【スズキ GSX-8R×青木宣篤】MotoGPテクノロジーを感じる「しっかり作りこまれたエンジン」

Special Short Impression SUZUKI GSX-8R
走り始めてすぐに、エンジンのフリクション(摩擦)の少なさを感じた。スムーズな加速感が気持ちいい。この感覚は、私がかつてテストで走らせたスズキのMotoGPマシン・GSX-RRに通じる。MotoGPマシンのエンジン開発において、スズキはパワーアップと同じぐらいフリクションロス低減を重視していたのだ。
せっかくのパワーも、ムービングパーツの摩擦でロスしてはもったいない。実直なスズキらしい開発姿勢は、かつてのMotoGPマシンからこのGSX-8Rまで一貫している。
エンジン特性は全域フラットトルクで、実に扱いやすい。「扱いやすさ」という言葉は、パワーが控えめなバイクの言い訳のように使われることも少なくないが、GSX-8Rの場合は「真の扱いやすさ」だ。
フリクション低減のように地味で手間のかかる開発を行い、生真面目に作り込まれた成果としての「扱いやすさ」は、スロットルワークに対する呼応の具合ですぐに分かる。GSX-8Rの「扱いやすさ」は本物だ。

ハンドリングはどっしりと落ち着いている。攻め込んでも分かりやすい形で限界を示すから、安心だ。ルックスこそ今どきの派手さだが、走りはあくまで真面目である。
四輪界の出来事を思い出す。大艦巨砲主義的ハイパフォーマンスカーが跋扈したʼ90年代初頭に、颯爽と現れたライトウエイトスポーツカー。走りの本質を磨き、ベテランも唸らせたドライバビリティは、日本の車造りに大きな影響を残したと思う。
GSX-8Rにも、同じような資質を感じる。エンジン、車体とも丹念に作り込まれ、細部まで妥協していない。無理なく扱えて、誰もがライディングを楽しめる。「GSX」に「R」を冠しながらも、今の世に溶け込むGSX-8R。ライディングの本質が分かるライダーにこそ選んでほしい。このバイクを選んだなら、遅かれ早かれライディングに目覚めるはずだ。
(青木宣篤)
SUZUKI GSX-8R





| エンジン | 水冷4ストローク直列2 気筒DOHC4 バルブ |
| 総排気量 | 775cc |
| ボア×ストローク | 84.0×70.0mm |
| 圧縮比 | 12.8:1 |
| 最高出力 | 80ps/8500rpm |
| 最大トルク | 7.7kgf・m/6800rpm |
| 変速機 | 6段 |
| クラッチ | 湿式多板コイルスプリング |
| フレーム | ダイヤモンド |
| キャスター/トレール | 25°/104mm |
| サスペンションF | SHOWA製φ41mm倒立フォークSFF-BP |
| R | リンク式モノショックサスペンション |
| ブレーキF | ニッシン製4ピストンラ ジアルマウントキャリパー+ダブルディスク |
| R | ニッシン製1ピストンキャリパー+シングルディスク |
| タイヤサイズF | 120/70ZR17 |
| R | 180/55ZR17 |
| 全長×全幅×全高 | 2115×770×1135mm |
| ホイールベース | 1465mm |
| シート高 | 810mm |
| 車両重量 | 205kg |
| 燃料タンク容量 | 14L |
| 価格 | 114万4000円 |



