1. HOME
  2. カスタム
  3. 減衰やプリロードはイジらなきゃ損! 難しくない サスペンション入門②

減衰やプリロードはイジらなきゃ損! 難しくない サスペンション入門②

サスペンションのアジャスターを触ることを躊躇しているライダーは、かなり多い。ヘタにイジっておかしなことになったら困る……と思っていたら、それは無用な心配。それぞれの機能をザックリ知ったら、とにかくイジってみよう。悩むのはその後だ!

How to Suspension Setting ノーマルでも十分楽しめるけれどせっかくの調整機構を使わないともったいない

いまどきのスポーツバイク、特に大排気量モデルのサスペンションは、さまざまな調整機構を装備している。とはいえ、その多さゆえに「どこをイジれば良い?」、「イジって乗り味がおかしくなったら困る……」という疑問や不安を抱えるライダーも多いだろう。

そこでまずは、調整機構の場所と種類、それぞれの役割や乗り味にどんな影響があるのかを、次ページを見てザックリと理解してみよう。近年はさまざまな形式のサスペンションが登場したため、アジャスターの配置が異なる場合もあるが、それぞれが受け持つ機能は基本的に同じだ。

とはいえ前述の通り、変にイジって乗り味がおかしくならないか、危険じゃないのかが不安な方もいるだろう……が、大丈夫! じつは減衰力アジャスターの調整幅は、サスペンション本来が持つ減衰力の中の、けっこう狭い範囲でしか変化しないのだ。だから減衰力を最強にしたら硬くて1㎜も動かないとか、最弱にしたらスカスカでフルボトム……ということは起こらない。

敢えて言うなら〝少し乗りにくくなるだけ?だ。反対に上手くセッティングが出れば「けっこう乗りやすくなる」から、やらない手はない。 そして、イジっているうちによく分からなくなってしまったら、いったん標準設定に戻せばいい(標準設定はバイクに付属するハンドブックに記載)。とにかく臆せず触ってみて、変化を感じることが先決だ!

積極的に触ってみよう! ただし、締めすぎに注意!

Point.1減衰力アジャスターは最も締め込んだ位置を基準に把握する
減衰力アジャスターは右に止まるまで締め込んだ位置が最強で、そこから減衰力が弱まっていく左回しに戻した量で減衰力の強さを表現。カチカチとクリックがあるタイプは「6段戻し」、無段階タイプは「1と3/4回転戻し」のように管理する 

Point.2 サスペンションの先端は超精密締めすぎると破損の原因に…… 
特に伸び側減衰力アジャスターは、針のような先端がオイル流路に抜き差しする構造が主流。そのため右回しで最強にする際、無理に回すとその先端を傷めてしまう。先端の形状が変わると減衰力を正確に発生できないため、工具は軽く摘まんで回そう

