青木宣篤のアドバンスド・ライディングテクニック【非セルフステアの世界:Part4】
ライディングテクニックの金科玉条として語られる、セルフステア。バイクが旋回する際にハンドルが勝手に切れるこの特性は、バイクに乗るにあたって絶対的に守るべき現象とされている。ライダーは、セルフステアを妨げないようにするべきだ、と。だが、ある速度域を超えると、セルフステアは弊害を起こし始める。高速域には、セルフステアを押さえ込む「非セルフステア」の世界があるのだ。いったいどのような世界なのだろうか?
【CAUTION】※プロフェッショナルレーシングライダーによる高度なテクニックを紹介しています。読み物として楽しむに留めていただき、くれぐれも実践はなさらないようにご注意ください。
ハンドルへの入力はバリエーション豊かに
ここまで、分かりやすく「イン側のハンドルを押す」という説明の仕方に終始してきましたが、実はハンドルへの入力方法には多くのバリエーションがあります。
分かりやすいものを並べてみましたが、それだけでも「押す」「押し込む」「引く」「引き上げる」と4つの方法があります。
なお、「押す」「押し込む」という動作はイン側のハンドルに対して行うもので、「引く」「引き上げる」という動作はアウト側のハンドルに対して行うものです。
右コーナーではブレーキ&アクセル操作とハンドル操作をすべて右手で行うことになり、慣れるまでは大変です。ですので、左ハンドルを引く、あるいは引き上げるという操作を行い、同じ効果を得ています。
さて、冒頭からの繰り返しになりますが、「非セルフステア」とはセルフステアを否定するものではありません。そうではなく、バイクなりのセルフステア任せにせず、自分から積極的にハンドル操作をする、という姿勢を示しています。
特にサーキット走行は速度域が高いため、自分から積極的にバイクに対して働きかけ、意思を伝える必要が出てきます。その中でもハンドルは、バイクを操るうえでもっとも効果を発揮するアイテム。せっかく装着されているのですから、使わない手はありません。
「意のままにバイクを操る」という喜びは、あなたの手が握っているそのハンドルの中に潜んでいます。