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バイクをもっと面白く!第1回 幅広く「バイク遊び」を提案したい

原田哲也さんが大いに語る バイクのこと、これからのこと 聞き手── 実業之日本社社主 白井一成 本誌ならびに姉妹紙 BikeJIN、クラブハーレーのエグゼクティブ・アドバイザーに就任いただいた原田哲也さん。 世界チャンピオンを獲得した生粋のレーシングライダーでありながら、根っからのバイク好きだ。エグゼクティブ・アドバイザーに就任した理由も「より多くの方に、長く、楽しくバイクに乗ってもらいたいから」だと語る。

原田哲也さん
’92年に全日本ロードレース250ccクラスでチャンピオンを獲得し、翌’93年には参戦初年度の世界グランプリ250ccクラスでチャンピオンとなった。以降もGPのトップライダーとして活躍。’02年に現役を引退し、現在はさまざまな形でバイクの楽しさを伝え続けている


白井 このほど、原田さんには弊社のバイク雑誌3誌、ライダースクラブ、培倶人、そしてクラブハーレーのエグゼクティブ・アドバイザーにご就任いただきました。
今後とも二輪業界の発展のためにぜひお力添えいただきたいと思っております。よろしくお願いいたします。
原田 こちらこそよろしくお願いいたします。僕などは微力ですが、何かお役に立てればいいなと思っています。
白井 原田さんとの出会いは、本誌主催のサーキット走行会、ライディングパーティでしたよね。原田さんの走りは、さすがのクールデビルでした(笑)。
でもお話すると非常にソフトなお人柄で、とても素敵でスマートな方だと思いました。
原田 もっと言ってください(笑)。
白井 バイクレース全盛期に青春時代を過ごした私にとっては、ヒーローですからね。雲の上の存在です。しかも現役時代はクールな走りと振る舞いで恐れられていた方。
「原田さんは怖いよ」とおっしゃる人もいたのでちょっと緊張していましたが、実際にお会いしたらすごく気さくに接していただいて、とてもうれしかったのを覚えています。
そして驚かされたのは、原田さんが私より2つしか年上ではなかったこと。テレビや雑誌で憧れていたヒーローが、自分とほとんど同年代だったことにはビックリしました。
つまり、私などはまだ何者でもなかった若いうちから、原田さんはすでにトップライダーとして活躍して、世の中に大きな影響力を持っていらした。そして影響を与え続けて早30年以上経っている。これは私などが社会に出てからと比べても、10年以上キャリアが長いことになります。本当に素晴らしいことです。
原田 いえいえ、子供の頃からバイクが好きで、乗り続けていたらこうなった、というだけですよ(笑)。
でも、現役を終えてしばらくは、バイクを見るのもイヤだったんです。カッコよく言わせてもらえれば、やり尽くしたんですよ。もうバイクを見るのもイヤなぐらい、やれるだけのことはやり切った。
実際に10年ほどバイクに乗ることはなかったんですが、ある時、住んでいるヨーロッパで自転車に乗っていたら、バイクのツーリンググループにサーッと抜かれたんですよね。その時に、「ああ、バイクも気持ち良さそうだなあ」と思い、趣味としてバイクに乗り始めたんです。
バイクに乗るにあたっては、奥さんのアドバイスもあって、自分がお世話になったバイク業界に少しでも恩返しができたらいいな、と。
僕がグランプリを戦い続けられたのは、やはりバイクが楽しかったからです。皆さんはレースをするわけではないと思いますが、バイクの楽しさを知っていただきたいんです。楽しければ、より長く、バイクに乗り続けてもらえるのではないか。
だからバイクを使ったいろんな遊びのスタイルを提案していきたいと思っていますし、安全に乗ってもらうために僕のレース経験も役に立つのではないか、と考えています。
白井 そのあたりのお話こそが、私が原田さんにエグゼクティブ・アドバイザー就任をお願いした理由とリンクしてきます。
こういうと失礼かもしれませんが、原田さんとお話させていただいていると「非常に知的な方だな」という印象を受けるんです。世の中のことを大づかみして、サッと理解するスマートさをお持ちでいらっしゃる。クールデビルと呼ばれるにふさわしい冷静で分析的なスタイルは、これからのメディアやバイク業界のあり方を考えていくうえでも非常に重要だと思っています。
そしてもうひとつ大切なのは、原田さんがいつもおっしゃる「皆さんとバイクで遊びたい」というソフトな表現の仕方ですね。
いくら頭のいい方でも、それを表に出しすぎると上から目線になりがちです。しかし原田さんは自分の考えをナチュラルに、優しく、そして易しい言葉で伝えることができる。これはコミュニケーション能力の高さだと思うんです。
私も日本のバイク業界を盛り上げたい。そのためには原田さんのような方のお力が必要なんですよ。
原田 もっと言ってください(笑)。まぁ、過去に世界チャンピオンを獲得はしましたが、根っこはただのバイク好きなんですよ。
今年の春、日本で過ごしていた間は、コロナの影響で多くの仕事がキャンセルになってしまったこともあって、週に5日はバイクに乗っていましたからね。さすがに疲れるんですが、それでもまた乗る(笑)。
でも、白井さんもかなりのバイク好きですよね(笑)。この春もプライベートでオフロードコースに誘っていただいたり林道に行ったりして、ずいぶんバイクで一緒に遊ばせてもらいました。
白井 林道ツーリングの途中、広場のような場所でゆっくり過ごした時間は最高でしたね!
原田 最高でした。ただひとつ失敗したのは、お弁当を持って行けばよかったな、と(笑)。
白井 あそこでゴザか何か敷いてお弁当を食べたら、さぞおいしかったでしょうね!
泊まりのツーリングだったら、お酒でも飲んで語り明かすような雰囲気でした(笑)。
原田 そんな夜を過ごしたら最高に楽しいに決まっていますよね(笑)。僕が「バイクでのいろんな遊び方を提案したい」と言っているのは、こういうことなんです。
例えばですが、サーキット走行会の夜にキャンプをする、なんて楽しそうじゃありませんか? 夜、お酒を飲みながらみんなでバイクの話をしたら盛り上がるだろうな、と。
白井 原田さんの現役時代のマル秘話を聞きながら……。
原田 そうですね。僕、お酒が入ると結構いろいろしゃべっちゃうんですよ(笑)。
昔のグランプリの話なら、いくらでもネタがありますし。そして翌日は林道ツーリング、なんてことができたら最高ですよね。

