【おいしい回転数で走る、駆動力コントロール⑤:加速】リニアに反応する回転域を使って立ち上がる
繊細な操縦は求められるが気持ちいい走りを実現可能
コーナー立ち上がりでのおいしい回転数というのは、まずスロットルを開け始めたときにリニアな反応が感じられ、これによりリアタイヤのトラクションを自在に引き出せ、そこからフル加速区間に入ったときに、早い段階でパワーバンドを使えるというのが目安です。
正しいギアが選択できていない極端な例は、立ち上がりで加速が鈍すぎてシフトダウンなんていう操作。これではストレートでスムーズに車速を伸ばせず、リズムが掴めないため次のコーナー進入にまで悪影響を与えることにつながりかねません。
一方で、スロットル操作に対してある程度リニアに反応する回転数を使うときには、より繊細な操縦が求められます。高めのギアで走っていたときと同じようにスロットルをラフにガバ開けすれば、すぐにリアタイヤがスライドするかも。
近年のバイクならトラクションコントロールが救ってくれるかもしれませんが、過信は禁物です。
とはいえ、おいしい回転数を使えている状態には安心感があるので、正しい操縦を覚えれば、しっかりスロットルを開けられるようになります。
その結果、レースならタイムアップにつながりますし、速さを求めないライダーでも、気持ちよく走れるようになること間違いナシ。総合的に走りを磨いていきましょう。
回転数が低すぎるとトラクションがかかりにくい
おいしい回転数が使えている状態は、スロットルとリアタイヤがピンと張った強いゴム紐で結ばれていて、多少の遊びがありながらも常に感触が得られるようなイメージ。
回転数が低すぎると、このゴム紐がダランとしてしまい、スロットルを開けてもすぐにはパワーが後輪に伝わらず、いつ反応が得られるのか把握できません。
インフォメーションがない状態では正しいスロットルワークは不可能だし、仮に正しい操作ができたとしても、リニアな反応を得られないので無意味。トラクションがかからないと不安にもつながります。
回転数が高すぎても急にパワーが立ち上がり怖い
例えば200psのスーパースポーツで、立ち上がりのまだマシンがある程度バンクしている状態でパワーバンドに入るようなギアを選べば、操縦がシビアすぎてほとんどのライダーが恐怖を感じるはず。
リニアな反応は必須だけど、ピーキーすぎるのも害をもたらすのが難しいところです。
スロットルを開けながらリアブレーキを踏むこともある
MotoGPでは、おいしい回転数を使いながらいかに早く開けられるかが求められるシーンも多く、超ハイパワーなため繊細なスロットルワークだけでは後輪のスライドが制御できない場合も……。
そのため、加速中なのにリアブレーキを操作してコントロールすることが多々ありました。
車体を早めに起こしてタイヤの中心付近を使って加速
バンク角が深くタイヤのエッジ付近が接地した状態でスロットルを開けると、横方向にグリップを使っている後輪にさらなる負荷をかけるので、スピンしやすくなります。
これを避けるため、まずはボトム速度付近でしっかり車体の向きを変え、立ち上がりでスロットルを大きく開け始める段階では車体を起こし気味にできる状況をつくるのがセオリー。
大排気量車はとくにこの意識を!!
スロットルを斜めに握ると繊細かつ大きく開けやすい
肩から直線的に腕を伸ばして、手のひら全体でベタッとハンドルグリップを握ると、手首の可動範囲が制限されてスロットルがワイドに開けられず、繊細な操作も難しくなります。
よく言われることですが、ハンドルは横方向から包み込むような意識で握ると、スロットル操作がしやすくなります。
エンジンのおいしい回転数を使いこなすためには、正しいライディングフォームも大切!!
「立ち上がりでシフトダウン」は完全にギア選択をミスしている
「立ち上がりでスロットルを開けたけど、加速が鈍すぎて1速下げた……」なんて経験がある人もいるはず。これは、コーナリング速度に対して選択したギアが高すぎる顕著な例でもあり、もっと遡れば減速段階でしっかりギアを落とせておらず、高いギアのまま旋回動作に入ったことが原因です。
これでは、走りにリズムが生まれません。
一気にワイドオープンせず加速の準備時間を設ける
ヘアピンカーブなどの立ち上がりで、完全オフの状態から加速態勢に移行するときは、初期段階でまずは15%前後までスロットルをスッと開け、チェーンの弛みをなくして駆動力を後輪に少し伝え、接地感を探りつつリアタイヤのグリップを引き出してあげるイメージ。
ワイドオープンまでの間にこのアクションを取り入れることが意識できるようになると、走りのレベルがワンランク上がります。