1. HOME
  2. テクニック
  3. スポーツライテクQ&A【ブレーキング編】|中野真矢が一発回答!

スポーツライテクQ&A【ブレーキング編】|中野真矢が一発回答!

当然ながら、しっかり減速できなければ、その手前で速度を上げることも、その先で適正なスピードでコーナリングすることもできない。各操作がリンクするライテクの中でも、ブレーキングはとくに重要な項目なのだ

【中野真矢】
レーサー現役時代はヤマハ、カワサキ、ホンダのマシンでMotoGPフル参戦。カワサキワークスだった’06年のダッチTTで、自己最高位の2位を獲得した。現在は二輪アパレルブランドの56designを主宰する
PHOTO/S.MAYUMI TEXT/T.TAMIYA
取材協力/スズキ 70120-402-253 https://www1.suzuki.co.jp/motor/
デジスパイス TEL048-699-7521 https://dig-spice.com/jp/

Q1:シフトダウンのブリッピングって必要?

A:近年のモデルなら基本的にやらないが……

ミドルクラス以上だと、近年はシフトダウンにも対応するオートブリッピング機能付きクイックシフターを搭載した車種も多く、その場合は基本的に、回転数を合わせるのはバイク任せで、シフトペダルを踏む操作のみでギアを下げて問題ナシ。ただし2→1速のダウンはエンジンブレーキが強いので、僕は状況に応じて半クラッチで力を逃がします。

Q2:ブレーキレバーはコーナーのどこで放す?

A:最大バンク直前まで微妙に入力を続ける

コーナーの形状などでブレーキのリリースポイントは異なりますが、直線の先にタイトターンがある単純なレイアウトを想定するなら、まず減速のためのブレーキングは車体直立状態でほぼ終わらせます。そこから、ブレーキ入力は10~20%に弱めつつも継続してフロントフォークが縮んだ状態を保ち、車体を寝かせて曲げる地点に“寄せる”イメージ。そして、ブレーキリリースをきっかけにフルバンクさせて一次旋回開始!

Q3:シフトダウンはいつ始める?

A:ブレーキとほぼ同時に開始

最初のシフトダウンは、ブレーキング開始直後で問題ナシ。そもそもサーキットビギナーの場合、減速やコーナリングでエンジンブレーキが有効に使えてない(=ギアが高すぎる)ことも多いと感じます。例えば減速時は、後輪がロックしない程度の適度なシフトダウンで、効果的なエンジンブレーキを引き出しましょう。

Q4:減速Gは体のどこで支える?

A:腕をつっかえ棒にして支えるのがオススメ

なぜか「ライディング時は絶対に腕の力を抜かなければいけない」と勘違いしている人もいるようですが、ブレーキング時に腕の力を使わなければ、減速Gで前のめりになろうとする上半身の重さを支え切れません。力を入れると言ってもグリップをギュッと握るということではなく、肘の関節をやや伸ばしつつロックして、腕を突っ張り棒のように使うイメージ。もちろん内ヒザや内腿でのタンクホールドなど、減速時は下半身でも身体を支えます。

Q5:減速Gは体のどこで支える?

A:強いブレーキは直立状態で終わらせる

路面やタイヤ、サスペンションの性能などで、どこまでブレーキレバーを強く握っても大丈夫かは変化しますが、マシンが直立している状態なら、タイヤが持つグリップ力を前後方向のみに使えるので、ある程度までのハードブレーキングが許容される傾向。正しいブレーキ操作で、フロントタイヤを路面に押し付けて潰し、接地面を広げてあげるイメージを持つことも大切です。

Q6:リアブレーキも使べき?

A:使うと姿勢が安定して制動距離も短くなる

サーキット走行では、減速のためのブレーキはフロントが主役。こちらの技術を磨くことが優先です。ただし上級者は、リアブレーキを補助的に活用することで、より積極的にマシンをコントロールしています。制動力アップや減速時の車体姿勢調整、旋回時の微妙な減速や荷重移動、立ち上がりでの挙動安定化など、リアブレーキでできることは多いんです。

Q7:フロントブレーキは一気に強く掛けるのが正解?

A:基本は“素早く”だが、その中でも段階がある

減速のためのブレーキはなるべく短時間で終わらせたいですが、急に“ガツン”と掛ければ、車体の挙動を乱す要因となり、最悪の場合は前輪のロックにつながります。そこで、一瞬軽めにレバーを握ってフォークを沈めて挙動を落ち着かせ、前輪を潰して接地面積を広げてグリップ力を高めます。そこから一気に最大の制動力を引き出すよう入力します。プロライダーは、この一連の操作を超短時間でやっています。

第2段階で強くレバーを握ってフォークを沈めて最大効力を発揮!
第2段階で強くレバーを握ってフォークを沈めて最大効力を発揮!
第1段階は一瞬そっと握ってフォークの伸縮を落ち着かせる
第1段階は一瞬そっと握ってフォークの伸縮を落ち着かせる

Q8:ABSなどの制御デバイスは信じて大丈夫?

A:あれば安心だが、過信は禁物!

公道走行では、安全装備としてABSは重要な存在。もちろんサーキットでも、ライダーの操作を助けてくれることはあると思います。ただしABSが介入することで、自分が思い描いた減速とは異なる挙動になる場合も……。介入させない操作を前提にしましょう。

Q9:エンジンブレーキは利用する?

A:適度に使うと車体が安定する

Q3でも触れましたが、せっかくあるエンジンブレーキは、有効に使うべきです。制動の補助になるだけでなく、適切なギアを選んで適度なエンジンブレーキが効いていると、車体が後ろに引っ張られているような感触とリアタイヤの接地感が生まれ、安心して操縦できます。もしクラッチを切ってコーナーに進入すれば、低い速度や浅いバンク角でも恐怖を感じるはず。

Q10:ブレーキレバーは2本指で掛けるのが正解?

A:プロもさまざま、お好みでどうぞ!

ロードレースでは人差し指と中指でブレーキレバーを握るのが基本ですが、こうでないとダメということはありません。ちなみに僕は、中指と薬指と小指の3本掛け。幼少期からこれだったので、その後に修正を試みたけど無理でした(笑)。

関連記事