【青木宣篤のコア・ライテク】バイクをきちんと操れる体へ
![](https://ridersclub-web.jp/wp-content/uploads/2024/04/main.jpg)
スポーツライディングは、「スポーツ」を名乗る通り、フィジカルが重要だ。自分の体をコントロールできてこそ、バイクも意のままに操ることが可能になる。さあ、踏み出そう。健全な肉体がもたらす、健全なライディングの世界へ!
もっとうまく、もっと速くその思いがこの体を作った
青木宣篤、52歳。ただひたすら「もっとうまく、もっと速くなりたい」と思い続け、バイクコントロールの質を高めるための努力を重ねていたら、いつしかこの体になっていた。自分は天才肌ではない。努力型だ。走りのためにできることを、日々、コツコツと積み上げることでしか、高い領域には辿り着けない。体がたるめば、走りもたるんでしまう。
スポーツライディングは筋肉に多くの動作を求める
ことあるごとに筋肉写真を掲載してきたこの企画だが、ついに全身の筋肉を披露するに至った。私も今年で52歳。まずまず保てているのではないかと思う。
……などと筋肉自慢をしたいから写真を載せているわけでない。スポーツライディングにおいて、体作りは不可欠だと知ってほしいのだ。バイク乗りの多くは、ラクが好きなはずだ。ラクに、楽しく移動できるからこそ、バイクに乗る。
「なのになぜ体作りなんんだ!」と納得できない方がいるかもしれない。
しかしライダースクラブ読者諸兄なら、向上心を持ってバイクに乗っている方が多いはずだ。スポーツライディングにおける向上とは、基本的にペースアップを意味する。そしてペースが上がるにつれて、うまく走らせるために必要な入力の値は大きくなる。
【上腕筋+腕橈骨筋】減速Gに耐えつつ前輪に伝えるための…
![腕にはふたつの機能が。減速Gに耐えることと、その力を余すことなく前輪に伝えることだ。なおかつ指先はブレーキレバーを握りつつ離し、コントロールする必要がある](https://ridersclub-web.jp/wp-content/uploads/2024/04/05_086A0627.jpg)
【腹筋+背筋】フォームを作り、Gに耐えるための…
![ライディングフォームについて語られる時、しばしば「腹筋に力を入れよ」と言われる。だが同時に背筋も意識しなければ、走りながらフォームを微調整することができない](https://ridersclub-web.jp/wp-content/uploads/2024/04/04_086A6348.jpg)
簡単に言えば、より強い力でバイクを操作しなければならない。速度が上がればエネルギー量も増える、という物理法則からは、決して逃れることはできない。
「でも、ライテク記事などではよく『力を抜け』と書いてあるじゃないか」
というご意見もあるだろう。しかし、実は力を抜くことはかなりの上級テクニックだ。いったんは力を入れられるようになった人が、それが当たり前になった結果として、必要に応じて力を抜けるようになるのだ。まずは力を入れることを覚えるのは、他のあらゆるスポーツと同じである。
![しっかりニーグリップするために、内モモの内転筋をギュッと引き絞る。まず全力での下半身“パワーホールド”を覚え、徐々に中殿筋を使ってホールド度合いをコントロール](https://ridersclub-web.jp/wp-content/uploads/2024/04/06_086A0604.jpg)
【内転筋+中殿筋】下半身“パワーホールド”するための…
しっかりニーグリップするために、内モモの内転筋をギュッと引き絞る。まず全力での下半身“パワーホールド”を覚え、徐々に中殿筋を使ってホールド度合いをコントロール![ハンドルは肩から押し込むようにして操作するため、肩の筋肉である三角筋 と、肩甲骨を内転・回旋させるなどの役割を果たす僧帽筋が重要。ただ押すだけではなく、引く動作も意識する](https://ridersclub-web.jp/wp-content/uploads/2024/04/07_086A6785.jpg)
【三角筋+僧帽筋】ハンドルをしっかり操作するための…
