SUPERVELOCE800の魅力をそのままに! 排ガス規制にも対応する純正2in1サイレンサー
レトロモダンなルックスとF3 800譲りのスポーツ性&電子制御を併せ持つスーパーヴェローチェ800。多様な魅力を持つこのモデルの純正アクセサリーに、クラシックスタイルのサイレンサーが登場。車体設計は左右出しマフラーに換装することを想定した設計で、完璧なまとまりをみせる。
乗りやすさそのまま、レトロ感を高める SUPERVELOCE800 2in1 Silencer by MV AGUSTA×FRESCO
レトロな外観とミドルスーパースポーツからほぼそのまま受け継いだ運動性能。昨秋に市販車の第一便が日本上陸を果たしたMVアグスタ・スーパーヴェローチェ800は、かつてMVアグスタが世界グランプリに送り込んだGPレーサーをモチーフにした、艶やかだが走りも磨かれた注目のニューモデルだ。
そんなスーパーヴェローチェ800のメーカー純正アクセサリーパーツに、この春から新たに加えられるのが「2in1」を名乗るスリップオンサイレンサー。バッフルの着脱とECUの変更により、公道とサーキットという2シーンに対応する。
MVアグスタジャパンによると、当初はサイレンサー単体を販売するつもりだったのに、本国で開発を進めるうちに性能をさらに向上したいという欲が生まれたようで、結果的に予定価格そのままでレーシングECUを同梱することになった……のだとか。
いかにも、芸術性だけでなく走りにも徹底的にこだわるMVアグスタらしい裏話だ。 欧州の加速騒音試験をパスし、純正ECUのままバッフルを装着した状態なら日本の公道も走れるスペックなのだが、サイレンサー装着車の試乗を担当した元モトGPライダーの中野真矢さんは、まずレーシングECU+バッフルなしの状態でコースイン。
迫力ある刺激的な並列3気筒サウンドをしばらく奏でてピットに戻ってきた中野さんは開口一番、「安心しました。僕が言うのは変かもしれませんが……」と笑った。
’66年、MVアグスタはWGP500㏄クラスに4ストの並列3気筒マシンを投入。ジャゴモ・アゴスチーニのライディングにより、’72年まで連続でシリーズタイトルを獲得した。バッフルを取り外したこのマフラーは、そんなレースシーンを想像させる音量だが、乗り味はレースイメージではないようだ。
「ルックスも排気音も、かなりレーシーなサイレンサーなので、もっと高回転域に振ったアグレッシブな仕様なのかと思っていました。昨年に初めて乗らせてもらったときから、スーパーヴェローチェは大好きなバイク。その長所がスポイルされていたら……と勝手に心配していたのですが、実際にはノーマルのエンジン特性を全体的に太くしたイメージで、乗りやすさはそのまま残されていたのでホッとしました」
さらに中野さんは、この仕様を上手に操るコツも教えてくれた。「レーシーな雰囲気なので意外かもしれませんが、高回転域で最後まで引っ張るより、気持ち早めにシフトアップしてあげるほうが、3気筒ならではの太いトルクを活かして車体が前にポンポン進み、最終的に加速が伸びる印象です」
とはいえ、やはり中野さんも一番注目したのは……。「いやあ、何より音がいいですよね。その気にさせてくれます。あとルックスもたまらないですよね。ノーマルの右側3連にもロマンのようなものを感じますが、こっちは輪切りの溶接ですから。さすがバイクでアートするメーカーです!」
次に中野さんが乗ったのは、レーシングECUのままバッフルを装着した仕様。この状態で公道走行は不可だが、音量は公道走行可能レベルにかなり近づく。「バッフルなしのときはコーナーの立ち上がりでややぼやけていた中回転域が、バッフルを装着するとよりリニアになった感じがあります。
といっても、バッフルなしの状態が悪かったわけではないです。逆に、立ち上がりでフロントが浮くような加速をしているときにグワッと来る力強さは、やっぱりバッフルなしのほうが上。どちらを取るか、これは悩ましいところ。いずれにしても、さすがメーカーが開発したキットという完成度の高さです!」
どちらの仕様で走るほうが好ましいかは、走るサーキットのレイアウトや音量規定、あるいはライダーのスキルなどで違ってきそうだ。熟成が続けられてきた並列3気筒エンジンがもたらすノーマルの扱いやすさをそのままに、’18年秋のEICMAで初披露されたコンセプトモデルや、その後に世界限定300台で発売されたセリエ・オロと同じような右側2本、左側1本のマフラーレイアウトに変更できるのは大きな魅力。
本数が左右逆で、集合されていなかったとはいえ、かつてのMVアグスタ3気筒GPマシンも、同じように黒いマフラーを車体の左右に備えていた。スーパーヴェローチェにとって、左右出しマフラーは必要不可欠な存在でもあるのだ。