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超話題の400cc4気筒を中野真矢が吟味!【KAWASAKI Ninja ZX-4RR KRT EDITION&Ninja ZX-4R SE】

“ヨンヒャク”がここまで話題になるなんて、いつ以来の出来事だろうか……。レプリカ世代には“どストライク”で、現代の若年層にはほぼ“未知”の領域。幅広い年齢層から間違いなく支持を集めるであろうNinja ZX-4Rシリーズがデビューした。そのサーキット試乗会では、中野真矢さんも珍しくラップタイムを気にするほど熱中!!

マシンコントロールを学ぶためのちょうど良い教材になる

日本では’20年9月に発売が開始されたNinja ZX-25Rシリーズは、250㏄クラスでは久々の4気筒エンジン搭載車として人気を集めてきた。今年4月発売の’23年型では初の改良を受け、最高出力が45→48㎰に高められつつ、最新排ガス規制に適合。さらに、SFF-BPフロントフォークにプリロードアジャスターを追加、ウインカーのLED化、4・3インチフルカラーメーターの新採用などが施された。そしてこの熟成は、基本的に共通の車体を採用しつつ、よりエキサイティングな走りを求めたNinja ZX-4Rシリーズを展開するための布石でもあった。 

Ninja ZX-4Rシリーズは、今年2月1日に欧州と北米で先行発表され、翌月の大阪・東京モーターサイクルショーではNinja ZX-4RRのみ日本初公開された。2月の段階では「’23年秋に向けて国内導入準備中」とアナウンスされていたが、実際には秋を待つことなく、7月15日に発売が開始された。 

日本で展開されるのは2タイプで、最上級版となるNinja ZX-4RRは、リアショックがフルアジャスタブルのショーワ製BFRCライトになっているのが最大の特徴。対してNinja ZX-4R SEは、リアショックこそ簡素だが、スモークウインドシールドやUSB電源ソケット、フレームスライダーが標準装備だ。 

そのメディア向け試乗会は、7月中旬に実施された。舞台は、本誌が主催しているライディングパーティ(通称ライパ)の〝ホームコース〞でもある、千葉県房総半島の袖ケ浦フォレスト・レースウェイ。今回の試乗を担当した元MotoGPライダーの中野真矢さんにとっても、熟知しているコースのひとつだ。ただし気温は34℃、路面温度は55℃(いずれも2本目走行時)と、晴天ながらかなり過酷なコンディション。走行時間はライパと同じ1枠15分で、休憩を挟みながら3回連続でNinja ZX-4RRを走らせ、最後にSEに1回乗った。

「最近は、ミドルクラス以下だとツインまたはシングルエンジンばかり。Ninja ZX-25Rを除けば、ここまで高回転が使えるバイクに乗る機会があまりないので、深く考えずコースインした最初の1周は早めにシフトアップしていて、『まあこんなものか……』なんて思ってのですが、実際にはまだまだ高回転域に使える余地が残されていました。メーターのレッドゾーンは16000rpmからで、実際にはそのほんのちょっと手前でレブリミッターが効く感じ。とくに力強さを発揮するのは12000~16000rpmで、ここをなるべくキープして走りました」 

Ninja ZX-4RRによる1本目の走行後、中野さんはファーストインプレッションをこのように語った。ただしこの段階では、まだ掴み切れていない部分も……。例えば中野さんは、以下のように言及している。

「エンジンに対するフィーリングは、初めてNinja ZX-25Rに乗ったときと同じような感じではあるのですが、25Rはパワーバンドを外すとコーナー立ち上がりの加速が厳しいのに対して、排気量が増えたNinja ZX-4RRはトルクがあるので、多少であれば回転数が落ちても立ち上がりで十分に加速していきます。そのため、逆に『2速か、3速か……』と悩むコーナーもあり、ここはもう少し検証が必要です」 

コーナーで使用するギアに対する悩みは、「意外と1〜4速あたりのギア比が離れ気味で……」ということも影響しているようだ。

一方で、車体に関するファーストインプレッションも気になるところ。ちなみに、25Rの’23 年型国内向けはSE仕様のみとなり、Ninja ZX-4RとNinja-25RのSE同士で比較すると車重は6kg増。これは、フロントブレーキのダブルディスク化と、パワーユニットの違いによるところが大きい。細かいところでは、前後タイヤのワンサイズアップも影響しているだろう。

