【元MotoGPマシンエンジニア”ANDY”の整備講座】ユーザー車検を受ける前の点検ポイント

元HRCのエンジニアで、鈴鹿8耐に出場したライダーでもあるANDYが、これまでの整備やレースの経験で得てきた「本当に役立つ」メンテナンスに関わるアレコレをご紹介。今回が最終回です!
PHOTO/K.MASUDA TEXT/ANDY

ユーザー車検を受ける前の点検ポイント
DIY整備の終着地点と言ってもいい車検整備です。車検と聞くとハードルが一気に上がる気がしますが、日常点検など、この連載で紹介した整備を行っていれば難しくありません。これを機にユーザー車検にトライして欲しいと思います。
ユーザー車検のメリットは2つ。低コストと合格の達成感! 国の厳しい検査をパスした後に発行される、新しい車検証とステッカーを受け取った時の喜びはひとしおです。
整備を始める前に3枚の書類を確認してください。車検証、自賠責保険証、自動車税納税証明書です。車検証と自賠責はありますよね? しかし、毎年来る自動車税の支払証明書は無くしがち。
自賠責と納税証明書の再発行は陸運局でできず、手間が掛かります。まずこれら3枚の書類を準備してください。他の書類は車検場で入手できるので心配ありません。
ユーザー車検の必要書類 | |
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車検証 | 納税証明書 |
自賠責保険証 | 車検のネット予約番号 |
次に費用です。詳細は下の表を見てください。法定費用はおよそ1万5000円です。これに交換部品代がかかりますが、お店に出した場合は6万円以上かかることが多いと思います。
この差額は魅力的ですよね(とはいえ、車検項目以外も点検してくれるお店もあるので、車検をお店に依頼するのもメリットがあります)。
ユーザー車検にかかる費用 | |
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自賠責保険料 | 8760円 |
自動車重量税(250cc以上) | 3800円~ |
印紙代 | 1800円 |
合計 | 1万4360円+交換部品代 |
車検前の点検整備は日常点検で行う「ネンオシャ」が基本。車検日を目安とし、オイルは1年ごと、ブレーキフルードは2年ごと、LLC(クーラント)は5年ごとの交換がオススメです。特にフルードは劣化すると不純物を生成して小さな穴が詰まってしまいます。こうなるとオーバーホールが必要になり出費がかさむので、2年ごとの交換が安心です。
点検後は車両の空気圧を純正指定、ガソリンはタンクの1/2、サスペンションは標準セッティングにします。これはヘッドライトの光軸を計測する時の車両姿勢を合わせるためです(合格率アップ)。SS系などで本来2人乗りとなっている場合は、シングルシートカウルは外してタンデムシートに戻してください。また、フェンダーレスキットを装着して全長が3㎝以上短くなった場合は、車検時に構造変更を同時に受ける必要がありますので注意してください。
マフラーを交換している場合は、排ガスレポートの提示、政府認証プレート、近接排気騒音試験のクリアが条件となります。年式によって大きく検査内容と条件が異なるので詳しくは私のブログをご覧ください。
車両の準備が終わったら国交省のネット予約ページから検査を予約します。この時忘れてはいけないのは予約番号の下4桁です。当日必要なのでメモしておきましょう。
最も不合格になりやすいのは光軸検査です。バイクの場合、転倒や立ちゴケでライトまわりをぶつけてしまうと光軸が狂うことがあります。自分で最高光度点を見つけたり、壁に照射して調整するのはかなり難しいです。そこで検査場近くのテスター屋さんに持ち込み、チェックしてもらうことをオススメします。価格は1500円前後。調整後に不合格となった場合の再調整は無料です。
ここまできたら車検の80%は終わったと言えますね。
当日揃える書類は3枚で、自動車検査票、重量税納付書、申請書です。任意の点検整備記録簿は「別表7」を使って記入&提出してください。現在は印鑑不要になったので、持って行かなくてOK。どの車検場も記入方法の見本が設置されていますし、窓口で丁寧に教えてくれますので心配ありません。
書類審査を通過したら「◯番レーンに並んでください」と言われて書類が返却されます。すべての書類を持って検査ラインに並んでください。検査官に「初めてなので一緒にお願いします」と言えば、機器の取り扱いを教えてくれるので安心です。
ユーザー車検を受ける前の点検ポイント
ブレーキ
パッド残量、フルード残量と色、レバー支点のグリス状況を点検します。パッド残量はヘックスレンチの厚みを利用して計測すれば簡単。フルードは黄色みが増したら交換、レバーグリスは車検ごとに塗り直します。

タイヤ
LED灯火器は1個の球切れでも不合格になります。光軸は、車検場の近くに二輪対応のテスター屋さんがあれば、そこで計測と調整をしてもらうのが最もコスパが良いです。再検査を含めて1日に3回まで受検できます。

ヘッドライト
LED灯火器は1個の球切れでも不合格になります。光軸は、車検場の近くに二輪対応のテスター屋さんがあれば、そこで計測と調整をしてもらうのが最もコスパが良いです。再検査を含めて1日に3回まで受検できます。

1mと10mの地点で最も明るい点のズレを計測
自分で光軸を確認する方法です。まず壁から1mと10m離れた2カ所からヘッドライトを照射します。それぞれ最も明るい点を確認し、2カ所でどれだけズレているかを計測。
ズレが基準内ならOKです。計測はハイビームで行います。

左右のズレ | 27cm以内 |
上方向のズレ | 10cm以内 |
下方向のズレ | 地上からヘッドライトまでの距離× 20%以内(もし距離が100cmなら20cm) |
ウインカー
ウインカーには点滅回数が60 ~ 120回/分の基準内であればOK。LEDウインカーの場合は「E」マークが刻印されていれば面積要件は無し。Eマークが無い場合は7cm²以上&10~60wでなければなりません。

チェーン
チェーンの張りはスプロケット間のセンターで計測して基準値(20 ~ 25mm程度)に合わせます。
張りはチェーンがキンク(固着)していたらグリス切れのサインなので交換です。

エンジン
エンジンオイル量、冷却水量、汚れ、液体漏れの有無を確認。オイルなどの液体漏れは車検に通りません。
滲んでいる場合はキレイに拭き取って下さい。エンジン型式の打刻位置も確認。

マフラー
純正なら基本的に問題ありません。社外マフラーに変えている場合は排ガスレポート提出が必須(年式による)。
近接排気騒音計測は試験官の指示に従ってエンジン回転数を合わせて下さい。

タンデムベルト or グリップ
乗車定員2人の場合、タンデムグリップorタンデムベルトのどちらかの装備が必須です。
シングルシートカウルではNGになる場合があります。2→1人へ定員変更する方法もあります。

不合格になった場合は?
※期日を過ぎたらトランポに積載するか、仮ナンバーを交付して再受検
不合格の場合、当日2回まで再検査を受けられます。日を跨ぐ場合は 「限定自動車検査証」を発行してもらいます。15日以内なら不合格部 分の検査+1500円の手数料、15日を超える場合は全検査やり直し +1800円の手数料がかかります