フロント

ノーマルは万人向け
自分に合わせよう KAWASAKI Z900RSの場合

レトロスタイルだが、サスペンションはフロントが倒立でリヤはリンク式モノショック。現代スポーツバイクの基本といえる構成だ

圧縮側減衰力 COMPRESSION

フォークボトム部に装備。ブレーキングや減速時の、フロントフォークが入る(縮む)動き方やスピードに影響。かけすぎるとフォークの入りが悪くなる。調整範囲は13段階

伸び側減衰力 REBOUND

フォークキャップの中心に装備。曲がり始めの前輪に舵角がつく速さやハンドリングの軽さに影響する。かけすぎるとハンドリングが重くなる傾向がある。調整範囲は11段階

プリロード

伸び側減衰力アジャスターの周囲に装備。ブレーキングやスロットルを戻した際の減速状態での車体姿勢(フロントフォークのストローク量)に影響する。調整範囲は15回転

リヤ

プリロード

ダンパーボディ側に装備。ライダーの体格により、ストローク量と車体姿勢に影響するので、最初に調整。Z900RSは無段階だが、調整はカワサキ正規取扱店に依頼

伸び側減衰力

ショックユニット下部に装備。曲がり始めのハンドリングの軽さや舵角のつく速さ、後輪のグリップ感も変化するので頻繁に調整する箇所。調整範囲は1と3/4回転

ショックユニットの上部に圧縮側減衰力調整機構を装備するモデルもある

リヤの圧縮側減衰力は、旋回でバンクする際に、サスの入りが途中で止まったり跳ね気味なら抜く方向、入り過ぎならかける方向で調整するが、あくまで補助的な役割だ

Column サスペンションを調整できないバイクもある

ミドルクラスだと、残念ながら減衰力アジャスターを装備しないバイクも多い。リヤはリプレイス品に交換し、フロントは減衰力調整機構を持つインナーキットでアップグレードするのも手だ

標準的なサスペンションのさまざまなアジャスターを紹介

サスペンションは日々進化中でメーカーの考え方はさまざまだ。伸び側と圧縮側で減衰力の影響を抑えて調整機構を独立させたりピストンを大径化して応答性と安定性を高めるなど、性能向上に余念がない。それに伴ってアジャスターの配置も千差万別!

フロントフォークのトップキャップにすべてを集約 
KYB AOS-Ⅱ レーシングサスペンション

KAWASAKI Ninja H2 CARBON
モトクロスレース用に開発したエアオイルセパレートカートリッジフォークがベース。フリーピストンがカートリッジ内部を加圧し、初期作動性と高負荷時の確実な減衰力を両立。アジャスト機構をすべてフォークトップに装備する

フォークトップにプリロード下部に減衰力調整機構を装備
SHOWA BFF

SHOWA BFRC 

フロントのBFFに通じるシリンダー内のピストンで減衰力を発生しない構造。減衰力機構をシリンダー外部に設け、減衰力発生のタイムラグを最小化し、外乱にも強く安定した動きを実現
KAWASAKI Ninja ZX-10R
カワサキレーシングチームとSHOWAが共同開発。シリンダー内ピストンでは減衰力を発生させず、外部のダンピングフォースチャンバー基部に減衰力調整機構を、プリロード調整機構はフォークトップに装備

SHOWA BPF

フォークトップに伸び側/圧縮側減衰力アジャスター、ボトム部にプリロードを装備。片側のフォークで減衰力、もう一方がプリロードのSFF-BPも存在する
片側で伸び側減衰力、もう一方で圧縮側減衰力を受け持つセパレートファンクション方式が増加。リプレイス品やインナーキットも、このタイプが増えている

レースシーンから生まれたオーリンズのTTXはサスペンション上部に減衰力調整機構を集約

OHLINS TTX GP

TTとはツインチューブ(復筒式)の意味。ショックの伸縮によるピストンは、オイルを純粋に押し引きするシンプルな構造とし、伸び側/圧縮側減衰力の流路を独立させることでそれぞれのアジャストが他方に影響しない。そのため緻密で素早いセッティングが可能に

2019 Honda RC213V

MotoGPのフォークアウターはカーボン製

リヤショックに通じるツインチューブ構造でガス加圧式カートリッジフォーク。軽量で高剛性のカーボンボディは’17 シーズン頃に登場。従来のアルミ製とは内部構造も異なる

Column  MotoGPではスタート時に車高を下げるホールショットデバイスが流行
ドゥカティはそれを立ち上がり時にも使う

サスペンションは良く動くことが重要だが、スタートに限れば、ドラッグレースが良い例だがストロークせず車高も低い方が効率が良い。

そこで昨年登場したのがライダーのスイッチ操作で、リヤの車高が下がる「ホールショットデバイス」。詳細は不明だが自動制御のアクティブサスはレギュレーションで禁止なので、リヤのリンク機構をロック→解除するような仕組みだろう。

ちなみにドゥカティはこれをコーナーの立ち上がりでも使用(テストで、ジャック・ミラー選手が盛んに試していた)。将来は足着き性を向上させる新機構になるかもしれない。

DUCATI

YAMAHA

Honda

関連記事