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スポーツライテクQ&A【ライディングフォーム編】|中野真矢が一発回答!

サーキットでのスポーツライディングに初挑戦、あるいは継続的に楽しんでいると、ライダーのスキルや経験値などに応じて、さまざまな“疑問”や“悩み”が湧いてくる。それらをひとつずつ確実に解決していくことが、きっと最終的な上達につながるはず。そこで中野真矢さんに、迷えるライダーたちの助けになるアドバイスをもらった!!

【中野真矢】
レーサー現役時代はヤマハ、カワサキ、ホンダのマシンでMotoGPフル参戦。カワサキワークスだった’06年のダッチTTで、自己最高位の2位を獲得した。現在は二輪アパレルブランドの56designを主宰する
PHOTO/S.MAYUMI TEXT/T.TAMIYA
取材協力/スズキ 70120-402-253 https://www1.suzuki.co.jp/motor/
デジスパイス TEL048-699-7521 https://dig-spice.com/jp/

総合的な知識の獲得でより楽しく、より安全に!

本誌のライテク企画では、これまで何度も、ライン取りやブレーキングやステップワーク……というように、サーキット走行に必要な技術をテーマ別にレクチャーしてきました。 

しかし実際のスポーツライディングでは、それらのうちどれかが上手ならそれでOKというわけではありません。例えば、「ブレーキングがうまくできないから狙ったラインをトレースできない」とか「ステップワークが苦手だからコーナリングのきっかけがつかめない」というように、バイクの操縦はさまざまな要素がリンクしているからです。

そこで今回は、これまでの総集編的に、一般ライダーが疑問に感じやすい項目について、あらためて解説することにしました。通して読んでいただくことで、スポーツライディングに対する理解度をより深めていただければと思います。もちろん、中にはこれまで取り上げていなかった内容も含まれています! 

これからプロライダーを目指すような若い子たちなら、とにかく走り込んでカラダで覚える……なんてことも有効かもしれませんが、大人の趣味としてサーキット走行を楽しむなら、頭で考えながら乗ることが大切。知識というテクニックを活用して、安全に楽しくスキルアップを目指しましょう!

 (中野真矢)

Q1:直線で前傾姿勢になりにくい……

A:着座位置を後ろに下げてみよう!

レーサーが直線区間で伏せるのは、空気抵抗を減らすため。頭をなるべく低い位置にしたいので、結果的にお尻がシートからやや浮いた姿勢になることもあります。ファンライドではそこまで極端にやる必要はないですが、ある程度は伏せたほうが走りにリズムが生まれます。着座位置が前すぎると、お腹が燃料タンクにつっかえ、腕も窮屈になりがちで、うまく伏せられません。最低でも、タンク後端と股間の間に拳1個分のスペースを!

車体の大きさなどに合わせて着座位置を調整しよう
車体の大きさなどに合わせて着座位置を調整しよう

Q2:コーナリングのフォームが上手くできません!

A :まずは直線のフォームのまま横にズレてみよう

コーナリングフォームがうまくイメージできないなら、サイドスタンドを立てたバイクの上でまずは正しい直線でのフォームをつくり、そこから座る位置を左側の真横にズラしてみましょう。最大にズラした場合でも、お尻の割れ目がシートの端にあるくらいのイメージ。仲間に車体を支えてもらうと、より安全に練習できます。

Q3:コーナー進入で腰をズラすタイミングは?

A:第一段階はブレーキ同時に

プロライダーは、次にやるべき操作の準備をしっかりやっています。これはブレーキングからコーナリングにかけても同様。コースレイアウトにもよりますが、ストレートエンドで減速してタイトコーナーに進入するなら、ブレーキング初期の段階でイン側に少し腰をズラしています。そして、そこからフルバンクに移行するとき、完全なハングオフに。

Q4:ヒザを出すのは真横? 斜め前?

A:斜め横、前方に出すイメージ

腰の位置に対してヒザが真横だと、極端に股を広げたいわゆる“ムリヒザ”に……。やや前方に突き出すイメージのほうがいいと思います。ちなみにビギナーの中には、逆に自分で想像しているよりも実際には足が開いていない人もいます。イン側のステップを土踏まずではなく母指球あたりで踏むと、しっかり足を開けますよ!

Q5:旋回中に身体をホールドするのが難しい……

A:アウト側の足の使い方が重要

旋回中は、腕の力ではなく下半身と腹筋&背筋で身体を支えるのが基本。しかしハングオフの場合はイン側の足を開いているので、両足でのニーグリップはできません。そこで大切になるのが、外足での燃料タンクホールド。アウト側の足の内ヒザから内腿の中央あたりをタンク後端付近に密着させ、内転筋で身体の重さを支えます。直線と同じく、着座位置が前すぎると、スペースの余裕がなくこのフォームができません。ステップ位置が下方または前方のバイクは、母指球あたりでステップを踏むと、ホールドしやすい姿勢を探りやすくなりますよ。

Q6:ネイキッドはサーキット走行に向かない?

A:安心感が高く、乗り方次第でスポーティに

大半のネイキッドはバーハンドルを採用していて、スーパースポーツと比べてアップライトです。結果的に、視野を広めに確保しやすく、安心感につながります。前後サスペンションはよく動く傾向なので、低速コーナーでは扱いやすく感じる人も多いはずです。ただし、ネイキッドを何も考えずに操っていると、スーパースポーツと同じようには走れません。走りをスーパースポーツに“寄せていく”ことが必要です。

Q7:スーパースポーツのポジションがキツいのはなぜ?

A:速く走ることが最大の目的だから

スーパースポーツでも、市販車の多くは公道走行を考慮した設計が施されているとはいえ、とくに各社のフラッグシップモデルは、「レースで勝つ」とか「速く走る」ことがその大きな存在意義。旋回や加速や制動のポテンシャルが高く、ライダーが体重移動しやすく、空力特性にも優れた設計を突き詰めた結果、ポジションはキツくなりがちです。ちなみにMotoGPマシンは、市販車以上にスパルタンです!

快適性より速さを重視! キツいのは仕方ない……

Q8:コーナリングで安心感がほしい

A:上半身を低くして、バイクと一体に!

上半身を低く構えることで、ライダーがマシンに近づくためマスが集中し、重心位置も下がるので、コーナリング時の安定感が高まります。昔は「コーナーには肩から入れ」と言われていたようですが、現在は頭を車体の中心に残さずイン側にズラすフォームが主流なので、アゴをイン側の手の甲に近づけるイメージで、上半身を全体的に下げましょう。

Q9:プロのフォームをマネして良い?

A:カッコいいフォームは練習になる!

一般ライダーも、プロレーサーのフォームを真似するのはオススメ。とくに、着座位置や頭の位置は参考にしやすいと思います。ちなみに現役時代の僕が、ライバルながら美しいフォームだと思っていたのは故・加藤大治郎さん。近年では’15~’16年の鈴鹿8耐にポル・エスパルガロ選手が参戦したときに、現代的なMotoGPスタイルに刺激を受けました。

Q10:MotoGPライダーが足を出すのはなぜ?

A:バイクの挙動で姿勢を乱さないため

いまだに諸説あって、絶対的な正解を回答するのが難しいのですが、自分の感覚としては、進入でイン側の足を出すことで、後輪がスライドしたときに車体の挙動に引きずられることなく、ライダーが車体の中心にいられます。足をどのあたりに出すかでも効果は変わるのですが、いずれにせよ荷重をコントロールしていると考えてください。

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