ブレーキタッチにこだわればバイクはもっと楽しくなる!|気になるブレーキパッドを一斉インプレッション【DAYTONA/ENDLESS/RK JAPAN/VESRAH/ZCOO】
DAYTONA:すべてが中間的な性能で誰にでも扱いやすい
レバーに入力し始めてからフルブレーングに至るまで、制動力の立ち上がり方がフラット。非常にクセのないパッドです。温度依存性が低く、ブレーキング中に急激に制動力が立ち上がるようなことがありません。コントロールしやすいですね。
温度変化によって効き方やタッチが変わりにくいので、ブレーキへの負荷が比較的小さい小排気量車ではメリットが大きいでしょう。微妙なレバー操作に対して、制動力がリニアについてきますから。実際にミニバイクレースで愛用者が多いと聞いたこともあります。
フラットな特性の裏返しで、限界領域の制動力に物足りなさを感じる人がいるかもしれません。ブレーキングの〝奥〞で、ガツンと効くパッドを好む人は、〝ブレーキが効いている〞感覚に安心感を覚えていることが多いですが、その〝制動感〞と、実際にマシンを止める〝制動力〞は必ずしもシンクロしません。このパッド、制動感は弱目に感じるかもしれませんが、制動力はしっかりと確保されています。
問/デイトナ 0120-60-4955 https://www.daytona.co.jp/
ENDLESS:レバー入力が弱い段階でのコントロール性がピカイチ
コントロール性が、素晴らしいですね。特に、軽くレバーに指を当てるような、微妙な入力レベルのコントロール性は非常に優秀。
例えば、バイクをバンクさせた状態で、もう少しだけ車速を落としたい場面では、コントロールが難しい製品もあります。また、制動力の立ち上がり方が急なパッドでは、軽くブレーキをかけたつもりでもマシンが起きてしまうことも。
エンドレスのこのパッドなら、マシンの不要な挙動を出さずにスピードコントロールが可能でしょう。制動力の立ち上がり方もフラットで、レバー入力と制動力がリニアに連動しています。そこもコントロール性の高さのポイントです。もちろん、絶対的な制動力も高い。
気になるとしたら、温度依存性の問題なのか時折制動力に波が感じられたこと。ただ、非常に微妙な領域の話です。コントロール性の高さが生み出すアドバンテージは絶大です。ブレーキが苦手と感じている人なら、一度試してみて欲しいですね。
問/ワイルドハウス(館野商事) TEL03-3963-0852 https://www.wildhouse.jp/ エンドレスアドバンス TEL0267-68-6888 https://www.endless-sport.co.jp/
RK JAPAN:初期の立ち上がりが鋭くディスクへの食いつきも良好
初期から気持ち良く効くパッドですね。ブレーキの温度上昇を意識しなくても、気楽にブレーキングできます。そうした意味では、純正品のパッドに近いキャラクターですね。どんなシチュエーションでも効かせられるので、安全性と汎用性に優れています。ですが、当然純正よりRKの方が絶対的な制動力は高い。
ブレーキをリリースする時、ローターからパッドの離れ方にクセを感じます。レバー入力を減らし始めた時に、まだ制動力が残る傾向がある。グッと握り込んだ後のことですから、パッドとローターがかなり高温になっている時の症状です。低温時の制動力を重視した分、高温時に若干そういう傾向があるのかもしれません。
ただ、それは限界域の話ですし、かなりのハイペースでないと、気になることはないでしょう。純正パッドのフィーリングが好きな人が、初めて社外品にリプレイスするならば、丁度良いパッドだと思います。
問/アールケー・ジャパン 0120-127-254 https://mc.rk-japan.co.jp/
VESRAH:安定性に優れていてコントロール性の高さも◎
べスラのパッド全般に感じることなのですが、バックプレートがしっかりしているように思えます。具体的にはタッチにも〝シッカリ〞した感触がある。