とはいえ中野さんは、「バランスで考えたら、車重は増えているとはいえ4Rのほうが好印象」という。

「Ninja ZX-25Rは車体が勝っている感じで、イメージとしては600㏄の車体に250㏄のエンジン。対してNinja ZX-4RRは、車体とエンジンがちょうどいいバランスに感じられます」 

高張力鋼製トレリスフレームと外装類は、基本的にZX-25R用と同じ。25Rが’23 年型で熟成された際にリア側エンジンマウント周辺の縦剛性を強化して、ZX-4Rの馬力や重量により最適化しているとのこと
高張力鋼製トレリスフレームと外装類は、基本的にNinja ZX-25R用と同じ。Ninja ZX-25Rが’23 年型で熟成された際にリア側エンジンマウント周辺の縦剛性を強化して、Ninja ZX-4Rの馬力や重量により最適化しているとのこと
Ninja ZX-25Rに対してボア/ストロークともに拡大され、57.0×39.1mmに設定された、ショートストローク仕様の399cc水冷直列4気筒エンジンを搭載。最高出力は同クラスの量産市販車では史上最高値となる77psで、ラムエア加圧時は80psに達すると発表されている
Ninja ZX-25Rに対してボア/ストロークともに拡大され、57.0×39.1mmに設定された、ショートストローク仕様の399cc水冷直列4気筒エンジンを搭載。最高出力は同クラスの量産市販車では史上最高値となる77psで、ラムエア加圧時は80psに達すると発表されている
開発責任者を務めた成岡翔平さんや、テストライダーとして車体を担当した野崎浩司さんなど、Ninja ZX-25Rの開発にも携わってきたメンバーが多数。若い感性を持つ開発スタッフこそが、現在のカワサキが持つ“勢い”の源流なのだ

なおNinja ZX-4Rシリーズは、左側ハンドルスイッチの操作でライディングモードをスポーツ/ロード/レイン/ライダーの4タイプから選択可能で、パワーモード(フルまたはロー)とトラクションコントロール(3段階+オフ)が連動して切り替わる。スポーツはフルパワーでトラコン介入度1、ロードはフルパワーでトラコン介入度2、レインはローパワーでトラコン介入度3、そしてライダーはトラコンオフを含む任意の設定をインプットしておける。

1本目の走行を中野さんはロードでスタートしたが、サーキットだとトラコンの介入が多すぎるという判断から、すぐスポーツに変更。ライダーモードにはフルパワー&トラコンオフを事前にセットしておいたが、「スポーツでもトラコンが介入するシーンは多くないし、400㏄でそれなりのトルクもあるので、保険という意味でもトラコンオフはなし」という判断から、2本目以降もすべて、スポーツのみで走行した。その2本目、中野さんはNinja ZX-4RRに対する理解度をより深めてピットに戻ってきた。まずエンジンに関しては、「12000以上というほどシビアにならなくても、10000rpm以上なら十分」と分析。この結果、ギアの選択に余裕ができた。 

じつは今回、車両にはGPSデータロガーのデジスパイスを搭載。ベストタイムは、1本目の1分18秒台から、2本目では約1秒短縮された。「でも、この異常に上昇した気温と路面温度のせいで、タイヤが滑り始めてしまいました。1本目の走行では、フロントサスの入りが若干早く、コーナー進入ではフロントブレーキのかけ始めを少し注意し、フロントサスを落ち着かせてからバンクさせるように心がけていました。しかし2本目では、進入の段階でタイヤが滑り、フロントサスもに入ってしまい、残念ながら思うように攻め込むことはできませんでした。またコーナーの立ち上がりでは、1本目はほとんど感じなかったトラコンの介入が非常に多くなりました」 

ただしこれは、標準装着されているダンロップ製のスポーツマックスGPR-300が悪いということではない。中野さんも「このコンディションでタイヤの評価をするのはかわいそう」と言及している。 

ちなみにGPSデータロガーの解析によると、1本目と比べて2本目のほうがワイドなライン取りなっているコーナーが多いが、そのぶんボトムスピードは上昇。最終コーナーでは3速が使えるようになり、結果的にホームストレートエンドでマークされる最高速も4km/hほどアップして169km/hになった。 

