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今やライダーのテクニックを凌駕する! 電子制御の最新事情(後編)

いまどきのビッグバイク、とくにスーパースポーツは電子デバイスがテンコ盛り。“凄い!”という憧れと同時に“本当に必要?”と、引き気味のライダーも…… 。だけど最新デバイスは、飛ばすだけじゃなくて「愛車との距離を近づけるアイテム」そんな名脇役なのだ。 前回に引き続き、今回も最新の電子制御システムの総まとめを後編としてお届け。最新の電子制御システムをその機能ごと分けて紹介した前編に引き続き、後編ではスポーツモデルの上位モデルに搭載されるシステムを紹介していこう。

ライダーを引き立てる名脇役!  電子デバイスで試せる、 攻めれる 楽しめる!!

最新スポーツバイクは様々な電子デバイスを装備し、下図のように発進してカーブをひとつ曲がるだけでも、ずっとライダーをサポートしている……が、「なんだか難しそう」とか「自分のウデで操っている気がしない」と、電子デバイスを敬遠するライダーもいるだろう。

とはいえ電子デバイスを上手に使 えば"200馬力!"と不安無く付き合え、臆することなく色々なライテクを試すことができる。速く走るために生まれた数々の機能は、じつは愛車ともっと仲良くなるためのインターフェースなのだ。ここでは、そんな最新電子デバイスの数々を紹介していこう!

電子制御4/コーナリングABS

従来のABS(アンチロックブレーキシステム)は、ブレーキ時にタイヤがロックして転倒するのを防ぐのが主目的で、基本的には車体が直立している状態でしか正常に機能しなかった。しかしコーナリングABSは、IMUと連動してバンク角など車体の姿勢を検知し、最適なブレーキ効力や前後ブレーキの配分を調整するので、その名の通りコーナリング中でもブレーキを使える。安全機能の向上はもちろん、旋回中の荷重コントロールにも積極的に使うことができる。

バンク中でも最適・安全にブレーキを使える

電子制御5/電子制御サスペンション

バイク用の電子制御サスは15年ほど前に登場。初期のタイプは、乗車人数や乗り方に合わせた何通りかのセッティングを、スイッチ操作によってモーターや電磁バルブ等で行う“電気切り替え式”だった(それでも十分に便利) 。しかし近年は本当の意味で電子制御化。 走行中の車体姿勢やサスのストロークをIMUやセンサーで検知し、さらに速度やライダーの操作などの情報と合わせて専用のコンピュータで分析し、リアルタイムで最適なセッティングを提供してくれる。

走行シーンや乗り方に応じてリルタイムでセッティング!

電子制御6/ウイリーコントロール

ウイリー(フロントリフト)は、見た目にはパワー感溢れてカッコ良いが、実際には“前進する力”をリフトする方向に無駄に使っているため加速力はスポイルされる(レースに不向き)。そこで、コーナーの立ち上がりで大きくスロットルを開けてもフロントのリフトを抑え、最大効率で加速できるようにパワーを調整するのがウイリーコントロール。ちなみにモトGPのウイニングランでウイリーするシーンも見るが、そのための専用マップを組んでいるという噂も……。

リフトを抑えて加速する力に変える

電子制御7/ローンチコントロール

レースはスタートで“前に出る”ことが重要。そこで“ロケットスタート”を決めるには絶妙なクラッチ&スロットル操作が必要だが、スピンやウイリーして出遅れたり、クラッチを傷める危険もある。しかしローンチコントロールを使えば、スロットル全開で待機し、クラッチレバーをスッと離すだけで最高のスタートが切れる……とはいえ、公道で使うのは絶対NGだし、サーキット走行会もピットレーンからゆっくりコースインするのが一般的だから……。

誰もがロケットスタート可能! ……だけど、一生使わないかも

電子制御8/データロガー

どのギアを選んで、どれくらいエンジンを回しているのか、スロットルの開度やブレーキまで、ライダーの操作やバイクの状態を(電子デバイスの介入状況なども)、サーキットのコース上の位置と共にデータ化して記録するのがGPSロガー。ヤマハのYZF-R1Mが標準装備し、ドゥカティやBMWもオプションで用意。走行後にパソコンやタブレットにデータを落としてラップや過去の走行と比較すれば、自分の走り方を正確に把握でき、ライテク向上に大いに役立つ。

走りを分析すればライテク上達の早道

電子制御9/ヒルスタートアシスト

車重が重く足着きに不安があると“坂道発進”はドキドキするが、ヒルスタートアシスト(ヒルホールドシステム等とも呼ばれる)があれば安心だ。坂道に停車するとIMUが検知してブレーキが効いた状態を保持するため、ブレーキレバーやペダルを放しても車体が後ろに下がらない(ブレーキが効いている時間はメーカーによって異なる)。ツアラーやアドベンチャー系に装備車が増えている。

Column もうすぐ登場の新技術! アクティブクルーズコントロール

かねてからドイツのボッシュ社 が開発していた二輪車運転支援システムのひとつである「アクティブクルーズコントロール(ACC)」が、まもなく実用化される(カワサ キ、ドゥカティ、KTM、BMWが2021年から装備を予定) 。

従来のオートクルーズは、エンジン回転数の増減で設定スピードに保つ機構のため、前走車と車間が詰まった時はライダーがブレーキをかけて減速するたびオートクルーズが解除され、再び設定する必要があった。 しかしACCはレーダーで車間距離を監視し、ブレーキも自動でかけて減速する"追従型"のシステムで、安全性と快適性を高い次元で両立。

コーナリング中もIMUで計測した車体姿勢と速度を分析して自車の走行ラインを予測し、ライン上に前走車がいれば速度調整を行う(その際もバンク角を最適に保てるエンジン出力やブレーキ効力で制御)。 とはいえこのACC、四輪車の"自動運転"とは大きく異なる。

バイクは四輪車のような自動ブレーキが効いたらライダーが飛び出してしまうので、赤信号や渋滞末尾で停車するにはライダー自身がキチンとブレーキ操作を行う必要がある(前走車の急減速に対する警告は発する)。あくまで主役はライダーであり、ACCは運転を支援する黒子。これはスポーツ系の電子デバイスと同じだ。

ACCの作動概念図。レーダーとIMUの情報を元に、設定したスピードと前走車との車間距離を保つようにECUでエンジン回転(=速度)を制御しつつ、ABSシステムと連動してブレーキで減速を行う

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