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スロットルは2段階で開けるのが正解【中野真矢に学ぶトラクション01】

今回のライテクは、意外と知らない“トラクション”がテーマ。元MotoGPライダーの中野真矢さんに、トラクションの上手な引き出し方や、トラクションを活かした安全に楽しめるライディングを教わる。

トラクションしていれば制御に安心感がある

トラクションは駆動力ですから、現役時代は少しでも強く前に進むためにこれを必要としていました。でも、若いときから敏感だったわけではなくて、徐々にトラクションの存在を理解できるようになりました。 

トラクションはレース以外でも大切で、これがかけられている状態は、ライダーがいわゆる〝接地感〞を得やすいので安心感につながります。また、後輪が地面に押し付けられている状態なので、スロットルを開けたときにリアタイヤが滑っても、トラクションしていない状態と比べたらコントロールしやすいんです。

逆にバイクの特性から考えると、トラクションをかけやすいバイクは、結果的にコーナーの立ち上がりでどんどんスロットルを開けていけるので、それが快感につながります。

そして、トラクションを引き出すためにはライダーの上手な操作も必須。最終的には大きくスロットルを開けてトラクションを稼ぎたいけど、そのために最初は繊細な操作も求められます。

(中野真矢)

上手なライダーほどスムーズに開けている

スロットルを開けられないと、駆動力が増えないのでトラクションはかからないが、ラフに開けるとリアタイヤが滑って、同じくトラクションにはつながらない。「あんなに派手な走りのジョナサン・レイ選手ですら、開け始めのスムーズさにはかなりこだわっています」と中野さん。

駆動力がかかると後輪は路面に押しつけられる

一般的にバイクは、加速時にリアサスペンションが伸びる(リアが上がる)方向の力がかかる。これはアンチスクワット効果と呼ばれるのだが、このとき反力によりリアタイヤは地面に押し付けられる。この力が大きくなると、ライダーは「トラクションがある!」と感じやすいのだ。

上級者は操作によってチェーンの弛みもなくす

スロットルを一気に開けると、弛んでいたチェーンが急激に張り、その勢いでリアタイヤが滑ったり、繊細な操作ができない場合も。トラクションコントロールでも制御しきれないことがある。「1段階目で優しくチェーンを張り、リアタイヤのグリップを引き出してあげるイメージ」

スムーズに開けるためにグリップは斜めから握る

グリップを真っ直ぐ握ると、1段階目の繊細な操作が難しくなり、手首を返せる角度も浅くなってワイドオープンしづらい。また、スポーツ走行で身体を大きく動かしてバイクを操ろうとしたときに窮屈になる。ハンドルは、両脇から包むように手のひらの外側中心で握るのが正解。

ラジアルタイヤは変形して路面に追従しやすくなる

近年のラジアルタイヤはカーカス層が薄く、変形に対処する補強がされつつも、しなやかさもある。そして、トレッドに対してサイドウォールを柔らかくできるため、トラクションをかけることで路面に合わせて変形し、接地面が増えてグリップを維持。“潰して走る”のが理想だ。

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