KAWASAKI Ninja ZX-4RR KRT EDITION
KAWASAKI Ninja ZX-4RR KRT EDITION
ZX-4RRは、クリア仕様のウインドシールドを標準装備。車体色は、スーパーバイク世界選手権のワークスマシンレプリカとなるKRTエディションのみの設定
Ninja ZX-4RRは、クリア仕様のウインドシールドを標準装備。車体色は、スーパーバイク世界選手権のワークスマシンレプリカとなるKRTエディションのみの設定
ZX-4RRは、ZX-10Rと同タイプとなるSHOWA製のBFRC-liteリアショックを採用。プリロードの無段階調整に加え、伸圧減衰力のセッティングも可能だ
Ninja ZX-4RRは、Ninja ZX-10Rと同タイプとなるSHOWA製のBFRC-liteリアショックを採用。プリロードの無段階調整に加え、伸圧減衰力のセッティングも可能だ

Ninja ZX-4RRでの3本目の走行は、タイヤコンディションを考慮してデータロガーは搭載せず、中野さんが左手側スイッチ操作により手動でタイム計測した。Ninja ZX-4Rシリーズはメーター表示をサーキットモードに変更すると、ラップタイマーを使えるのだ。手動計測の最速タイムは1分17秒台フラット。

「タイヤやサスに負荷をかけないよう、かなりソフトな走りを心がけたのですが、攻めたときと優しく操縦したときでタイムがほとんど変わらないので、今日の条件だとこのあたりが壁かも」と、中野さんは分析している。 

そして4本目は、SEに試乗した。走行性能に関わる4RRとの違いはリアショックで、SEはベーシックな仕様だが、「トラクションのかかり方が自然で、出荷状態でサーキットを走るなら意外にもSEのほうが好印象」と中野さん。とはいえNinja ZX-4RRのリアショックはフルアジャスタブルなので、「サーキットで遊ぶ機会が多いなら、Ninja ZX-4RRのほうがメリットは多そう」とのことだ。

25Rと同じく4RのSE仕様も、スモークウインドシールドを採用。テールカウル内部にはUSB電源ソケットも搭載されている。車体色は2タイプをラインナップ
Ninja ZX-25Rと同じくNinja ZX-4RのSE仕様も、スモークウインドシールドを採用。テールカウル内部にはUSB電源ソケットも搭載されている。車体色は2タイプをラインナップ
リアショックのレイアウトは、ZX-10Rと同様のホリゾンタルバックリンク式。SEのリアショックはベーシックグレードで、プリロードのみ5段階に調整できる
リアショックのレイアウトは、Ninja ZX-10Rと同様のホリゾンタルバックリンク式。SEのリアショックはベーシックグレードで、プリロードのみ5段階に調整できる
SE仕様のエンジン両サイドには、いまやカスタムの定番となりつつあるフレームスライダーを標準装備。万が一の転倒時に、衝撃を吸収または受け流す
SE仕様のエンジン両サイドには、いまやカスタムの定番となりつつあるフレームスライダーを標準装備。万が一の転倒時に、衝撃を吸収または受け流す

今回は他の参加者と交替で車両を使用する試乗会だったので、前後サスペンションのセッティングはストック状態から一度も変更せず。さらに、前後タイヤも出荷状態でのライディングとなった。そのため中野さんは、このように予想している。

「フレームそのものにはまだまだ余裕があるので、もう少し涼しい時期に、前後タイヤをよりハイグリップな仕様に換装したら、1分15秒台はマークできそうなパッケージ。そこから前後サスのセットを調整したら、もっと上を目指せると思います」 

そして日本国内でもすでに多くの注目を集めているNinja ZX-4Rシリーズについて、このようにまとめた。「ライパでは『速いがエライじゃない』というスローガンを掲げていますが、このバイクだとついラップタイムにも着目してしまいます。

というのもNinja ZX-4Rが〝速すぎない〞という点においてちょうどいいレベルにあるから。真夏の過酷なコンディションでも、より上手に操るためのトライをする気になるし、600㏄以上のスーパースポーツと比べたら、そのときのヒヤヒヤ感もリスクも少なめです。かといって、25Rほどナメてスロットルを開けられるわけでもないし、車重が軽いから雑に操作するとすぐに挙動を乱します。そういう部分に難しさがあります。

