モトコルセが製作したパニガーレV4Rのストリートファイターバージョン
スーパーバイク世界選手権で勝利を得るために開発された、ドゥカティ・パニガーレシリーズのホモロゲーションモデルとなるV4Rを、モトコルセがストリートファイター仕様にフルカスタムしたのがNVC V4だ。至宝のコンプリートモデルと、中野真矢さんが筑波サーキット・コース1000でライド!
狼の皮を脱ぎ捨てた……狼。NVC V4 Build by MOTO CORSE
前回でも紹介したモトコルセのNVC V4は、ドゥカティ市販車で最高レベルのポテンシャルを持つパニガーレV4Rを、サーキットに限定されることなく日常でも楽しめるようストリートファイター化。さらに前後サスペンションやブレーキ、ボディワークなど、現時点で考えられる最高の仕様に変更した、まさに“夢のような”バイクだ。
今回、元モトGPライダーの中野真矢さんが、これに試乗する機会を得た。 「いやあ、スゴい……」 これが、マシンを降りた中野さんの第一声。そのスパルタンな味わいに、思わず本音が漏れる。しかし、そこは百戦錬磨の中野さん。どんなマシンでも的確な分析は欠かさない。
「最初に乗ってみて、前後サスがだいぶハードで、自分の体重移動でうまく使える範囲内にないと感じたので、ちょっと調整してもらいました。自分がマシンに慣れたこともありますが、コーナーの進入で安心してブレーキを握れてリアタイヤのグリップも使えるようになり、そこからこのマシンが持つ本当のポテンシャルを垣間見ることができました」
最初は「使える回転域が広いので、そのトルクで気持ちよく走っていたのですが……」と言っていた中野さんだが、「1万4000rpmくらいまで上げてみたらトンデモなかった!」と笑う。 「しかも、本当は1万6500rpmがリミットらしいので、まだまだ上があるんですよ。ここから先は、ロングコースで楽しみたいですね。カウルを取り去りバーハンドル化されていますが、このマシンが纏っている香りは完全にレーサー寄りです」という印象を持ったようだ。
「レーシングマシンが市販車と圧倒的に違う部分は、走っているときの軽さ。このマシンにはカーボンセラミックブレーキディスクが使われていますが、一般的なステンレス製のディスクとはジャイロ効果がかなり異なるはず。このマシンが持つ軽さは、例えばこのディスクを使わなければ得られないものだと思います。切り返しのセクションでは『ああ、懐かしいな』とすら感じました」
ちなみに、気になる走りはじめのブレーキ性能だが、「最初にコースインしたときは、この仕様をすっかり忘れてしまったくらい、違和感なく効きました。もっとも、思い出してからしばらくは、念のため慎重に走りましたが」とのことだ。
試乗を終え、最後に中野さんはNVC V4をこのように称えた。「前後サスのセッティングにせよ、ライディングポジションにせよ、自分の理想に近づくためにはちょっと詰めが必要なマシン。でもそれを見つけたときに、本領を味わえるという快感を得られます。
はっきり言ってしまえば、簡単なバイクではありません。とにかく奥深い。やっぱり、これはレーシングマシンなんだと思います。それでいて、見た目はレーサーとはだいぶ違う。さすがに『羊の皮を被った……』と表現するにはイカツすぎますけど、そういうところが本当に魅力的だと思います」
レース仕様のオーリンズ製FGR300倒立フォークとブレンボ製ブレーキシステムに、モトコルセ・シコムのカーボンセラミックディスクを組み合わせたフロントまわり。超軽量なBST製の前後カーボンホイール(ラピッドテック)を履く
リアサスは、オーリンズ製のTTX36。油圧リモートスプリングプリロードアジャスターのリザーバータンクマウントなどは、モトコルセのオリジナルパーツとなる