ハンドルは肩から押し込むようにして操作するため、肩の筋肉である三角筋 と、肩甲骨を内転・回旋させるなどの役割を果たす僧帽筋が重要。ただ押すだけではなく、引く動作も意識するだからと言って、筋肉ムキムキになる必要はない。MotoGPライダーもかなりのトレーニングを積んでいるが、ゴリマッチョ系はおらず、基本的には細マッチョだ。
これはスポーツライディングの特性によるものだろう。バイクの上で同じ姿勢を保つ時間が長いから筋持久力が必要で、外からのGに耐えつつ大きく体を動かし、力を込めて操作し、なおかつ繊細さも求められる。
例えばブレーキ操作ひとつとっても、減速によって腕にGがかかり、それに耐えながら指先は握りつつ離すというコントロールが必要だ。1方向に力を入れればいいわけではない複雑さで、筋力だけでは不足だ。大切なのは、筋肉を脳からの指令通りに動かすこと。バイクをコントロールするより前に、自分の体を意のままに操れることが重要なのだ。
だからこそ、ライディングはスポーツになり得る。
基本はプランク
![体幹トレーニングの基本。両ヒジを床に着け、頭からかかとまで一直線になる姿勢をキープ。全身の筋肉に刺激を与えられ、インナーマッスルや背筋にも効く。難かしければ、写真のようにヒザを着いてもいい](https://ridersclub-web.jp/wp-content/uploads/2024/04/12ex_086A6243-1.jpg)
どれぐらいの力が必要かを知る
![これはトレーニングというより肘ロックの重要性を知るための動作。腕立て伏せの格好になると、腕を突っ張っていた方が体を支えやすいことが分かる](https://ridersclub-web.jp/wp-content/uploads/2024/04/10_086A6251.jpg)
![肘を曲げた状態で体を支え続けるのは、かなりキツイ。ブレーキング時は減速Gにより体重以上の力が一定以上の時間にわたって加わる。肘ロックが必須](https://ridersclub-web.jp/wp-content/uploads/2024/04/11_086A6256.jpg)
腹筋を鍛えるアブドミナルクランチ
![マシンを使うことも多いアブドミナルクランチだが、自重でも十分。ヒザと股関節を90度に曲げた状態で、ゆっくりとおへそを覗き込むように。頭を戻す時もゆっくりと。キツければ、足を着けていてもいい](https://ridersclub-web.jp/wp-content/uploads/2024/04/18_086A6316.jpg)
![マシンを使うことも多いアブドミナルクランチだが、自重でも十分。ヒザと股関節を90度に曲げた状態で、ゆっくりとおへそを覗き込むように。頭を戻す時もゆっくりと。キツければ、足を着けていてもいい](https://ridersclub-web.jp/wp-content/uploads/2024/04/20_086A6320.jpg)
ツーポイント・プランクは腰痛軽減にも
![対角線上の片手片足だけで体を支えて姿勢をキープするツーポイント・プランクは上級者向け。さらに浮かせた片手片足を左右に振ると強度が増す。お尻の筋肉にも効くうえ、姿勢を整えるので腰痛軽減にも効果があるとされる](https://ridersclub-web.jp/wp-content/uploads/2024/04/14_086A6290-1.jpg)
インナーマッスルに効くアームレッグクロスレイズ
![よつんばいになり、右手・左足または左手・右足の組み合わせで手足を床と並行に持ち上げ、姿勢をキープ。ゆっくりとヒジとヒザを引きつけ、左右を入れ替える。腹筋とインナーマッスルにかなり効く高強度トレーニング](https://ridersclub-web.jp/wp-content/uploads/2024/04/21_086A6267-1.jpg)
![よつんばいになり、右手・左足または左手・右足の組み合わせで手足を床と並行に持ち上げ、姿勢をキープ。ゆっくりとヒジとヒザを引きつけ、左右を入れ替える。腹筋とインナーマッスルにかなり効く高強度トレーニング](https://ridersclub-web.jp/wp-content/uploads/2024/04/23_086A6259.jpg)
