トレイルブレーキはフロントタイヤとの交信がキモ【しっかり止めて、しっかり曲がる／トレイルブレーキで速くなる】

ブレーキを引きずったまま、コーナーに進入する「トレイルブレーキ」は、スポーツライディングの必須テクニックだ。多くのメリットを持つ技だが、正しい知識と的確な練習法を知らなければ、ただ怖い思いをするだけになる。なんとなくブレーキを引きずるのではなく、その意味を確実に理解したい。

PHOTO/S.MAYUMI, Red Bull, Ducati, Yamaha, Honda
TEXT/G.TAKAHASHI
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車体が傾いている時にブレーキをかけるなんて

バイクのライディングは奥深くて面白く、追求には終わりがない。今もなお分からないことや、人によって解釈の違うことが多々ある。

ライディングにおける「解釈の違い」は、多くの場合、速度差や走る場の違いで生じているようだ。走る速度の高低によってライダーがやるべき操作はだいぶ違うし、操作がバイクに与える影響や、それによって起こる挙動も、挙動の感じ方も異なる。もちろんどこを走るか──公道か、サーキットか、オフロードか──も、非常に大きな要素だ。まずこのことを理解しなければ、話は進まない。

今回、私が説くトレイルブレーキも、時と場合によってまったく解釈が異なるテクニックだ。

トレイルブレーキとは、「引きずりブレーキ」のこと。ブレーキをかけたまま車体を傾けて、コーナーに進入する……と言った時点で、拒否反応を示す人も多いに違いない。

さらに私は今回の記事中で、「リアブレーキは差し当たって使わなくてもよい」とも説明する予定だ。

こうなると、拒否反応はますます強まるだろう。「まったく論外だ！」と、糾弾されるかもしれない。

それはある意味正しい。交通教本には、二輪車のブレーキかけ方として「二輪車でブレーキをかける時は車体を垂直に保ち、前・後輪ブレーキを同時にかける」といった内容が記されている。つまり私が言う「ブレーキをかけたまま車体を傾ける」「リアブレーキは使わなくてもよい」は、言語道断の誤りということだ。

そして公道においては、本当に誤りなのだ。一寸先の路面状況が分からない公道では、ブレーキをかけたまま車体を傾けてコーナーに進入するなど、避けた方がいい。そもそも公道は法律により低速走行が定められている場だから、トレイルブレーキそのものがほぼ不要だ。

だが、サーキットでは……？

何のためにサーキットを走るかは、人それぞれだ。私の見解では、サーキットはバイクを操る喜びを存分に楽しむ場であり、自らのスキル向上の充実感を味わう場である。

昨日より今日、今日より明日の自分の方が、うまくなりたい、速くなりたいと願い、だからこそ熱心に研究し、懸命に練習し、ひたむきに努力し、そのプロセス自体をも楽しむ。私自身もそういった自己研鑽の場として、今も飽くことなくサーキットを走り続けている。

そしてもし、あなたがサーキットを走るスポーツマインドを備えたライダーで、こういった私の見解に少しでも賛同いただけるなら、トレイルブレーキは絶対に欠かすことができないテクニックである。

向上心を持ってサーキットを走るなら、まず身に付けるべき基本。それがトレイルブレーキだ。そしてもちろんこのテクニックにも、知識と反復練習が必要である。