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元MotoGPマシンエンジニア”ANDY”の整備講座/Pert01:必須工具の選び方

元HRCのエンジニアで、鈴鹿8耐に出場するライダーでもあるANDYがこれまでの整備やレースの経験で得てきた「本当に役立つ」メンテナンスに関わるアレコレをご紹介する新連載がスタート!

PHOTO/K.MASUDA TEXT/ANDY
【ANDY】
2級二輪整備士の資格を持ち、HRC時代はMotoGPマシンの開発にも携わった。現在はYouTubeチャンネル「MOTO-ACE Vlog」で役立つ情報を配信中

優先順位の高い工具から揃えるのがオススメ

もし、まだ何も工具を持っていないなら、アマゾンなどで売っている1万5000円程度のツールボックスに入った工具セットがオススメです。安いのに工具の種類が豊富で、収納しやすく、十分な耐久性があります。

バラで集めるより安くなるので、賢い買い物と言えます。一方、バラで揃える場合は、以下の「優先順位」を参考にしてください。

優先度が高い工具は4種類。メガネレンチ、両口スパナ、ドライバー、ヘックス(六角棒)レンチです。これらがあれば、初心者の方が消耗品を交換するならば十分と言えます。

メガネレンチは「緩める」作業を確実にこなす事ができるので必須です。開口部がある片口スパナで緩めようとすると失敗する可能性が一気に高まってしまいます。

次に優先度が高いのがソケットレンチ、ソケット、T字レンチです。ソケットは工具とスペースが節約でき、さまざまなハンドツールに対応できます。「ソケットの数×ハンドツールの数=整備の幅」と言えます。

ソケットレンチは最初に買うなら安価な物でいいので、差込角3/8インチの首振りタイプがいいです。

ソケットのサイズは8〜17mmに加え、アクスルシャフトに使われているサイズがあればOK。使用頻度が高い8、10、12mmはディープソケットもあるといいですね。

ソケット選びの注意点ですが、8〜19mmまでは3/8インチ、21mm以上は1/2で揃えたいところ。なので、差込角のサイズ変換アダプタ3/8→1/2インチがあると便利。

T字レンチはバイクに最適な「特殊工具」と言えます。クルマの場合はレンチを振るスペースがほとんどありませんが、バイクは使える箇所が多いです。サイズは8、10mmがあればOK。ソケットを差し替えられるタイプもあれば最強です。

使用頻度は低いですが、トルクレンチとスピーダーもあると便利。以上を揃えておけば、パッド交換やホイール脱着もできます。

「頻度は低い」と言いましたが、トルクレンチはブレーキ系、ハンドル系、液体関係、足まわりを整備するのであれば必須です。ボルト・ナットの締め付けが弱ければ緩み、強すぎれば破壊の恐れがあります。

トルクレンチはできれば2種類用意したいです。10〜40N・mを計測できる3/8サイズを1本、アクスルシャフトなどを締め付ける40〜140N・mを計測できる1/2サイズです。オススメは東日製で、「カチン!」と伝わるクリック感と音の質感が世界一心地いいです。

またメーカーに校正(正確に指定値で締められるかを計測)に出せるし、緩める作業にも使用できます。整備を頻繁に行う人ほどトルクレンチの精度は高めておきたいですね!

そして工具ではないですがエアゲージは必須です。安価な製品で精度に不安があるなら、信頼できるエアゲージ(バイクショップが所有する物など)と同じタイヤを計測し、その差を把握して自分で補正しましょう。

また、ツーリングなどの帰りに、最寄りのガソリンスタンドで指定空気圧よりも20kPa程度追加しておくと、次回出発する時に抜いて調整できるので、自宅に空気入れが無い方にオススメの方法です。

WRENCH

【メガネレンチをメインによく使うサイズを揃えたい】メガネは8/10、10/12、12/14mmの3本。片口スパナは8/10、12/14mmがあれば、よく使うサイズのボルト・ナットを締付けられる。余裕があればメガネの17/19mmを追加。片口スパナは有名ブランドがおすすめ。その理由は剛性が高くネジ頭をナメにくい
【メガネレンチをメインによく使うサイズを揃えたい】メガネは8/10、10/12、12/14mmの3本。片口スパナは8/10、12/14mmがあれば、よく使うサイズのボルト・ナットを締付けられる。余裕があればメガネの17/19mmを追加。片口スパナは有名ブランドがおすすめ。その理由は剛性が高くネジ頭をナメにくい

RATCHETHANDLE

【首振りタイプやスイベルタイプが便利】ヘッドの角度が変わり、作業の幅が広がる首振りタイプがおすすめ。ギア歯数が多いほど狭い場所で使いやすい反面、強度は劣る傾向。SK11製のハンドルは首振り+エクステンションが一体構造で、とてもオススメ。しかも安い! 差込角のサイズは3/8でOK