インナーマッスルに効くアームレッグクロスレイズ
まずは手軽に、内モモをギュウッと締めるだけでも内転筋が発動し始める。ボールを挟むのも効果的だ。意識してほしいのはお尻外側の中殿筋との連動。締めつつ緩めることで、ニーグリップ力をコントロールできるランや自転車もライディングのプラスに
![走ることは、あらゆるスポーツの基本中の基本。スポーツライディング中は心拍数が180bpm前後にまで高まる。その状態で物事を考え、正確な判断操作をしなければならないのだから、心肺機能を鍛えておくのは最低条件とも言える](https://ridersclub-web.jp/wp-content/uploads/2024/04/24_086A6667.jpg)
![ヒザや足首などの関節に負担をかけずに心肺機能を鍛えられるトレーニングとして人気なのが自転車(ロードバイク)だ。同じ二輪ということもあり、バイク乗りでも楽しめるうえに、腰回りの薄い筋肉など、スポーツライディングに必要な部位が鍛えられる](https://ridersclub-web.jp/wp-content/uploads/2024/04/25_086A6807.jpg)
筋肉を肥大させるのではなく適切に連携させることが重要
HRCのトレーニングに混ぜてもらったのは、17歳の時だ。田中先生という方に「筋肉に神経を通しなさい」と言われたが、まったく意味が分からなかった(笑)。
35年近く前のことだ。トレーニング自体も、ラン、ウエイトトレーニング、そしてスイムといった程度。ライディング向けの方法論が確立していたわけではなかった。
しかし田中先生の「筋肉に神経を通す」という言葉がどうにも引っかかる。自分なりにコツコツと調べながら、時間をかけてトレーニング内容を変えていった。気付けばトレーニングおたくになっていた(笑)。
基本的には心肺機能向上や筋肉肥大を目的としていたのだが、いわゆる体幹トレーニングに辿り着き、「あ! ライディングに必要なのはコレだ」と気付いたのは7、8年前、40代も半ばになってからだ。衝撃的な変革だった。
ライディングにおいて、ある程度の筋力はもちろん必要だ。しかしあまり筋力が高まりすぎると、バイクを押さえすぎてしまい、曲がらなくなってくる。
私のライディング理論では能動的なハンドル操作を重視しているが、車体を起こす際にはセルフステアを利用する。しかし過剰な筋力は、セルフステアを阻害してしまうのだ。体幹トレーニングを始めてからは、筋肉同士のつながりや釣り合い方を意識するようになった。
例えばニーグリップは、太モモを閉じるだけではなく、加減を調整するために開くことも必要だ。太モモを閉じる動作は、太モモ内側の内転筋が、太モモを外側に開く動作は中殿筋(お尻の外側の筋肉)が使われる。つまりニーグリップを有効に機能させるためには、内モモとお尻の両方を鍛える必要がある。
ライディングは繊細なコントロールのために、常に反対の動作が求められる。ブレーキレバーも、握るだけではなく、離す方向の動作をしてこそ微調整でる。万事この調子で、主動作に対して反動作が必須なのだ。
これが、田中先生の「筋肉に神経を通す」の真意だったのではないだろうか。サーキットをスポーツ走行し、「もっとうまくなりたい!」「もっと速くなりたい!」と願うなら、ぜひ筋肉を意識してほしいと思う。
バイクを意識的かつ的確にコントロールするには、まず自分の体をコントロールできなければ話が始まらない。まさに「筋肉に神経を通し」、意のままに筋肉を動かす。そのために体幹トレーニングが非常に有効なのだ。バイクで健康増進するぐらいのノリで、気軽に取り組んでほしい。
最後にひとつだけ。老いには決して抗えない。目や反射神経の衰えはどうにもできないのだ。無理をしないことも肝要だ。
![](https://ridersclub-web.jp/wp-content/uploads/2024/04/28_086A6484.jpg)
開催場所 ソネットフィットネス 群馬県前橋市大友町2-6-1 ソネットビル2F 詳細 http://sonnette.biz/fitness/