1. HOME
  2. COLUMN
  3. バイク
  4. オン&オフで本領発揮! 下川原リサ インプレッション 【SUZUKI V-STROM250SX】

オン&オフで本領発揮! 下川原リサ インプレッション 【SUZUKI V-STROM250SX】

下川原リサ
バイク専門誌やバイクテレビ番組『MOTORISE』などでのインプレッションライダーやモデルとして活躍。複数台のバイクを所有する根っからのバイクフリーク

V-STROMシリーズ初のシングルエンジンを搭載するV-STROM250SX。GIXXER SF250譲りの油冷単気筒は、GSX-R1000Rと同じコンセプトのボア×ストロークを採用している。スズキらしさに満ちたマルチなスポーツクロスオーバーを、本誌初登場の下川原リサさんがオンロードとオフロードでテストライド!

専用設計も取り入れられた250クロスオーバー

スズキ・モーターサイクル・インディア社で生産されるVストローム250SXがいよいよ日本国内でも販売されることになった。

Vストロームシリーズ初の単気筒油冷エンジンを搭載し、Vストロームのミドル〜ビッグ排気量の兄弟車にも採用されつつあるフロント19インチホイールを装着。ちょっとしたオフロードにも足を踏みいれられるSX=SportsCrossOver(スポーツクロスオーバー)モデルだ。

2気筒モデルのVストロームが、同時開発のGSX250Rとエンジンやフレームを共通化しているのにならい、Vストローム250SXもまたエンジンやフレームをジクサーSF250と共有している。

燃費と出力をバランスさせた油冷システムを採用したSEP(SuzukiEco Performance)エンジン。SOHCを採用し、シリンダーから上をコンパクト化。ボア×ストロークはGSX-R1000Rと同じコンセプトで開発された、低回転からトルクフルなスポーツシングルだ

とはいえ、Vストローム250とGSX250Rが、ホイールやサスペンションなどの足まわりも共有するのに対し、Vストローム250SXでは専用のホイールサイズ、新設計のロング化したスイングアームを採用。キャスター角も変更し、エアクリーナーなどがクロスオーバーに見合ったセッティングに見直された。

安定志向でロングツーリング向けの2気筒エンジンのVストローム250。対して通勤通学などの街中での移動から、週末のツーリングやオフロードも楽しめる元気の良さがVストローム250SXの特徴だ。

併売される2気筒モデルのVストロームとの棲み分けとして、単気筒モデルのVストローム250SXは単気筒ゆえのオフロードバイクのようなスリムさも手伝い、スポーティーな印象。2気筒モデルのVストロームは低回転から高回転までフラットで、ロングツーリングを視野に入れるのであれば、2気筒エンジンの方が快適だ。

Vストローム250SXは前後のセミブロックタイヤと単気筒エンジンが示すように、2気筒モデルでは躊躇していたようなオフロードも視野に入れているといえる。

モデル兼インプレッションライダーを務めてくれた下川原リサさんは、大型バイクからオフロード、クロスカブCT110までさまざまな排気量のバイクを所有。特にクロスカブでは日本一周を果たすなど、旅ライダーの視点としてVストローム250SXの特徴を語ってくれた。

「2気筒モデルのVストロームと比べてシートは高いのですが、車体が軽く、ライディングポジションもアップハンドルで快適。上半身でバイクを操れるのでコーナーでもバンクをさせやすい印象でした」

シート高835㎜はトレールモデルのセロー250の830㎜よりも高く、ライダーシートのデザインで多少改善しているが、足着きは決して良いとは言えない。このあたりは、最低地上高を稼ぐためには仕方がないことだろう。

CRF250Lのローシートモデルや、セロー250の830mmより5mm高いシート高だが、シートの前側を細めることで足着きと快適性を両立している。下川原リサさんの場合、両足の母子球まで接地する(身長:165cm)

オフロードの先のキャンプ場へ行ける

Vストローム250SXの本領は、タウンユースでの機動性と、ワインデインングを経由し踏み入れたことのない未舗装路=ダートを走れるという、オンロードバイクとオフロードバイクの良いとこどりをしているところだ。

アイポイントの高さがワインディングでの自由度を高める

「ワインディングでは回して楽しむキャラクターのエンジンです。もちろん低回転でゆったり走るだけでも充分に快適なのですが、高回転を使ってちょっとしたスポーツライディングを楽しむこともできます。 アップライトなライディングポジションはアイポイントが高く安心感があり、バンクさせやすいのでヒラヒラッとコーナーを走るのが楽しいですね。 Vストローム250SXのアイデンティティでもあるフロント19インチ、リア17インチのセミブロックパターンタイヤは、路面からのゴツゴツ感もなくオンロードでのグリップも不安はありませんでした」

Vストローム250SXのベースとなったのはロードモデルのジクサーSF250だが、ホイールサイズの変更に伴いキャスター角/トレールを24度20分/96㎜から27 度00分/97㎜に。スイングアームの変更でホイールベースも1440㎜と、ジクサーSF250から95㎜も延長されており、フロント19インチとアップハンドルがトレールバイクやモタードに近く、さまざまなコンディションに対応しやすくなっている。

