を選ぶとしたら、平嶋さんはどっちを選ぶ?

平嶋:う〜ん……、Z650です。

中野:アレ? Ninja 650の方が楽しく走れたと言っていたけど?

平嶋:基本的にネイキッドが好きですから。エンジンが見えるバイクが好きなんです。あと、マット系のボディカラーと、フレームの深い色合いのグリーンのコントラストがカッコイイじゃないですか?

「バイクは見た目も大事ですヨ!」と、ビジュアルにこだわる平嶋さん。カワサキの魂、ライムグリーンは好みでないそうだが、Z650のフレームに塗られた深いメタリックグリーンは高評価。「ダーク系マットカラーのボディとのコンタラストが鮮烈でカッコイイ!」

中野:僕はNinja 650かな。カウルがついてるし、高速道路で長距離走行をした時に、疲労度に違いが出ると思うし。

平嶋:あ、高速道路アリなら、私もNinja 650がいいです。

中野:ソコは大きな違いだよね。

平嶋:でも、中野さんがツーリングでの快適性を評価値に加えるようになるなんて……。新鮮です!

中野:これからは、ツーリング視点での評価を重要視します(笑)。その僕が考えるに、Ninja 650とZ650は、どちらもツーリングに最適なモデルです。そうですね、走行距離400kmの日帰りツーリングもラクにこなせるでしょう。

平嶋:距離短かっ!(笑)

ライディングポジションを比較

対談中、中野さんと平嶋さんが言及していた、Ninja 650とZ650のポジションを比較。微妙な差ではあるが、Z650の方が前傾度がキツいように見える。ハンドル位置の違い以上に、グリップ部分の絞り角と垂れ角の違いが、上半身の姿勢に大きく影響していると考えられる。また、シッティングポイントも若干異なる。これもハンドルの影響のようだ

(右)Ninja 650 KRT EDITION(左)Z650 
Ninja 650 KRT EDITIONZ650
エンジン水冷4ストローク並列2気筒DOHC4 バルブ
総排気量649cc
最高出力68ps/8000rpm
最大トルク6.4kgf・m/6700rpm
サスペンションFφ41mmテレスコピック正立フロントフォーク
Rホリゾンタルバックリンクリアサスペンション
ブレーキFφ300mmデュアルディスク+片押し2ポットキャリパー
Rφ220mmシングルディスク+片押し1ポットキャリパー
タイヤサイズF120/70ZR17
R160/60ZR17
全長×全幅×全高2055×740×1145mm2055×765×1065mm
ホイールベース1410mm
車両重量194kg189kg
燃料タンク容量15L
価格104万5000円101万2000円

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