「バイクの楽しさは幅広く奥が深い。どんなバイクに乗っても発見がある」と原田さん。カテゴリーに囚われない自由な発想がバイク遊びを豊かにする、と考えている


白井 本誌ではサーキット走行会・ライディングパーティを主催していますし、姉妹誌の培倶人ではキャンプを積極的に誌面展開しています。ライダースクラブと培倶人、クラブハーレーをうまく連携させれば、面白いことができそうですね。
原田 3誌がコラボレーションすることでより幅広いバイクの楽しみ方、遊び方が提案できるんじゃないかと思っているんです。
バイクって、カテゴリーによって楽しみ方が違うし、仲間も違います。だからといって、自分が普段乗っているバイクのカテゴリーの遊びだけっていうのはもったいない。
違いはあっても、皆さんバイクが好きという思いは共通していますからね。提案の仕方次第で、もっともっとバイクを楽しんでもらえるはずなんですよ。
白井 そこは私たちメディアが抱えている大きな課題かもしれませんね。
課題という点では、バイク業界は全体的に高齢化が進んでいます。若い人たちにどのようにアプローチしていくべきかも、真剣に考えなくてはならない大きな問題です。若いライダーが減っているというのは、日本だけの傾向なのでしょうか?
原田 いえ、残念ながらヨーロッパでも若いライダーはどんどん減っているんです。僕らの頃って、バイクしか面白いことがなかったから乗っていましたが、今の子たちはバイク以外にも面白いことがたくさんあるんですよ。スマホなんかその最たるものですよね。だからバイクになかなか興味を持ってくれない。
そして、バイクはやはりお金のかかる趣味だ、ということも大きく影響していると思います。日本では普通自動二輪免許を取るために教習所に通えば15万円近くかかります。さらにヘルメットなどの装具を買って、バイクを買い、保険に加入して……となると、100万円近く必要になってくる。コスト面のハードルがかなり高いんですよね。
そういったコストをかけても、それを上回る楽しさがあるのがバイクです。僕たちとしては、やはりどれだけバイクが楽しく遊べる乗り物であるかを若い人たちに見せ続けるしかないと思うんです。お金をかけなくても、小排気量のバイクでも、いくらでも楽しむ方法がありますしね。
もちろん、安全に乗ってもらうことも大切です。僕はレース活動の中でたくさんの怖い思い、痛い思いをしてきました。そういった経験の中から、正しい乗り方、正しくない乗り方が、人よりちょっと分かっているつもりです。このあたりをしっかり伝えることも、若い人たちに長くバイクに乗ってもらうためには大切かな、と。
白井 二輪メディアが果たすべき役割はまだまだありそうですね。
原田 ええ。エグゼクティブ・アドバイザーという立場を仰せつかって、主にイベントを監修していくつもりですが、誌面作りでもお役に立てることがあれば、と考えています。
白井 ぜひいろいろと教えていただけるとありがたいです。]]>

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