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高田速人さんのスポーツライディングブートキャンプ|Vol.9 高田さんに教わったこと復習!

コーナリングなどの実践テクニックから、サーキット走る心構えまで。様々な要素に触れてきた、高田速人さんによるライテク企画もいよいよ大詰め。今回は、今まで学んだことをパッケージで試す、総まとめ編に突入!

編集・阿部をサンプルにライテク向上を検証!

さて1年近く続いてきた、この「高田速人のスポーツライディングブートキャンプ」だが、このあたりで一度総まとめをしてみよう。

何をするかというと、これまで高田さんから学んだテクニックを、一人のライダーを対象にして改めてレクチャー。その効果を測定しようというものだ。 

サンプルライダーは、本誌編集部員の阿部。前々回、ポジション微調整の効果を体感し、驚いていた阿部だが、これまで高田さんから具体的な指導を受けた経験はなく実験台として適正と判断して抜擢した。 

まず、阿部のバイクキャリアについて、ざっくりご紹介。現在28歳でバイク歴は12年ほど。10代の頃は中型バイクでワインディングに通い詰め、20歳の時に600㏄スーパースポーツを手にするとサーキットデビュー。とはいえ、ミニサーキットでの走行会レベルで、走行回数も10回に満たない。6〜7年のブランクを経て、本誌スタッフに加入してから、筑波サーキット・コース1000を少々走るようになったのが現在。 

走るのは好きだが、本格的にサーキット走行に取り組んだ経験はない。若気の至りで、峠を走り込んだ経験があるせいか、走りに勢いはある。そんな、どこにでも居ておかしくないレベルのライダーだ。

比べれば一目瞭然! プロとアマの走りの違い!

筑波サーキット・コース1000の第4コーナーで、高田さんと阿部の走りを比較。ほぼ同じ場所から撮影したもので、1枚目の写真の地点で高田さんの車体がアウト側を向いているのに対し、阿部はかなりイン側を向いている。ところが2枚目の地点を見比べると、高田さんはコーナー脱出に向けてしっかりと車体の向きが変わっているが、阿部はまだバイクの向き変えが済んでいない。つまり、まだスロットルを開けられる状態になっていない。一方の高田さんはここから一気に加速していく。

勢い任せの阿部の走りはちょっと危なっかしい!

まず、高田さんは阿部の走りをコース外から、あるいは追走してチェック。高田さんによる評価はこうだ。

「サーキット経験が少ないことを考えれば、かなりペースは速いですね。バイクをバンクさせることに恐怖心を感じてもいないようですし、思い切りもいい。スロットルも、良い感じで開けられています。速く走るためのセンスがあるタイプです。 

ただ、もともとのセンスがある分、感性だけで走っている部分が大きいのでしょう。積み重ねた技術に裏付けられたスピードではないので、危うさを感じます。勢いで走っているというか……。速く走るためには得難い資質ではありますが、このままではアタマ打ちは早いはずです。そもそも、自分の問題点も掴めていないのでは?」 

速さと勢いはあるが、そこに頼り過ぎているということのようだ。そこで、高田さんは阿部をピットに戻すと、ポジションの微調整を始めた。この時に行った作業は〝ブレーキレバーとブレーキペダルを少し下に向ける、シフトペダルを少し上に向ける〞の3箇所の微調整。また、前々回も行った、グリップにテープを巻き、握る位置を外側に矯正した。

「ブレーキレバーを下げたのは、乗車位置を少し前側に矯正したかったからです。レバーが下を向いていれば、前乗りしないとブレーキがかけられないので、自然と前に座るようになりますから。
上半身を伏せることを意識し過ぎるのか、妙に後ろに座っていました。そのままでは骨盤が前側に倒れるので、ブレーキングでリアに十分な荷重をかけられません。今より少し前に座ることで、骨盤が後ろ向きに回転して、シートに荷重がしっかりと乗るようになります」

ではシフトペダルの位置を上げた理由は如何に?「これは加速時の着座位置の矯正が目的です。ペダル位置を上げれば、後ろに座った方がシフトペダルをかき上げる時にやりやすいので、自然とそういう姿勢をとるようになる」 

ポジションの微調整は、阿部が乗りやすいように行ったのではなく、乗車姿勢の矯正が主な目的だった。また、高田さんはこうも言っている。

「例えばですがブレーキレバーを下げると、相対的にレバー位置が遠くなりますから、スロットル操作との兼ね合いが悪いと感じる人がいるかもしれません。でも、それでいいんです。ブレーキングは減速するための行為ですよね? だから、その時スロットルは閉じている。ブレーキングに最適化したレバー位置を考えればいいんです」 

ポジションを考える上で、参考にしたい言葉だ。さて阿部だが、ポジションを微調整後に走らせたところ、違いは感じるものの、大きな効果を体感できているわけではない様子。ここまでは前段階、高田さんはいよいよライディングに関してのレクチャーをスタートさせた。