だから、スポーツライディングを学ぶ教材として、かなりオススメ。250㏄クラスと600㏄クラスの間を埋めるモデルにもなってくれるし、その存在意義はかなり大きいと思います」

海外市場には、装備が簡素化されたベーシックなZX-4RやSE仕様のKRTエディションカラーもあるが、日本で展開されるのはZX-4RRのKRTエディションと、車体色が黒×灰または青×黒のZX-4R SEとなる
海外市場には、装備が簡素化されたベーシックなNinja ZX-4RRNinja ZX-4R SE仕様のKRTエディションカラーもあるが、日本で展開されるのはNinja ZX-4RRのKRTエディションのライムグリーン×エボニーと、車体色がメタリックフラットスパークブラック×メタリックマットグラフェンスチールグレーまたはキャンディプラズマブルー×メタリックフラットスパークブラックのNinja ZX-4R SEとなる

Ninja ZX-4RR KRT EDITION&Ninja ZX-4R SE共通装備

外装類や燃料タンク、バックミラーや燃料タンクなどのデザインも、基本的には’23 年型の25Rと同じ。SFF-BPは右側のみにプリロードアジャスターを備える
外装類や燃料タンク、バックミラーや燃料タンクなどのデザインも、基本的には’23 年型の25Rと同じ。SFF-BPは右側のみにプリロードアジャスターを備える
さすがにウイングレットは装備しないが、サイドフェアリングにはエンジンまわりに走行風を取り入れるエアダクトが設けられ、アグレッシブな雰囲気を高める
さすがにウイングレットは装備しないが、サイドフェアリングにはエンジンまわりに走行風を取り入れるエアダクトが設けられ、アグレッシブな雰囲気を高める
25Rは’23年型の熟成時に、マフラーがオーソドックスな車体右側配置となった。4Rのマフラーレイアウトはこれを踏襲するが、サイレンサーは少し長い
Ninja ZX-25Rは’23年型の熟成時に、マフラーがオーソドックスな車体右側配置となった。Ninja ZX-4Rのマフラーレイアウトはこれを踏襲するが、サイレンサーは少し長い
ノーマルとサーキット(写真/手動ラップタイマー機能付き)に表示モードを切り替えられる4.3インチTFTカラーメーターを搭載。背景色を白と黒から選べる
ノーマルとサーキット(写真/手動ラップタイマー機能付き)に表示モードを切り替えられる4.3インチTFTカラーメーターを搭載。背景色を白と黒から選べる
4Rシリーズのうち日本に導入されるRRとSEは、シフトアップ&ダウンの双方向に対応するオートブリッパー機能付きのクイックシフターを標準装備する
Ninja ZX-4Rシリーズのうち日本に導入されるRRとSEは、シフトアップ&ダウンの双方向に対応するオートブリッパー機能付きのクイックシフターを標準装備する
前ブレーキはダブルディスク式で、ディスク径は25Rより20mm小径のφ290mm。倒立フォークはSHOWA製SFFBP仕様で、プリロードは無段階調整
前ブレーキはダブルディスク式で、ディスク径はNinja ZX-25Rより20mm小径のφ290mm。倒立フォークはSHOWA製SFFBP仕様で、プリロードは無段階調整
エンジン水冷4ストローク並列4気筒DOHC4 バルブ
総排気量399cc
ボア×ストローク57.0×39.1mm
最高出力77(ラムエア加圧時:80)ps/14500rpm
最大トルク4.0kgf・m/13000rpm
変速機6速
サスペンションFSHOWA製φ37mm倒立フォークSFF-BP
RSHOWA製BFRC-liteフルアジャスタブルモノショック(プリロード調整付きモノショック)
ブレーキF4ピストンラジアルマウントモノブロックキャリパー&φ290mmダブルディスク
Rφ220mmシングルディスク
タイヤサイズF120/70ZR17
R160/60ZR17
全長×全幅×全高1990×765×1110mm
ホイールベース1380mm
シート高800mm
車両重量189(190)kg
燃料タンク容量15L
価格115万5000(112万2000)円
※( )内はNinja ZX-4R SE

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