パッドというと、摩擦材ばかりが注目されがちですが、バックプレートも大きな役割を果たしています。例えば、バックプレートが反っていたら、ローターとパッドの摩材が触れる面積が減ってしまいます。ピストンで押さえつけるので、最終的には摩材の全面がローターに当たるのですが、最大の制動力を発揮するまでにタイムラグが生じてしまう。制動力の立ち上がり方が不安定になったりもします。その点、ベスラのパッドは効き方が安定していて、硬めの〝シッカリ感〞のあるダイレクトなフィーリングです。
ZD-CTは基本的にストリート向けということで、初期制動が強めです。スーパーRJL XXはサーキット用というだけあり、ハードブレーキングを繰り返しての高温状態の時こそ、制動力もコントロール性も良好です。高温時のコントロール性は好印象ですね。ただ、走行ペースが遅くブレーキが温まらない低温時はZD-CTの方が扱いやすい。用途や走行ペースによって、使い分けたいですね。
問/ ベスラ TEL03-3356-2271 https://www.vesrah.co.jp/
ZCOO:制動も操作性も秀逸だがビギナーには難しいかも
制動力もコントロール性、どちらも申し分なく高い。ブレーキは、どうしても温度変化によって効力に変化が出てしまうものです。ジクーもその点に変わりはないのですが、制動力が変化する幅が小さい。長いストレートを走りきっての、ブレーキシステムが冷えた状態でのハードブレーキングでも、短いスパンでゴー&ストップが繰り返されるような、高温を保ったまたのブレーキングでも、同じようなフィーリングでレバーを握ることができます。
ネガティブに感じる部分は、ほぼありません。すべての性能が高い次元でバランスしています。ですが、ビギナーには難しいパッドかもしれません。誤解を恐れずに言えば、制動力が高過ぎるのです。パニック気味のブレーキングでは、転倒するとまではいかなくても、マシンの挙動を乱す可能性は大きい。ある程度以上のライディングスキルとサーキットでの経験があり、タイムを削りたい、レースでもっと上を走りたいと考えている人にお勧めしたいですね。
腕に覚えのある、上級者向けのパッドだと思います。使いこなせるのなら、強力な武器になります。
問/ 岡田商事 TEL03-5473-0374 http://www.okada-corp.com/
まとめ:ブレーキパッドは自分の感性に従って選ぶ
ブレーキパッドは、市販車をレーシングマシン化する時に、最初に変えるパーツのひとつです。スーパースポーツであっても、市販車である以上は一般公道での走行は無視できません。ブレーキパッドに関しては、ストリートで多用する速度域で性能を発揮するタイプが選ばれていることが多いのです。
リッタークラスのスーパースポーツでレースを走ると、300km/hからのフルブレーキングが必要になります。市販車に純正装着されているパッドでは限界性能が足りません。限界領域での絶対制動力とコントロール性が求められます。逆に低速域での性能は無視できます。レースは速く走ることが目的ですから。
自分がレースでの使用を考えた時、ブレーキパッドを選ぶ基準は、スペックや他人の評価ではなく「自分のフィーリングに合うか否か」です。レバーへの入力に対し欲しい制動力があるか? 欲しいコントロール性を発揮するか? を考えます。これは、あくまで感覚的なものです。
マシンのセットアップを進める時、「タイムは出るけれど、乗りにくいセット」「タイムは遅いが乗りやすいセット」があった場合は後者を選びます。乗りやすい方が思い切ったトライができますし、伸び代があると考えているからです。ブレーキパッド選びも同じで、自分が乗りやすいかを重視しています。
これはサーキットをファンライドする皆さんでも同じ。自分が気持ち良く走れることが一番大切です。パーツを変えて、その違いを体験するのって楽しいですよね? ブレーキパッドは、バイクパーツの中では安価な方ですし、いろいろ試して自分好みのパッドをみつけてください。
気をつけて欲しいのは、交換作業や整備。ブレーキは公道を走るバイクであれば、作業者に資格が必要な重要保安部品ですから。まずは安全最優先、その上でブレーキパッド選びを楽しんでください。
(高田速人)