「Vストロームの兄弟らしく、ツーリング=旅を連想させつつ、Vストローム250SXは他のVストロームシリーズ以上に走りも楽しめるのがいいですよね。低速からの力強さがあり、試乗会場だったスキー場の荒れた路面でも、問題なく駆け上がってくれました。セミブロックパターンのタイヤも、オフロードで実力発揮です。 2気筒のVストローム250にも同じステージで少しだけ乗りました。こちらは前後17インチのオンロードタイヤなのに、足着きが良いのと、フラットなエンジン特性でゆったりな印象ですが、この路面を走れたのは驚きでした。 Vストローム250SXはタンデムシートからキャリアまでがフラットにデザインされているので、荷物の多くなりやすいキャンプツーリングやロングツーリングでも安心して出かけられそうです。こういった旅に出たくなる装備は、さすがVストロームシリーズですね。 2気筒のVストローム250ならアスファルトの道路から直接アクセスできる、湖畔などのオンロードバイクでも入りやすいキャンプ場を選んでしまいます。でもフロント19インチのタイヤを採用したVストローム250SXならオフロードも得意なので、未舗装路の林道で木々の中を駆け、いつもより山奥のキャンプ場まで行けそうです。これこそVストローム250SXの本領が発揮されるシーンです! この新しいVストローム250SXは、伝統的なVストロームシリーズらしい格好良さ、旅力を保持しつつ、操る楽しさ、走る楽しさが光る新たな一面があります。今回の試乗でそれを体感させてもらえました」

軽快な車体はオフロードも視野に

トレールバイクに代わるオフロード走破性

トレールバイクのユーザーが必ずしもオフロードを走るとは限らない。軽快な車体を求めてトレールバイクに乗り、ロード寄りのタイヤを履き、ツーリングを楽しむ人も多い。そんなユーザーにこそVストローム250SXを選んでほしい。

大型化し過ぎたフロント21/リア18インチのアドベンチャーモデルの中には、ローダウンモデルやフロントに19インチを採用するモデルも増え始めている。日常での使い勝手を考慮しているのが現状だ。

Vストローム250SXなら軽量の単気筒モデルなので、今まで避けてきたオフロードも気楽に楽しむことができるだろう。今回の試乗コースはスキー場の整備道路で、拳大の石も転がるなかなかの荒れた路面だった。モデルを務めてくれた下川原リサさんも撮影のために何度も往復してくれたが、ヒヤッとすることはなかった。

ジクサーSF250譲りのギア比ということもあり、上り斜面では極低速域のパワーが足りない印象もあったが、フラット林道ではまったく不足を感じさせなかった。

また同時に走らせた2気筒モデルのVストローム250は17インチのロードタイヤながら、べったり両足が着く足着きの良さとエンジン特性で、意外なほどオフロードも走れたことも記載しておく。Vストローム250SXほどオフロードを楽しむことはできないが、フラット林道なら余裕で通過できることだろう。

Vストローム250SXは50万円台と車体価格もリーズナブル。セカンドバイクとしても、親子やパートナーと共有するマシンとしても、使い勝手の幅は広そうだ。

ダートスポーツ 岸澤秀夫
V-STROM250SXの期待以上のオフロード走破性に感激。この油冷エンジンを搭載する250ccトレールモデルの登場に期待をするオフロードバイク専門誌月刊『DIRTSPORTS』編集長
伝統的なデザートレーサー「DR-Zeta」から継承されるクチバシデザインのカウルには縦型2灯、3列に並んだ8個のLEDを採用したヘッドランプ、スクリーンが備わる
フル液晶ディスプレイ付きの多機能インストメントパネルにはスピード/タコメーター、ギアポジションやオイルチェンジインジゲーターなど視認性が良く、機能も十分
クロスオーバーらしい前19/後17インチのキャストホイールにセミブロックパターンタイヤを装着。フロントブレーキのディスク径は310mm、前後共にABSを標準装備
防寒防風効果や、未舗装路の林道などで前走車からの飛石や覆い茂る木や草などから手を守り、転倒によるレバー類の破損を防ぐクロースドタイプのナックルカバー
単気筒ゆえにスリムなタンクを実現し。タンク容量は12L、34.5km/L(WMTCモード値)の燃費性能により1回の満タン給油で400kmの航続距離を可能とする
ライダーシートは幅広い座面を採用しつつ、前側は足着きを考慮した細身の形状に。パセンジャーシートは快適性重視の柔らかい素材のクッションを採用している

SPECIFICATIONS

エンジン水冷4ストローク単気筒SOHC4 バルブ
総排気量249cc
ボア×ストローク76.0mm×54.9mm
圧縮比10.7
最高出力26ps/9300rpm
最大トルク2.2kgf・m/7300rpm
変速機6段
湿式多板ダイヤモンド
キャスター/トレール27°/97mm
サスペンションFテレスコピック正立フロントフォーク
Rスイングアーム式リアサスペンション
ブレーキFφ310mシングルディスク+バイブレ製片押し1ポットアキシャルマウントキャリパー
Rφ220mmシングルディスク+片押し1ポットキャリパー
タイヤサイズF110/90-19
R140/70-17
全長×全幅×全高2180×880×1355mm
ホイールベース1440mm
車両重量164kg
燃料タンク容量12L
価格56万9000円

関連記事