【青木宣篤流 断じるライテクQ&A|Part05】ブレーキングがわからない・・・・

歯を食いしばって、コーナーの奥まで突っ込んで……。ブレーキングは、もっともライダーを苦しめ、怖がらせる。「怖くない程度に、より長く、より弱いブレーキングを」と青木さん。より安全に、より楽しく習得できるトレイルブレーキを提唱する。
Q41|コーナーへの進入時、ブレーキをかけすぎて途中でスロットルを開けることがありますブレーキを引きずりながらコーナーに入っていくコツはありますか?
Q42|突っ込みが怖いのでブレーキを早めにかけてしまい、コーナリング中に失速してしまいます
Q43|進入スピードはどうやって決めていますか?
Q44|転びそうな気がして、ブレーキを強くかけられません特に右カーブは苦手意識が強くて、もっとかけられるのは分かっていてもできません
Q45|コーナーではブレーキリリースを遅らせて突っ込み気味に進入する方が速く走れる?
Q46|ブレーキはどこまでかけるのが正解ですか?
A|ブレーキングは、怖いものではありません。
怖くなる前にブレーキをかけ始めてください。怖くなる直前が、あなたのブレーキングポイントです。
サーキット走行会のルールが守られていれば、真後ろに付けているバイクもいないはず。早めにブレーキをかけ始めても問題ありません。
「こんな手前でかけ始めていいの!?」ぐらい早めでOK。また、「フルブレーキング!」と歯を食いしばる必要もありません。あなたがフルブレーキングと思う70~ 80%ぐらいの強度でブレーキを開始しましょう。これならブレーキを調節する余裕が持てます。自分にとっての100%で握ってしまうと、リリース方向の調節が難しくなります。

大事なのは、ブレーキの強さより長さです。かけ始めは70 ~ 80%程度で、徐々に弱めながらコーナーの頂点付近までブレーキレバーを握り続けます。トレイルブレーキ(引きずりブレーキ)を、私は提唱しています。
減速Gに耐えながら、倒し込みのためのハンドル操作(イン側のハンドルを押す)もオーバーラップ。腕は大変です。ブレーキは、加速に向けてスロットルを開け始めるまでかけ続けてください。性能が向上している現代のタイヤを使いこなし、最大の旋回力を発揮する走り方です。
Q47|コーナリングABSをどこまで使えるか分かりません
A|ほぼ使いません。
従来のABSは、コーナリング中のタイヤ周長差の変化などにより、誤作動しがちでした。不要な場面で、ABSが作動してしまっていたのです。
これを解消するコーナリングABSは、本当にコーナリング中のブレーキングによりタイヤが滑った時にだけ作動するようになりました。
しかし、そんな領域でライディングできる人は、ほぼいません。つまりコーナリングABSは正確な作動をするようになったけれども、その分、恩恵を受ける人はほぼいない、ということになります。
Q48|コーナー進入速度の高め方を教えてください
A|高めようとしないでください。
12インチタイヤのミニバイクや、鈴鹿、もてぎを250ccで走る時以外は、コーナー進入でしっかり減速することが原則です。特に低速コーナーはブレーキングが重要です。
ブレーキング不要な高速コーナーでタイムを稼ぐには、確かに進入速度の高さがキモですが、そこはもう、テクニックと言うより気合いと根性。とりあえずスロットルを開けていくしかありません。
Q49|タイトコーナーでタイヤが滑ってロックした時の対処方法を教えてください
A|祈りましょう。
どうしたらいいのか、私にも対処方法は分かりません。何かやれるとすればブレーキをリリースすることですが、とっさにはほぼ不可能。
「あっ!」と思った時はたいてい手遅れです。残念ながら、スポーツライディングではどうしてもこういう事態が起こります。転ばなかったらラッキーです。
Q50|リアブレーキを積極的に使うもの? 私は一切使わない方が走りやすく、実際にタイムアップした経験があります
Q51|コーナーではリアブレーキを引きずる人とリアは使わないという人がいます私は時々引きずりながら曲がることがあるのですが、正解はどちら?
Q52|コーナー進入前は、リアブレーキを長くかけた方がよいですか?
A |リアブレーキは、使える人は使った方がいいし、使えない人は使わなくてもOKです。
リアブレーキを使うことで安心感や安定感が得られるなどのメリットを感じるなら、使うべきでしょう。しかしQ50の方のように使わない方がいい場合もあります。実際、リアブレーキを使わないレーシングライダーもたくさんいます。
フロントに比べ、リアは減速にあまり寄与しないからです。それに加えて、硬いレーシングブーツを履いてのブレーキペダル操作は、非常に難しい。それでも細かくコントロールができるならまだしも、微調整できないならいっそ使わない方がマシです。

ブレーキングは、減速Gに耐えながらやるべきことが多く、かなり大変な操作。そんな中、さらに難しいリアブレーキを意識してしまうと、とっ散らかりがちです。それならスッパリと諦めた方がいい、というのが私の考え方です。
ちなみにコントロールできる私は、リアブレーキをかけまくっています。進入時は前後同時にかけますし、スロットルを開けて加速体勢に入ってからもリアブレーキをかけ続け、加速力を殺さずに姿勢調整などを行っています。
Q53|奥が深いコーナーでオーバースピードと分かった時ABSがないバイクの場合の減速でもリアブレーキを使うのはアリですか?
A|大アリです。
車体が寝ている時のリアブレーキは正義です。むしろフロントブレーキは使わない方がいいでしょう。いろいろ怖くてかけられないと思いますが……。
また、そもそも論としてオーバースピードは避けてください。
Q54|フロントブレーキの使い方がいまいちわからないコーナー進入前はどのように入力するべきか知りたい
A|思いのまま握ってください。
先述したように、怖くない程度のタイミング&強度で。たいていの場合シフトダウンも併せて行うと思いますが、順番は、フロントブレーキ→シフトダウンです。
公道走行ではシフトダウン→フロントブレーキのケースもありますし、ペースが遅いのでシフトダウンだけで済むことも多いと思います。
しかしサーキットでのシフトダウンは、ほぼ「加速のためのギア合わせ」のため。メインは制動力が高いフロントブレーキです。

Q55|ブレーキングではフロントフォークが底突きするくらい縮ませるのがいいのですか?
A|ストロークは気にしなくてもいいと思います。
それより意識してほしいのは、フロントタイヤの接地感です。私は「タイヤとの交信」という言い方をしますが、タイヤに意識を向けた方がいろいろな意味で有益です。
最近のバイクは、よほどハイスピードでギャップに乗らない限り、底突きしても大きな問題はありません。しかし、底突きしない程度のペースで走った方が楽しくて安全です。
