“操舵” と“衝撃吸収” で常識を覆すハブセンターステアリング その構造に迫る
熟成と革新で普遍に挑む 究極の拘りが生む絶対的な趣味性 HUB CENTER STEERING フロントサスの“操舵” と“衝撃吸収”の機能を切り離し、もっとも効率的なテレスコピックフォークと決別はすることでライディングの常識をも書き換えてしまった!?
そもそも“ハブセンターステア”ってどんな構造なの?
一見どうやって前輪を左右に切るのか分からないハブセンターステア。また、テレスコピックフォークとの機能的な違いとは? その基本的な機構と設計の狙いを解説しよう。
TOPIC_1 スイングアーム機構でショックを吸収する
多くのリアサスペンションと同様の“スイングアーム”で前輪を保持するのが大きな特徴で、テレスコピックフォークのような摺動抵抗や、ブレーキングやバンク時の荷重による“たわみ”が無く非常に高剛性。写真のTESI-3Dはシンプルなカンチレバー式だが、リンク機構を介してショックユニットを装着するタイプも存在する(TESI-1Dや2D、ヴァイルスなど) 。スイングアーム幅によって、前輪の切れ角が制限される欠点はあるが(取り回しやUターン時)、通常走行にはまったく問題ない。
TOPIC_2 リンク機構で前輪とハンドルを接続
衝撃吸収機構と操舵機構を分離するため、リンクとロッドを用いて回転→直線→回転……の経路を経て、ハンドルと前輪ハブのステーを繋げている。とはいえ、車体が傾くことで前輪に舵角が付いて曲がる“セルフステア”の仕組み自体はテレスコピックと同じなので、ハンドルに力を入れるのはNG。ちなみに左右の前輪アクスル軸のステーから車体に伸びる2本のロッドは、スイングアームのストロークに対してステアリング軸の角度(キャスター角)を保持するための並行リンクだ。
TOPIC_3 ステアリングの軸はホイールハブの内部にある
テレスコピックフォークの場合、メインフレームの前端に位置してフォークの三つ又を支える“ステアリング軸”は、ハブセンターステアリングではアクスル軸(下図の緑色部分)から角度(いわゆるキャスター角)をつけて伸び(同・桃色の軸)、前輪ハブ(同・灰色)内部の中心にベアリングを介して固定される(そのため“ハブセンターステアリング”と呼ぶ)。ハブは回転せず、大径ベアリングを介したホイールが回転する。TESI-3Dの場合、ハブ左側の上部にハンドルに繋がるステーを配置する。
ハンドルを右に切った時
ハンドルを左に切った時
TOPIC_4 ブレーキ時のノーズダイブを抑えながら路面の凹凸に追従できる
テレスコピックフォークはブレーキをかけると、減速Gと釣り合う位置までフォークが縮んで(ノーズダイブ)車体姿勢が大きく変化する。さらにブレーキで縮んだフォークは、基本的に路面の凹凸に対して(追従)伸縮できない。しかしハブセンターステアリングは、ブレーキに対してほとんどノーズダイブしない上に、ブレーキング中でも路面の凹凸に追従できるため、車体姿勢やハンドリングの安定度が格段に高い。ゆえにコーナーへのアプローチやライン取りの自由度も大きい。