T WRENCH

【早回しに便利なハンドルも加えると作業性が高まる】よく使うのは8と10mmで、10mm固定とソケット差し替え式の2本があればDIYとしては十分。ラチェットに比べ作業スピードが早まるので、街のバイク屋さんからMotoGPメカニックまで幅広く愛用される。下のスピーダーハンドルも早回しに向く
【早回しに便利なハンドルも加えると作業性が高まる】よく使うのは8と10mmで、10mm固定とソケット差し替え式の2本があればDIYとしては十分。ラチェットに比べ作業スピードが早まるので、街のバイク屋さんからMotoGPメカニックまで幅広く愛用される。下のスピーダーハンドルも早回しに向く

SOCKET

【幅広いサイズを用意頻出サイズはディープ型も】必須は8~19mm。加えて愛車の前後アクスルシャフトの2サイズがあれば万全だ。ただし19mm以上は差込角のサイズが1/2になるため、要注意。60N・m以上のトルクを掛けると壊れてしまうので、できればラチェットハンドルも1/2に対応した物を用意したい
【幅広いサイズを用意頻出サイズはディープ型も】必須は8~19mm。加えて愛車の前後アクスルシャフトの2サイズがあれば万全だ。ただし19mm以上は差込角のサイズが1/2になるため、要注意。60N・m以上のトルクを掛けると壊れてしまうので、できればラチェットハンドルも1/2に対応した物を用意したい

HEX & TRX

【トルク管理したいボルトのサイズを揃えればOK】ヘックス(下)は4~10mmがあると便利。ただし出番は少ないので、L字のレンチセットがあればまずはOK。トルクレンチを使いたい箇所があるなら、そのサイズを購入しよう。トルクス(上)も同じで、トルク管理するサイズから揃えよう
【トルク管理したいボルトのサイズを揃えればOK】ヘックス(下)は4~10mmがあると便利。ただし出番は少ないので、L字のレンチセットがあればまずはOK。トルクレンチを使いたい箇所があるなら、そのサイズを購入しよう。トルクス(上)も同じで、トルク管理するサイズから揃えよう

AIR GAUGE

【安価な物でもOKだが取り扱いは丁寧】普段は安価な物でもいいが、しっかり整備するなら信頼できる製品を。オススメは最大目盛りが300~400Kpaの物。旭産業の製品はさまざまな有名ブランドにOEM供給をしていて信頼性抜群。ただし高価なのがネック
【安価な物でもOKだが取り扱いは丁寧】普段は安価な物でもいいが、しっかり整備するなら信頼できる製品を。オススメは最大目盛りが300~400Kpaの物。旭産業の製品はさまざまな有名ブランドにOEM供給をしていて信頼性抜群。ただし高価なのがネック

HEX WRENCH

【ボールジョイント付きのセットを買うのがオススメ】DIY整備の必須工具。オススメは長手側の先端がボール形状のもの。短手側で緩めた後、ボールを使うことで首振りが可能になるので、作業効率がアップします。ただしボール側で緩めたり、本締めするとナメるのでNG
【ボールジョイント付きのセットを買うのがオススメ】DIY整備の必須工具。オススメは長手側の先端がボール形状のもの。短手側で緩めた後、ボールを使うことで首振りが可能になるので、作業効率がアップします。ただしボール側で緩めたり、本締めするとナメるのでNG

JOINT

【奥まった箇所での整備性が向上する】エクステンションバーのオススメは、2段階でソケットを差込めるタイプ(写真左)で、浅く差すとソケットが首振りできる。ユニバーサルジョイント(同右)は、真っ直ぐ工具が差し込めない場合に出番となる
【奥まった箇所での整備性が向上する】エクステンションバーのオススメは、2段階でソケットを差込めるタイプ(写真左)で、浅く差すとソケットが首振りできる。ユニバーサルジョイント(同右)は、真っ直ぐ工具が差し込めない場合に出番となる

DRIVER

【使用箇所は少ないがドライバーは基本】バイクでは使用箇所が少なくなってきているが、絶対に揃えたい基本の工具。プラスは1~3番、マイナスは1~2番が最低限用意しておきたいサイズ。緩みにくいボルトに備えて8mmのメガネを併用できる物がオススメ!
【使用箇所は少ないがドライバーは基本】バイクでは使用箇所が少なくなってきているが、絶対に揃えたい基本の工具。プラスは1~3番、マイナスは1~2番が最低限用意しておきたいサイズ。緩みにくいボルトに備えて8mmのメガネを併用できる物がオススメ!

TORQUEWRENCH

【トルク管理は整備の要、できれば持っておきたい】ブレーキ、ハンドルなど重要保安部品を整備したい時に使う工具。バイクのボルトはM6以上のサイズが多いので、まず買うべきは10-40N・mが計測できる物。ブレーキ系、ステム系はだいたいこれ1本でOK
【トルク管理は整備の要、できれば持っておきたい】ブレーキ、ハンドルなど重要保安部品を整備したい時に使う工具。バイクのボルトはM6以上のサイズが多いので、まず買うべきは10-40N・mが計測できる物。ブレーキ系、ステム系はだいたいこれ1本でOK

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