Step: 1 ポジションを微調整してみる

高田さんが行ったポジションの微調整は、ブレーキレバーの角度、ブレーキペダルの角度、シフトペダルの角度の3箇所のみ。その気になれば車載工具でも可能な作業だが、もたらす効果は侮れない。ポジションは自分が乗りやすいか否かだけでなく、乗車姿勢を変えて走りそのものを変えることにも繋がる、重要なポイントなのだ。
高田さんが行ったポジションの微調整は、ブレーキレバーの角度、ブレーキペダルの角度、シフトペダルの角度の3箇所のみ。その気になれば車載工具でも可能な作業だが、もたらす効果は侮れない。ポジションは自分が乗りやすいか否かだけでなく、乗車姿勢を変えて走りそのものを変えることにも繋がる、重要なポイントなのだ。
前々回でも紹介している、スロットルの内側に2cmほどテープを巻きつけ、グリップを握る位置を調整する方法。グリップの外側を握ることで、スロットル操作時に手首の角度に無理がなくなり、驚くほど操作がスムーズになる。これは、是非一度試してもらいたい
前々回でも紹介している、スロットルの内側に2cmほどテープを巻きつけ、グリップを握る位置を調整する方法。グリップの外側を握ることで、スロットル操作時に手首の角度に無理がなくなり、驚くほど操作がスムーズになる。これは、是非一度試してもらいたい

やっぱりブレーキングで腕をつっぱれていない!

まずは、ブレーキングからのターンイン。走行中の阿部を呼び止め、身振り手振りを交えて、修正点を伝えている。阿部の走りには、どういった問題点があったのだろうか?「まず、ブレーキング時に肘が曲がっています。これではブレーキング身体にかかるGを支えきれませんし、前輪荷重もしっかりとかけられません。前から言っている通り、ブレーキングでは腕をつっぱることが基本。まずその部分を意識するように伝えました。 

あとは、ブレーキング開始と同時に、ターンインの準備としてイン側に腰をズラすように言いました。阿部さんは、ブレーキングを終わらせてから、はじめてコーナリングの姿勢をとっていました。これではスムーズに曲がれません。ブレーキングとコーナリングを分けるのは古い発想。ブレーキをかけて減速しながら、ステップワークを使ってコーナリングに入っていくのが、現代のスポーツライディングのスタイルです」 

最初はピンとこない様子の阿部だったが、高田さんが阿部の走りを真似て走り、次いで模範的なブレーキングからターンインへの走りを見せたところ、自分の問題点に気づいたようで、そこからは走りのスムーズさが見違えた。走行データを確認したところ、走行ラインまで変わってきた。もちろん良い方向にだ。 

さて、今回はここまで。次回は、コーナリングでバイクを〝曲げる〞こと、効率良く加速する方法を再確認する。高田さんの指導で、阿部の走りがどこまで変わるのか? きっとみなさんにも当てはまるポイントがあるはずなので、ぜひ参考にして欲しい。

Step: 2 “腕つっぱり”ブレーキングを試してみる

筑波サーキット・コース1000の第4コーナー、進入でのブレーキングの様子を比較。高田さんはしっかりと両腕を“突っぱって”いるのがよく分かる。一方の編集・阿部の肘はフニャッと曲がり、上半身が下がり気味。この乗り方では、ブレーキングのGに耐えられない。逆に言えば、この状態でも荷重に耐えられるレベルの、ゆる~いブレーキングしか出来ていないということ。さらにこの後、鋭く向き変えすることができない

筑波サーキット・コース1000の第4コーナー、進入でのブレーキングの様子を比較。高田さんはしっかりと両腕を“突っぱって”いるのがよく分かる。一方の編集・阿部の肘はフニャッと曲がり、上半身が下がり気味。この乗り方では、ブレーキングのGに耐えられない。逆に言えば、この状態でも荷重に耐えられるレベルの、ゆる~いブレーキングしか出来ていないということ。さらにこの後、鋭く向き変えすることができない
2本とも阿部の走行ラインで、青はレクチャーを受ける前、赤は受けた後のデータ。GPSデータロガーの「デジスパイス」で記録した。レクチャー前(青)は、ブレーキング終了が早過ぎ、一度は加速を始めたもののバイクの向きが変わっておらず、コース外に飛び出しそうになり、再度ブレーキをかけてしまっている。レクチャー後(赤)は奥までブレーキを残して進入し、立ち上がり重視のラインで効率良く加速できている
2本とも阿部の走行ラインで、青はレクチャーを受ける前、赤は受けた後のデータ。GPSデータロガーの「デジスパイス」で記録した。レクチャー前(青)は、ブレーキング終了が早過ぎ、一度は加速を始めたもののバイクの向きが変わっておらず、コース外に飛び出しそうになり、再度ブレーキをかけてしまっている。レクチャー後(赤)は奥までブレーキを残して進入し、立ち上がり重視のラインで効率良く加速できている

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